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【オンライン】BEC/CIN 認定者限定のクローズドセミナー

【オンライン】BEC/CIN 認定者限定のクローズドセミナー

乳がん最新情報 ~ぶっちゃけトーク、なんでも答えます!新薬から乳がん都市伝説まで~
講師:増田 紘子 (昭和大学 乳腺外科)

※本セミナーはBEC/CIN 認定者限定になります。

【事前申込み制】
認定者にはすでにメールでご案内していますが、届いていない方がいらっしゃいましたら、事務局までご連絡ください。

第8回 男性乳がんの会メンズBC「真夏の夜のオンライン交流会」

【開催報告】
メンズBC初のオンラインでの交流会となりました。当日は8名の男性乳がん体験者さんと1名のご家族・パートナーの、合計9名にご参加いただき、特別ゲストの先生お二人のご協力のもと、とても有意義なお時間となりました。
詳細はメンズBCの特設ウェブサイトでご覧ください。
https://mens-bc.amebaownd.com/posts/9685212?categoryIds=2279336

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4月18日に予定しておりました「第8回男性乳がんの会-メンズBC-」は、新型コロナウィルス感染症拡大の影響を受け、残念ながら開催を見送りました。

そこで、この度、オンラインでの交流会を企画しました。

ざっくばらんに今の現状やお悩みをシェアしませんか?

当日はメンズBCの強力サポーターの先生方も、特別ゲストとしてご一緒してくださいます。

普段なかなか気軽に会えない地域の方と交流が可能なこともオンライン交流のメリットのひとつですので、初参加者さんも是非この機会をご利用ください!

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◆ご参加いただける方:男性乳がん経験者さん、そのご家族・パートナー、過去のサポーターの皆様

◆特別ゲスト:沢田晃暢先生(NTT東日本関東病院 乳腺外科部長)・下村昭彦先生(国立国際医療研究センター 乳腺・腫瘍内科/臨床ゲノム科)

◆当日の内容
 20:00司会進行より会のご説明
 自己紹介(おひとり1~3分程度)
 参加者による交流時間(各自で飲食のご準備をしていただいてOKです)
 (*お申込み多数の場合には小部屋に分かれての交流も検討中)
 21:30終会(希望者のみ22:00まで延長可)

◆参加方法:後日Zoom参加URLをメールでお知らせします。当日URLをクリックして入室してください。

◆用意するもの:お飲み物やお食事をとりながらどうぞ!

【メンズBCとは?】
2018年1月から、男性乳がんの方が気軽に集まれる会を開催しています!男性乳がんの罹患率は女性乳がんの1%弱と大変少なく、女性に比べ5~10歳程度高い年齢層に発症すると言われています。男性乳がん患者さんは人数が少ないため、同じ病気の人に会う機会がなく、同病であるからこそ聞いてみたいことがあっても、なかなか繋がって話をする機会がない、というご相談が増えたことが、この会をはじめたきかけです。

男性乳がんの方のお悩み、例えば副作用の体験談や対処法・治療や生活のちょっとした不安などを言葉にしてみませんか?

★メンズBC 特設ウェブサイト★
https://mens-bc.amebaownd.com/

前立腺がん セミナー in 金沢 ~もっと話そう前立腺がん転移のこと くらしを守る早期対応のすすめ~

本レポートは2019年10月14日に開催した時の内容です。医療情報は日々進歩しています。最新の情報と変わっている場合があります。また講師の所属もそのときのものです。ご注意ください。

前立腺がん セミナー in 金沢
~もっと話そう前立腺がん転移のこと くらしを守る早期対応のすすめ~

司会・座長:溝上 敦(金沢大学大学院医学系研究科 集学的治療分野泌尿器科 教授)

目次

【講演記事1】前立腺がん転移について知ってほしいこと
泉 浩二 (金沢大学附属病院 泌尿器科 講師)

【講演記事2】転移の早期発見・治療のために放射線でできること
高松 繁行 (金沢大学附属病院 放射線治療科 科長)

【講演記事3】治療と向き合う上で大切なこと ~骨転移を体験して~
堀内 隆(前立腺がん骨転移経験者)

【Q&Aディスカッション】
パネリスト:溝上 敦先生 泉 浩二先生 高松 繁行先生 堀内 隆さん
司会:武内 務さん(NPO法人腺友倶楽部 理事長)

【講演1】

前立腺がん転移について知ってほしいこと

泉 浩二先生
金沢大学附属病院 泌尿器科 講師

前立腺がんについて

前立腺は男性だけにある臓器です。膀胱に尿がたまり、尿は尿道を通って出ていきますが、膀胱のすぐ下に尿道を取り巻くようにあるのが前立腺です。正常な状態でくるみくらいの大きさです。前立腺の役割は射精の調節です。精巣でつくられ、ぐるりと回って前立腺の付近で前立腺液を伴って射精することになります。そして、もう一つの重要な役割が排尿の調節で、尿を出したり、止めたりする機能の一部を担っています。

前立腺がんの罹患数は増加傾向にあります。特に最近はその頻度が上がっており、日本人男性が生涯のうちに前立腺がんに罹患する割合は9%、計算上は11人に1人です(*1)。男性がんとしては胃がん、大腸がん、肺がんがよく知られていますが、2016年のがん罹患者数(新規罹患者数)の統計では、胃がんに次いで前立腺が2位と、大腸がん(3位)、肺がん(4位)より多くなっています(*2)。
また、現在がんにかかっている人がどれくらいいるのかという有病者数の統計では、前立腺がん患者がもっとも多く、患者数が年々累積され、2025-2029年には約70万人になるとの推計も出ています。

前立腺がんはほかのがんに比べて、高齢の方がなりやすい病気です。具体的には50歳以上で罹患する病気で、それより若い年齢にはほとんどありません。高齢になるにつれて罹患者は多くなっています。

どんな人が前立腺がんになりやすいかですが、まずは年齢がリスクファクターになっています。人種差もあり、日本人は11人に1人ですが、黒人では4人に1人、白人は8人に1人となっています(*3)。また、父子や兄弟に1人の前立腺がん患者がいる場合、罹患リスクは2.4倍から5.6倍になるとされ、家族歴もリスク要因となっているといえます(*4)。高脂肪食や乳製品の摂取など欧米化の関与も指摘されていますが、現時点ではまだ断定的なことは言えません。

前立腺がんは「長い付き合いになるがん」と言われています。地域がん登録における5年相対生存率をみると、前立腺がんにかかっている人の5年生存率は97.5%で、その間に亡くなる人は2.5%に留まっており、他のがんに比べると明らかに良い結果となっています(*2)。

一方で前立腺がんは治療期間が長くなるがんということもできます。治療に伴って生活の質(QOL)が落ちてきたり、病気そのものがQOLを落とすことがありますから、QOLについても主治医と話しておくことが大事です。バイエル薬品が行ったインターネット調査では、主治医とのQOLについて話し合ったことがあるという人は5分の1程度、また主治医とQOLについて話し合った際に、主治医からなんらかの助言や提案を得たという人は8割で、2割が回答を得られてないという結果になっています(*5)。

前立腺がんの転移

さて、前立腺がん患者さんが抱える不安としてもっとも多いのが「がんが転移しないか」ですが、まずは前立腺がんの転移とはどういうものなのかを説明したいと思います。
転移と浸潤は違うものです。浸潤は周囲の臓器で増殖するもので、元々の臓器(前立腺がんの場合は前立腺)からはみ出しているものであり、原発巣から地続きで広がっている状態です。前立腺がんの初診評価では、TMN分類というものをよく使いますが、このうちTが浸潤を示すもので、その程度によってT3、T4と表現します。

一方、転移は血液やリンパ液の流れに乗り、前立腺から離れたところへ移動して増殖するもので、地続きになっていないものをいいます。先ほどのTNM分類では所属リンパ節への転移をNで表し、所属リンパ節、つまり前立腺から直接リンパ液が流れているところへの転移をN1といいます。M1は遠隔転移のことで、さらに細かくabcに分かれており、所属リンパ節じゃないリンパ節への転移がM1aで、骨転移や臓器転移などはbやcで表します。

前立腺がんは骨転移が非常に多いがんです。初診時に転移がある前立腺がんが見つかった方のうち、80%以上に骨転移がみられます。進行がんでは薬物療法を行いますが、最初の薬物療法が効かなくなったものを去勢抵抗性前立腺がんといいます。そうなった方においてもその80%以上に骨転移がみられます。大きな骨の部位に転移しやすいといわれており、特に多いのは肋骨、脊椎、骨盤、大腿骨です。前立腺がんの骨転移は、がん細胞が血管を通って骨に達し、骨にすみついて増殖することで起きます。がんの種類によってどこに転移しやすいかというのはある程度決まっていますが、前立腺がんは特に骨との親和性が高く、骨に転移しやすいということになります。

前立腺がんの治療方針

前立腺がんの治療方針については、これが絶対的なものというわけではありませんが、がんが前立腺の中にとどまっているもの、あるいは一部はみ出しているものに関しては手術療法を行います。現在は手術支援ロボットを使った前立腺全摘術がメインです。また、がんが前立腺の中にとどまっているところから、所属リンパ節までの転移まで広い範囲をフォローしているのが放射線療法です。そして少し進行した状態から、かなり進行している状態まで幅広くカバーしているのが薬物療法になります。

先ほど、前立腺がんは長い付き合いになるがんであると言いましたが、転移した場合でもその傾向は同じで、遠隔転移がある場合の5年相対生存率は、がん全体では20%未満なのに対し、約50%と高く、しかもその率は向上してきています(*1)。

前立腺がんの骨転移

骨転移には、溶骨型転移と造骨型転移がありますが、前立腺がんの場合は、造骨型であることが多いと言われています。溶骨型は骨を溶かし、その溶かしたところにがん細胞がすみつくのに対し、造骨型では、骨を溶かしはしますが、そこに骨を作る細胞が異常に活性化されてがん細胞とともに骨が増えていくというものです。

骨転移の症状として圧倒的に多いものは痛みで、他には痺れや麻痺、病的骨折、高カルシウム血症などがあります。特に手足のしびれや、脚の踏ん張りがきかなくなるのは、麻痺の状態としては重要な状況になりますので、早めに主治医に伝えるようにしてください。
「PSA の値に特に変動はないが2週間前から背中に痛みが現れて強くなってきた」という状況を想定してもらい、それを受診の際に医師に伝えるかどうかを聞いたところ、3分の1の方は伝えないと答え、その理由として半数以上の人が「前立腺がんとは関連のない症状である」と考えていたという調査結果がありますが、こうした痛みは実は骨転移と関係していることが多いので、注意が必要です(*6)。
骨折も骨転移の非常に重要な症状になります。骨がもろくなり日常のちょっとした動作でも骨折しやすくなります。脊椎や大腿骨の骨折では歩けなくなりますから、それだけで QOLがかなり低下してしまいます。骨折を防ぐために、定期的な骨密度の測定や無理のない運動、カルシウムの摂取を心がけましょう。また、転倒によって骨折が起こることが非常に多いので、室内の整理整頓を心がけましょう。
骨密度の低下については、ホルモン療法の影響もあります。ホルモン療法は、前立腺がんの栄養となるアンドロゲンを遮断しようというものですが、このホルモン療法によって、骨密度が年間に2.0~4.6%程度下がるとされています(*7)。加齢そのものによっても骨密度は下がりますから、前立腺がんにおいては骨のケアが非常に重要となります。

骨転移の検査と治療

骨転移の検査としては、腫瘍マーカーのPSAがあり、骨転移の増大とともにその数値は高くなっていきます。一方で骨転移に鋭敏に反応するALPなどの骨代謝マーカーもありますが、これだけに頼るのはリスクがあります。
骨転移の画像検査としてよく行われるのは、骨シンチクラフィー(骨シンチ)で、骨転移の部位に集まる性質を持つ放射線物質(ラジオアイソトープ)を血管内に投与し撮影するものです。
痛みを緩和する治療では、ホルモン療法を前提として行ったうえで、骨密度を定期的に測定し、運動やカルシウム摂取を行います。さらには骨転移に対する薬物治療や鎮痛剤、放射線治療、整形外科的処置と段階を追って適宜行っていくことになります。

前立腺がんの薬物療法については、ホルモン療法の他に抗がん剤による化学療法を行うことがありますし、ラジオアイソトープなどの放射性医薬品を使って骨転移の治療を行うこともあります。

骨転移への対応という点では骨修飾薬という破骨細胞に作用する薬がよく使われています。痛み、骨折、高カルシウム血症など、QOL に大きな影響を及ぼす骨関連事象を減らすのが目的で、これによってこうした事象が必ずしもなくなるわけではありませんが、統計学的に減ることがわかっています。

骨代謝についてですが、骨を壊す破骨細胞と骨をつくる骨芽細胞は協調・連動しており、破骨細胞で骨を溶かしたところにがんが転移して、溶けたスペースに、骨芽細胞とがんが協調する形で骨転移を増やしていくことになります。なお、女性の場合は、エストロゲンという女性ホルモンがこの破骨細胞を抑制しているため、閉経してエストロゲンがなくなることで破骨細胞が活性化し、これが骨粗しょう症の原因の一つとなっています。
前立腺がんのホルモン療法はアンドロゲンを遮断するもので、アンドロゲンはエストロゲンに代謝されるため、エストロゲンもなくなり、破骨細胞が元気になって骨が溶けていくことになります。我々のデータでは、ホルモン療法を行うと骨密度が年3%程度減ることがわかっています。

骨修飾薬を使う際に注意していただきたいのが、顎の骨が壊死してしまう骨吸収抑制薬関連顎骨壊死と、骨からのカルシウムの供給がなくなることで一気に血中のカルシウムが下がる低カルシウム血症です。そのためこの骨修飾薬の投与前には必ず腎機能をチェックし、歯科を受診してもらっています。また、投与中には、カルシウム、ビタミンDの投与と歯の状態のチェック、血中カルシウムの測定を必須とします。

骨転移への対応として鎮痛剤を使うこともあります。これは骨転移の痛みだけではなく全ての痛みに対して共通の原則といえますが、非オピオイド鎮痛薬から始まって、痛みの強さに応じて使っていくことになります。このほか、放射線による治療もあります(高松先生の講演レポート参照)。

出典

(*1)国立がん研究センターがん情報サービス『がん登録・統計』

(*2)厚生労働省『全国がん罹患数 2016年速報』https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000553552.pdf

(*3)国立がん研究センターがん情報サービス『がん登録・統計』,Lifetime risk of being diagnosed with,or dying from,prostate cancer by major ethnic group in England 2008-2010

(*4)前立腺癌診療ガイドライン2016 p.14

(*5)バイエル薬品株式会社 インターネット調査2018年8月(前立腺がんの確定診断を受けて前立腺がんの治療のため定期的に通院している50歳〜79歳の男性400名対象)

(*6)バイエル薬品株式会社 インターネット調査2016年12月(2016年9月実施、前立腺がんの治療を受けている50代〜80代の男性300名対象)

(*7)Gralow JR,et al.JNCCN 2013:11;S1-50

【講演2】

転移の早期発見・治療のために放射線でできるこ

高松 繁行先生
金沢大学附属病院 放射線治療科 科長

放射線について

放射線には「怖い」「気持ち悪い」というイメージがあると思います。日本は原子爆弾の被爆国であり、原発事故の問題も抱えていることもあるかもしれません。もちろん、強く浴びれば危険なものであり、安全に管理することは必要です。ただ、実は私たちは地球上に生きているかぎり空気中のラドンや宇宙線、土の中や食べ物から出ている自然放射線を浴びているのです。

なお、飛行機に乗ると地上よりも多く放射線を浴びます。飛行機で東京-ニューヨーク間を往復すると、0.1-0.2ミリシーベルト(年間で浴びる量の約1割)を余計に被ばくすることになりますが、それでも非常に量が少ないので健康被害が出ることはありません。

医療に使われている放射線は人工的に作られたもので、1895年にレントゲン博士がエックス線を人工的につくったのがその始まりです。この発見により、現在は医療や工業、農業など様々な用途に放射線が使われるようになりました。

放射線関連の医療を我々は放射線医学と呼び、主に画像を用いた検査・診断と、治療に分けられます。画像診断のうち前立腺がんに関係あるものとしては、レントゲン写真、超音波、 CT、 MRI、核医学検査などがあり、治療については放射線治療や、ラジオアイソトープ(RI)を使った内用療法(RI内用療法)などがあります。

放射線は、非電離放射線と電離放射線に分けられます。非電離放射線には携帯電話やBluetooth、Wi-Fiなどで用いられる電波や、赤外線、可視光線、紫外線などの光が含まれます。しかし、一般的に放射線と呼ばれているのはもう一方の電離放射線のことです。電離放射線は、細胞のDNAを傷つけるものであり、その一部が医療放射線として利用されています。この電離放射線のうち、光子線という電磁波としての性質があるものがX線やγ線で、粒子として質量をもった小さな粒を用いる粒子線が含まれます。レントゲン博士が見つけたのはX線で、これを使った検査や治療が進んできました。画像を用いた検査診断は、放射線を使うものと、放射線を使わないもの(被ばくをしないもの)に分かれますが、いずれも放射線科が扱います。

放射線を用いた検査

①X線写真
X線写真の原理は、体の向こう側にフィルムを置き、X線を出す電球みたいなもの(X線管球)に電気を通すことで一瞬だけ放射線が出て写真が撮れるというものです。X線は体を貫通してフィルムに届きますから、フィルムが感光します。写真の現像と同じように、このフィルムを現像するとX線の写真が撮れるという仕組みです。カメラでもデジカメが主流のように、現在はフィルムではなく、デジタルのパネルを使って撮影しています。

X線をたくさん吸収する骨や金属などは白く写り、X線がフィルムにたくさん届けば黒く感光して黒く写ります。難しい話になりますが、X線吸収係数、つまりどれだけX線を吸収するかは、物質の原子番号の3乗と密度に比例するので、密度の重いものほど白く写ります。実際のX線写真では様々な臓器が重なり合った影となっています。


(骨転移のX線写真:左の背骨の長方形に見える骨が2カ所いびつな形になって潰れており、右の脚の写真では、白い部分が溶けて虫食いのようになっている)

②CT

CTは、Computed Tomography(コンピュータ断層撮影)の略語で、体の輪切りの写真を撮ることができる画期的な撮影方法です。ベッドに寝た状態で輪の中に入って検査を受けるもので、輪の中でX線管球がぐるりと回り、放射線を出していきます。現在は処理が非常に速くなっており、らせん状に切りながら写真をつくるようになっています。

CT写真もX線をどれだけ吸収するかというのを写真にしていますから、白黒の強弱はX線写真(レントゲン)と同じで、X線を多く吸収する骨や金属が白くなります。逆に放射線を多く通す肺の中の空気などは黒く映ります。患者さんの足元からのぞきあげるような角度で体の向きを決めているため、写真の左手側が患者さんにとっての右側になります。

CTには造影剤を使わない単純CTと、造影剤を使う造影CTがあります。造影CTでは、ヨードという金属を含有する造影剤を100ccくらい注射して撮影します。金属はX線を吸収するため白く見えます。元々前立腺の中に石灰化がある場合はその石灰化も白く写りますが、がん細胞も血液を多く取り込みますから、造影剤が多く流れ込んで白く写ります。造影剤を使うことで、臓器の中の病巣がくっきり見やすくなるという特長があります。CTの欠点は金属に弱く、歯の治療などに金属を使っている場合は口の中を見る場合にCTだけでは不十分になる場合があります。


(骨転移症例:左がX線写真、右が造影剤CT:造影剤CTでは、骨に食いついたがん細胞が骨を壊しにかかり、周りの筋肉に広がろうとしている様子がわかる)

③RI検査(核医学検査)…骨シンチグラフィー、PET-CT検査

「RI」はRadio Isotope(ラジオアイソトープ)の頭文字をとったものです。放射線を放出する放射性同位元素(ラジオアイソトープ)を含んだ薬を飲み薬や注射で体に投与すると、生理的な特性から勝手に特定の臓器に集積するので、そこから出るγ線を拾い上げて写真を撮ります。臓器や骨、甲状腺の働きなどを評価できます。
前立腺がんでは必ずといっていいほど行うのが骨シンチグラフィーによる検査です。骨に集まる性質のあるラジオアイソトープを投与することで、全身同時に検査することができます。黒く集まったところが怪しいところで、レントゲンではわからないくらいの骨の変化も骨シンチでは見つけることができるため、基本的には、骨が疑わしいときにはこの検査を行うことが多いと思います。

PET-CT検査も放射性薬剤を投与し、その薬から放出される陽電子を検出して撮影します。現在はFDGというブドウ糖によく似た薬を用いることが多く、がん細胞はブドウ糖を取り込んで生きていくため、そこにこの薬が取り込まれることで写真に写し出されます。お腹がいっぱいで血糖値が高い状態ではがん細胞はこの薬を取り込もうとしないので、検査前は絶食となります。またもともと糖尿病があって、高血糖の場合は検査が無効になることがあります。悪性度の高いがん細胞ほどブドウ糖を取り込んで生きていますから、たくさん薬が集積して見えます。前立腺がんの場合は比較的おとなしい性質のがんが多いので、必ずしもがんが見えるわけではなく、検出できるのは5割、6割程度です。また、前立腺炎などの炎症でも集積して見えてしまうのが欠点で、その場合は細胞を調べるなどの検査が必要になります。

放射線を使わない検査

①超音波検査

超音波検査は、パソコン画面につながったプローブというもので行います。健康診断での腹部内臓(脂肪肝など)のチェックや産婦人科で妊婦さんの体をみる際に使用されるイメージがあると思いますが、被ばくをしないですから安全かつ簡単に検査ができ、さまざまな臓器の検査で使用されています。泌尿器科では、前立腺や膀胱、整形外科では靭帯や関節の中の水をみることもあります。なお、超音波を通しにくい空気のある肺や骨の検査には向いていません。

②MRI

MRIは核磁気共鳴画像法といい、磁石と電磁波の力で写真を撮るものです。まず大きな磁石の中に入ると、体の中でプロトンという原子核の中の陽子が、磁場の向きに合わせて整列します。そこに電磁波をかけるとその向きがずれるのですが、電磁波を止めると、そのずれたものが元の位置に戻ろうします。その際に出る電磁波をコイルというアンテナで捉えコンピューターで写真をつくります。
MRIのメリットは組織分解能といって、ある臓器の中の組織ごとに色を分けて表示する能力が非常に高いところです。例えば、発生直後の脳梗塞はCTではなかなか見つかりませんが、 MRIだとちょっと細胞が傷んでいる状態でも非常に明瞭に見え、診断がつきやすくなります。

前立腺がんでは、造影剤を使わないCTでほとんど見えなかったものが、MRIを使うとがんを黒く描出したり、さらに造影剤を使ったMRIでは、がんの場所が白く染まり、より明瞭に見ることができます。MRI の強みは各臓器の内部を細かく見ることができるという点にあり、また、いろいろな写し方があるのでその病状に合わせて撮影することができます。CTと違い金属があっても使えますが、体内に磁性体(磁石に付く金属)やペースメーカー(MRI非対応の)がある場合は撮影ができません。検査時間が長くかかり、動きに弱いことなどが欠点です。

これまでご説明してきたように様々な画像診断技術がありますから、それぞれの長所、短所を考えながら、臨床的に転移が疑われたときは、その疑わしい部位に応じてどんな検査をどう使っていくかを考えていくことになります。

転移の早期発見のために放射線でできること

がん治療の三本柱は、手術、薬物療法、そして放射線治療です。放射線治療では、がん細胞に狙いをつけてそのDNAに傷をつけることで、細胞分裂や増殖を止めていきます。治療で使う放射線には、X線やγ線、粒子線などがあり、様々な技術を使ってしぶといがんを倒そうということをやっています。

放射線治療のメカニズムについて説明します。放射線をあてれば、正常細胞もがん細胞も同じように傷つきますが、傷ついた状態で時間を置くと、正常な細胞はDNAについた傷を修復でき、少し回復します。一方、がん細胞は自分自身で回復する力が弱いため、傷が残ったままとなります。時間をあけてもう1回、放射線治療を行うと、ダメージが重なることで正常細胞よりもがん細胞が多く死んでいきます。こうして照射を20回、30回と積み重ねることで、がん細胞を倒していくのが放射線治療です。

放射線治療はその目的によって大きく、がんを治すための根治治療と、がんに伴う痛みなどの症状を抑えようという緩和治療に分かれます。

その方法は大きく3つあります。まずは体の外から照射する外部放射線治療があり、前立腺がんそのものや転移した病巣が治療対象になります。残りの2つは組織内照射で、1つは放射線を出す金属を前立腺に送り込み前立腺がんの治療を行う小線源治療です。もう1つはラジオアイソトープを使用した内用療法(RI内用療法)で、薬を投与すると、生理的な性質から薬が転移箇所に集まり、薬からα線あるいは電子線(β線)が出て、がん細胞を叩きます。骨転移病巣が主な治療対象です。

外部放射線治療

主に使う放射線はX線や電子線(β線)になり、治療装置はリニアックと呼ばれます。装置の中に電子銃という銃が入っていて、電気をかけると電子を加速して電子線がでます。 この電子線そのものを用いた電子線治療や、この電子線をタングステンという金属にあてて出たX線を使えばX線治療ができます。電子線は非常に軽い粒子なので皮膚の表面だけあてたいとき、例えば皮膚がんとか乳がんの治療などに使います。

一方、子宮がんや前立腺がんの場合は体の奥に病巣があるので、電子線は使うことができず、X線を使った治療になります。1方向からだけでは奥まで届くものの、表面ばかりが強く当たってしまいますし、周辺の関係ないとこも被ばくしてしまいます。そこで2方向、4方向、8方向と複数の方向から照射することで、周りの被ばくを減らす治療も行われています。

前立腺がんの骨転移で背骨の神経が圧迫されている方への外部照射のケースを示しますが、極力周りに当てないように4方向から背骨部分に30㏉を10回照射しました。

骨転移に対する放射線治療の効果としては、まずは痛みの緩和があり、実際6、7割の方は痛みが緩和され、全体の2割から3割の方は痛みが完全に消えたという調査結果があります(*8)。
また、麻痺の制御・予防や、病的骨折の予防のために放射線治療を行うこともあります。回数は10回が多いですが、1回や5回というケースもあります。

強度変調放射線治療(IMRT)という新しい照射法も出てきました。最新のコンピューター技術を使って、放射線の強さの調子を変えて行うもので、これにより、強く照射したいところには強く、あまり当てたくないところには弱くという調整が可能になっています。前立腺の後ろ側には直腸があり、従来の方法では強く当たってしまいましたが、強度変調放射線治療を使うと後ろの直腸にはあまり当てないように治療できるので、直腸出血という副作用のリスクを下げることができるようになっています。

組織内照射

私どもの病院では、現在2種類の小線源治療を使うことができます。一つは高線量率小線源治療というもので、非常に短時間に強い放射線を出す線源を前立腺に針で刺すものです。装置には、ワイヤーにつながった小線源が格納されていて、治療の時だけ小線源が出てきて、放射線をあてて終わるという形になります。現在は1回で13㏉の治療を行っています。

もう一つは密封小線源治療で、5mmの長さのシャープペンシルの芯のような形状のものを、前立腺の中に数十個埋め込むもので、放射線科と泌尿器科の医師が一緒に行います。

最後にラジオアイソトープ(RI)内用療法ですが、これはRIという薬を注射すると、生理的な性質から病巣に勝手に分布し、そこで電子線(β線)あるいはα線が出て治療をしてくれるというものです。前立腺がんの骨転移ではα線を使った治療が可能となります。去勢抵抗性前立腺がんで骨転移のある方にこの薬を注射すると勝手に骨転移病巣に行き、α線を出すことで痛みをとり、がんを抑制してくれます。臨床試験では、痛みの緩和効果だけでなく、生存期間延長という効果があったと報告されています。

見てきたように、現在は放射線を安全に管理し、これをうまく操ることで有用な検査や治療が可能になりました。放射線は怖くないということをご理解いただき、みなさまがお困りになったときにお役に立てれば幸いです。

(*8)  Clin Oncol (R Coll Radiol).2012 Mar;24(2):112-24.doi;10.1016/j.clon.2011.11.004.Epub 2011 Nov29. Update on the systematic review of palliative radiotherapy trials for bone metastases. Chow E1,Zeng L,Salvo N,Dennis K,Tsao M,Lutz S.

【講演3】

治療と向き合う上で大切なこと ~骨転移を体験して~

堀内 隆さん
前立腺がん骨転移経験者

知らないからこその不安

51歳の会社員です。自然の中に身をおき、いろいろなことを感じ取るのが好きで、特に山スキーが大好きなのですが、現在は骨転移があるので控えています。

前立腺がんが見つかったのは、2016年10月ですから、がんと共に生きて3歳ということになります。告知前後の体調は、脚に力が入らず、立ち上がるのもしんどくて、トイレに行くのが大仕事でした。そんなひどい状況でしたから、あと1カ月くらいで死んでしまうのだろうと思っていました。

告知はそういう状況で受けました。前立腺がんステージ4(グリソンスコア9/PSAは705)で、すでに多発骨転移がありました。脚に踏ん張りがきかなかったのも、骨盤や肩甲骨の右側が痛かったのも骨転移によるもので、ただの腰痛だと思っていたのは、「がん」だったのです。

告知の際に主治医から「前立腺がんは進行が遅いからすぐ死ぬわけではないですよ」と言われましたが、当時は知識がなく、がんと聞いただけで「死んでしまう」と落ち込み、医師の言葉を素直に信じることが出来ませんでした。今思えば、それは知らないからこその不安でした。周りにがん患者がいなかったのと、ネット上に怪しい情報が多く、何を信じていいのかわからなかったのを覚えています。

告知を受けたころは車椅子が必須だった体が、ホルモン療法を始めると歩けるようになり、杖もいらなくなりました。病気についても少しずつ学んだこともあり、調子が回復してくると、気持ちも「いけるぞ」と上向きになりました。

化学療法を乗り切るために「ご褒美旅行」

ホルモン療法を始めて7カ月経ったころ、QOL(生活の質)を高めるためにと化学療法を勧められました。やるかやらないかは私自身が決めることだと言われ、悩んだ末にやってみることにしました。化学療法では、定期的に具合が悪くなることがわかっていましたから、始める前に職場(工場)内の仲間に伝えました。どれくらいの副作用に襲われるのかわからず、正直とても怖かったです。主治医や看護師さんからの説明で大体のことはわかるのですが、自分の場合はどうなのか、そのときにどうするのか、というのが全くわからず不安になりましたが、他の患者さんの体験談を聞く機会があり、大分不安が解消されました。

それでも始めてみると、やはり化学療法の副作用で、むかつき、下痢、味覚障害、骨髄抑制、脱毛とフルコースでした。前立腺がん治療に使う薬は副作用が割と軽めだとも聞いていましたが、自分の場合はしんどくて、とても暗い日々を過ごしていました。

そんなときにある経験者の方からいただいたのが「暗い日々を乗り切るには、自分でも何かご褒美を設定しなさい」というアドバイスでした。そこで目標にしたのがご褒美旅行の「南アルプス登山」で、5カ月の化学療法を終えるころには痛みが一時的になくなっていたので、最後にもう一度山登りができると嬉しい気持ちになったのを覚えています。

ところが、化学療法を終えてわずか3カ月の2018年の1月にがんが再燃してしまいました。ホルモン療法がもう効かなくなったとわかりショックでした。それでも、骨折などのリスクなどを軽減しようと毎週トレーニングを続け、同年7月に予定通り南アルプス登山を決行しました。
再燃後は別のホルモン治療薬でPSAを抑えていたのですが、それも効かなくなっており、登山を終えて1カ月後には去勢抵抗性前立腺がんのホルモン療法をスタートしました。

やりたいことの実現に向けて

私の場合、この南アルプスだけでなく、西表島や屋久島、知床など、旅行の計画をいろいろ立て、それを実現するために主治医とのコミュニケーションを取ってきました。大事なのは「とにかく(自分がやりたいことを)絶対やるんだ」という気持ちだと思います。そうしないと、コミュニケーションも消極的になり、計画自体もすごく小さいものになってしまいます。
私からのみなさんへのメッセージは「診察も、相談も、強い気持ちで臨む」です。そこに生きる覚悟を問われていると思っています。

薬がなくなる不安

今の私の不安は、薬がなくなる不安です。2018年8月に去勢抵抗性前立腺がんの治療薬を始めましたが、それは2カ月で効かなくなり、12月から今年7月までは化学療法、そこからは別の去勢抵抗性前立腺がんの治療薬を使っています。それでも最近また PSA が上がったので、次はどうするか主治医と話をしているところです。使える薬はあと2種類という状況です。

余命についての考え方ですが、「あと何カ月」とよく言いますが、その正規分布をみると実は「12カ月」と言われても幅があることがわかります。決して深刻にとらえすぎないほうがいいと思います(とはいっても、私自身はそう言われたときにすごいショックを受けましたが)。
今は、「いつかは死んでしまうのだから、やりたいことを今のうちにやっておこう」と考えています。そしてそのいつかは死んでしまうということだけでなく、骨転移の場合、進行すると立ち上がれなくなったり、歩けなくなったりすることがわかっています。だからこそ、やりたいこと、会っておきたい人、行っておきたいところがあるなら、後にせず今しかないと思って行動するといいのではないかと思っています。

生きる目的を持って

私は多くの友人たちから応援してもらい、勇気をもらうことで元気に活動できています。だからこそ何か恩返ししたい、勇気づけたいと思っています。今は学校や自分の会社の中で経験を話していますが、本当は自分が一番辛かったがんになったばかりの人を勇気づけたいと考えています。社内のホームページに闘病記や経験談も投稿しています。社内にいるけれど、誰にもいえずにいる患者さんもいるからです。お礼メールもいただくようになったので少しは意味があるのではないかなと思っています。


*患者さん個人のご経験をお話いただきました。すべての患者さんが同様の経過を示すわけではありません

【Q&Aディスカッション】

パネリスト:溝上 敦先生 泉 浩二先生 高松 繁行先生 堀内 隆さん
司会:武内 務さん(NPO法人腺友倶楽部 理事長)

質問:PSAの数値が良くても、骨転移の可能性はありますか。PSAの理想の数値はありますか。

泉先生:答えとしては「あります」。どのような状況で(PSA数値が)低いかということにもよりますが、初診時に PSA が高ければ高いほど骨転移が出てくる可能性も高くなると言っていいでしょう。 PSA は ステージ(病期)の判断には含まれていないものの、高ければ高いほど当然ステージは悪くなるといえます。ホルモン療法を行っている場合は、その数値が低ければ低いほどその後の経過が良くなることは明らかになっています。ただ、その数値の下がり方については議論の余地があり、ゆっくり下がっていった方が、そしてより低く下がったほうがいいとも言われています。

質問:骨転移は PSA の値によってどれぐらい分かるものですか。

泉先生:一言でお答えするのは難しいのですが、もちろんPSAが高くなればなるほど骨転移と診断される率は上がります。そして、ホルモン治療によって PSA が下がり、骨転移の活性も下がっていくわけですが、知っておいていただきたいのは、PSA が下がると同時に骨転移の量が同じ割合で下がっていくというわけではなく、少しずれた動きをすることもあるということです。
溝上先生:PSAは治療を開始すれば下がっていきますし、それはいいことなのですが、ではその数値が上がっていったときに、その上がり方がわずかだからたいしたことはないだろうと思っても、実は骨シンチなどで調べると、かなり進んだ病態の骨転移が見つかることはよくあります。ですから、PSAが上がっているけれども、ちょっとだけだから大丈夫だと油断しないようにしてください。心配なときには患者さん側から主治医に画像検査してくれるよう頼むことも必要だと思います。

質問:放射線治療を行った後に骨転移が生じた場合、再度放射線の治療というのは可能でしょうか。

高松先生:同じ場所に放射線を2回当てるのは、難しいといっていいでしょう。前立腺がんの場合は、強く当てれば当てるほどがんが治る可能性が高いと言われていますから、1回目の放射線治療の際には我々もギリギリまで頑張って放射線を当てています。一方で、放射線を当てれば当てるほど正常な細胞を傷つけるリスクが高まり、副作用の率が高くなってしまうのです。具体的には1回目の放射線治療では、副作用の発生率が5%程度に収まるように放射線量を計算しているのですがその時点で限界ギリギリに当てているので、もう一度放射線治療を行うとなると、その発生率が2割とか、3割となり、副作用のリスクが高くなってしまいます。一度治療した前立腺から離れた骨や、肺など違う部位にがん転移が見つかったときには、そこにあてることは可能ですので、状況に応じて相談していただければと思います。

質問:転移した骨に対する放射線治療を受けていますが、RI内用療法は適用になりますか。

高松先生:体の外から当てる放射線治療とRI内用療法というのは本質的に照射の機序が違うので、外からの放射線治療を受けている方でも、RI内用療法は可能です。去勢抵抗性前立腺がんで骨転移がある方はRI内用療法の対象となる場合がありますから、主治医の先生に相談していただければいいと思います。

質問:金沢大学附属病院では、ロボットを使った手術も行われているようですが、放射線治療との比率はどれくらいでしょうか。

高松先生:医療機関によっても、またどういった放射線装置があるかにもよりますが、金沢大学附属病院の場合でいえば、ほぼ半々かとは思います。

武内さん:もちろん医療機関によって違いますが、一般的な話として、海外では3人患者さんがいたら、そのうちの2人は放射線治療を受けて、1人が手術を受けますが、国内ではその逆で2人が手術で、1人が放射線治療という割合だと聞いたことがあります。あくまでも参考として紹介させていただきました。

溝上先生:早期のがんであれば、手術、放射線どちらを選んでもいいと思いますが、浸潤がかなり進んでいるものの、まだ転移がないという状態、つまり局所で前立腺がんが進行している方の場合、手術をしても再発する可能性があり、浸潤がんに対しては、ホルモン療法を併用するという前提で、放射線治療を選んだほうが、再発はしにくいというデータが出ています(*9)。あとはどちらにするかは患者さんの気持ち次第です。私の場合であれば、浸潤がんの場合には再発する危険性がどれくらいあるか具体的に示し、そのうえで考えてもらっていただいています。
(*9)出典:BJU Int. 2012 Feb;109 Suppl 1:22-9

質問:骨転移はPSAの数値と症状でしか確認できないですか。定期的に骨シンチしたほうがいいですか。

泉先生:骨転移に関してPSA の数値は必ずしもパラレルに反応するわけではないので、骨シンチの検査などを定期的に行うことが必要です。あとはCTや場合によってはMRIを使って見ていくといいと思います。

質問:RI内用療法について教えてください。

高松先生:RI内用療法は、男性ホルモンを抑える薬が効きづらくなった去勢抵抗性前立腺がんで、骨の痛みの治療効果と生存期間の延長効果があります。骨転移が1カ所だけだったら、外からの放射線も可能ですが、骨転移がいろいろな場所で多発し、痛みがある場合はアイソトープ内用療法が良い適用と思われます。どの程度痛みが軽減されるかは、その評価がなかなか難しいところはありますが、ある程度の効果は期待していいと思います。ただし、一連の治療(4週毎投与で6回まで)を何回も繰り返してできる治療ではないので、痛みや病状からタイミングを見計らって受けていただくのがいいと思います。

質問:どうして前立腺がんで顎骨壊死になるのですか。顎骨壊死とはどういうものですか。

溝上先生:骨転移のある患者さんには、骨修飾薬を使っていただくのですが、これは骨粗鬆症の治療薬をさらに強くしたもので、1カ月に1回、あるいは3週間に1回といった頻度で、皮下注射あるいは点滴をします。ただ、この薬を長期間使っていると、約10%の患者さんに顎の骨の炎症である骨隨炎という副作用が起きます。軽い炎症から始まるのですが、ひどくなると顎骨壊死に至る怖い病気です。顎骨壊死になると食事が難しくなりますし、抗がん剤が使えなくなることもあります。こうしたリスクは、虫歯が多い、歯槽膿漏など、口の中の衛生状態が悪い方に高いとされており、骨修飾薬を使う前には、患者さんに口腔外科あるいは歯科で診察を受けてもらい、必要があれば抜歯などの治療もしてもらっています。骨の転移の治療をしている方は、定期的に口腔外科などで診てもらってください。また、PSAが落ち着いているからと、骨修飾薬の治療中に主治医の許可なく抜歯してしまい、顎骨壊死に至ったケースもありますから、注意が必要です。

質問:ホルモン療法、化学療法、放射線治療にはそれぞれどのような副作用がありますか。

〈ホルモン療法〉
泉先生:ホルモン療法の場合、男性ホルモンを不活性化しますから、それに関連する副作用がみられます。具体的には、いわゆるホットフラッシュで、ほてりなど女性の方の更年期と同じようなものが出てきます。また、脂肪がつきやすくなりますし、場合によっては男性ですけれども乳房が出てきたり、乳房痛があったり、体毛の生え方が変わってくることもあります。最初のホルモン療法が効かなくなり、別のアンドロゲン阻害薬に移行することで、さらに倦怠感が出たり、勃起障害が出やすくなったりなど、特異的な副作用がでてくることがあります。

〈化学療法〉
泉先生:化学療法は、最初の頃は白血球減少が見られます。骨髄に結構負荷がかかる薬ですので、白血球が減少したり、場合によっては赤血球が減少したりすることもあります。少し長い間やっていると手の痺れや神経障害、また吐き気や倦怠感といった症状も出てくることがあります。このように多岐にわたる副作用がありますが、薬の濃度や量や頻度によっても変わってきますし、同じ症状が等しく出るわけではありません。

〈放射線治療〉
高松先生:放射線治療では、基本的に副作用は放射線をあてた場所に出てきます。前立腺にあてれば前立腺ということになりますし、骨にあてればその骨がどこにあるかで副作用の場所は変わります。前立腺の場合は、尿の調整をしている臓器なので、そこに放射線を当てると、おしっこが近くなったり、出にくくなったりといった排尿に関する症状が出ます。また、前立腺の後ろにある直腸に放射線があたると、便に血が混じることがあります。骨については、例えばお腹の真ん中あたりに当てると、そこに胃と腸がありますので、そこに放射線が当たることで食欲が落ちたり、下痢をしたりといった症状が出てくることがあります。

質問:前立腺がん患者にいい食べ物とか悪い食べ物はありますか。どのような食生活を心がけたらいいですか。

堀内さん:特に気にしてないです。化学療法を始めたりすると、そもそも食欲がない時期が結構ありまして、とにかく食べられるものは食べられるうちに食べておくのがいいなと考えるようになりました。食べられるものを食べられるだけ、無理はせず、食べすぎないようにしようにといった程度です。

泉先生:がんにいい食べ物、悪い食べ物というのは話題としてよく挙がります。豆類に入っているイソフラボンがいいのではないかといった程度のものはありますが、学術的に確たる証拠があるものはまだありません。悪いもので言うと食生活の欧米化で前立腺がんが増えているということを先ほどお示ししましたが、動物性タンパク質や動物性脂肪、乳製品などが寄与しているのではないかとは言われています。確たるものはないので、それらが全部だめですとはもちろん言えませんが、ホルモン治療中は代謝が変化し、体に脂肪がつきやすい状態でもありますから、大雑把なことをいえば、油ものよりは、和食の方がいいだろうという結論は出せるかなと思っています。

溝上先生:私もさほど食べ物にはこだわらなくてもいいように思いますが、ホルモン療法のときには、食べすぎに注意してください。血糖値が上がりやすくメタボにもなりやすいので、メタボになりやすい食事を避けてほしいのですが、そうなるとやはり結果的には和食のような食事のほうが無難なのではないかと思います。その程度の話です。また、がんにいいからとサプリメントを摂られる方がいますが、私は基本的にサプリメントはやめてくださいと言っています。サプリメントは本当にその栄養素が足りない人が取るものであって、極端な話、日本で普通に食事をとっている方で、そのような方はいないのではないかと思っています。基本的にサプリメントはやめ、それよりもビタミンなども含めさまざまな栄養素が入ったバランスのいい食事をとっていただきたいと思います。決して民間療法には走らないでください。

質問:今は転移がありませんが、転移しないために自分自身でできることはありますか。

泉先生:基本的にはそういうものはありませんが、気になる方はタバコはやめてください。喫煙は肺がんや膀胱がんのリスクを高めることがわかっています。前立腺がんはそこまでの関係はないとされていますが、前立腺がんが再発する人にはタバコを吸っている人が多かったというアメリカの統計はあります。それを信じるかどうかはわかりませんが、タバコはやめたほうが再発はしにくいのではないでしょうか、というお話はしています。

お持ち帰りメッセージ

武内さん:最後に一言ずつお願いいたします。
堀内さん:きょうは先生方のすぐ隣の特等席のような場所で前立腺がんについて学ぶことができ、とても良い機会になりました。ありがとうございました。
高松先生:私からは放射線の一般的な話を紹介しました。放射線は怖いものですが、我々が安全に管理することで治療に役立てています。みなさんには放射線治療の話も含め、ぜひ気軽に主治医に相談してほしいと思います。
泉先生:きょうはお休みのところ、たくさんの方に来ていただいたことに感謝申し上げます。前立腺がんの患者さんは段々増えていますので、患者さん本人だけでなく、家族の方にもぜひ知識をもってもらい、サポートするために必要なことを学んでいただきたいと思います。
溝上先生:患者さんと医師とのコミュニケーションはまだちょっと足りないかなという印象を持ちました。コミュニケーション不足で治療が後手後手になってしまうことがあります。ですから副作用なり症状なり、本当に遠慮なく主治医の先生に相談していただきたいと思いまし、それによって主治医との関係もよくなります。我慢だけは絶対にしないでください。

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前立腺がん セミナー in 宮崎 ~もっと話そう前立腺がん転移のこと くらしを守る早期対応のすすめ~

本レポートは2019年9月23日に開催した時の内容です。医療情報は日々進歩しています。最新の情報と変わっている場合があります。また講師の所属もそのときのものです。ご注意ください。

前立腺がん セミナー in 宮崎
~もっと話そう前立腺がん転移のこと くらしを守る早期対応のすすめ~

座長:賀本 敏行先生(宮崎大学医学部 発達泌尿生殖医学講座 泌尿器科学分野 教授)

目次

【講演記事1】前立腺がん転移について知ってほしいこと
寺田 直樹先生 宮崎大学医学部附属病院 泌尿器科 講師

【講演記事2】転移の早期発見・治療のために放射線でできること
楠原 和朗先生 宮崎大学医学部附属病院 放射線科 助教
(2019年10月現在:宮崎県立延岡病院 放射線科)

【講演記事3】治療と向き合う上で大切なこと ~骨転移を体験して~
川﨑 陽二さん(前立腺がん骨転移経験者)

【Q&Aディスカッション】
パネリスト:賀本 敏行先生 寺田 直樹先生 楠原 和朗先生 川﨑 陽二さん
司会:武内 務さん(NPO法人腺友倶楽部 理事長)

【講演1】

前立腺がん転移について知ってほしいこと

寺田 直樹先生
宮崎大学医学部附属病院 泌尿器科 講師

前立腺がんについて

前立腺は膀胱のすぐ下にある器官で、前立腺液というものを分泌することで、精子の運動・保護・栄養に関与しています。

前立腺の病気では、前立腺肥大症もよく耳にすると思いますが、前立腺がんとは別の病気です。前立腺をミカンに例えたときに、ミカンの実にあたるのが内腺と呼ばれる領域で、ここが大きく腫れると内側にある尿管が圧迫されておしっこが出にくくなります。これが前立腺肥大症です。一方、前立腺がんは、ミカンの皮の部分にあたる外腺領域にできるものです。前立腺肥大症が転移しないのに対し、前立腺がんは他の臓器に転移する点が大きな違いです。この2つは異なる病気ですが、合併して生じることもあります。

次に前立腺がんの症状についてですが、残念ながら早期がんでは無症状です。進行すると排尿困難や残尿感、排尿時痛、血尿、血精液症といった前立腺肥大症と似た症状が出ます。転移がんについては、骨やリンパ節への転移が多く、その症状としては骨転移からくる腰痛や手足の痛みなどがあります。

前立腺がんの早期発見に有効なのが、PSA検査と呼ばれるスクリーニング検査です。PSAというのは前立腺が血中に分泌するタンパク質で、このPSAの値が高いほど前立腺がんの発見率が上がります。この検査により、がん検診における前立腺がんの発見率は0.41%と他のがんに比べ高くなっています。前立腺患者は近年急増しており、現在は日本人男性が生涯のうちに前立腺がんに罹患する割合は9%で11人に1人(*1)となっています。
(*1)出典:国立がん研究センター がん対策情報センター

前立腺がんのリスク因子としてはまず高年齢が挙げられます。60歳ごろから高齢になるにつれて患者が増加します。家族歴もリスク因子とされ、父や兄弟に前立腺がん患者がいる場合、罹患リスクは2倍から5倍程度になると言われています。正確な証明はまだされていませんが、食生活の欧米化も前立腺がんの発症に関与しているという指摘があります。

前立腺がんについて

前立腺がんのリスク分類は、PSAの数値とグリソンスコア、さらにTNM(病期)分類の3つの因子を組み合わせて判別されます。TNM分類のTは局所である前立腺自体の状態、Nはリンパ節転移、Mは遠隔転移のことを示しており、カテゴリーで評価します。また、グリソンスコアは、針で前立腺の組織を取って顕微鏡で見ることで、主な二つのがん集団をそれぞれ5段階評価したもの(*2)です。「3+4=7」とか「4+5=9」といった形でスコア化します。数値が高ければそれだけ前立腺がんの悪性度が高いということです。

(*2)組織中のがん細胞から、数が多い順に2種類を選び、それぞれの悪性度を5段階評価したもの

一般的には、中リスクの限局性がんについては手術、局所進行がんあるいは、高齢患者の場合はホルモン療法と放射線の併用、診断時から転移がある場合にはホルモン療法がそれぞれ治療の第一選択とされます。また、グリソンスコアが6点かつ、PSAが低く、たまたま検査で見つかったようなものを偶発がんあるいは低リスクがんといいますが、そうした場合には監視療法といって、何も治療をせずに経過を見るということがあります。

再発をきたした場合の2次治療も規定があり、それまで監視療法だった場合は手術や放射線治療、手術の後は放射線治療あるいはホルモン療法、放射線治療の後はホルモン療法、ホルモン療法で増悪していれば抗がん剤といった流れになります。

具体的に宮崎大学病院においてどんな割合で前立腺がん患者さんが見つかっているかのデータがあるので紹介します。2011年から2017年までの7年間で計863人、毎年約150人が当院で前立腺がんと診断されました。そのうち約8割は転移なしでしたが、13%の方には初回診断時に転移が認められています。初回治療については、手術が3割で放射線が4割、ホルモン治療が2割、監視療法が約6%でした。

前立腺がんの転移と治療

バイエル薬品が昨年行った調査では「前立腺がんの治療に関して不安に思うこと」として7割以上が「がんが転移しないか」と答えています。(*3)その転移について理解するためにも、浸潤との定義の違いを理解しておきましょう。浸潤というのは、局所で増殖する局所進行がんで、前立腺の中で外に広がっていくものです。一方で転移というのは血液やリンパの流れに乗って前立腺から離れたところへ移動して増殖するというものです。さきほど示したTMN分類でNは所属リンパ節への転移を、Mというのは 骨盤外リンパ節や骨、肺などへの転移を示します。

前立腺がん診断時に遠隔転移があった患者さんを対象に、その転移がどこに見つかったかを調べた当院の調査では、88%で骨への転移があり、次に多かったのはリンパ節、さらに肺、肝臓と続きます。最初は転移がなかったものの治療をしていくなかで、最終的に転移が出た患者さんの転移先を見ても骨への転移が80%から90%と非常に高くなっています。骨転移は、前立腺の中のがん細胞の一部が血管に入り、血管の流れにのって骨に移動、そこにすみついて増殖することで起こります。

(*3)「前立腺がん患者さんと家族の情報共有に関する意識調査」
対象:前立腺がんの患者さん103名、同居している家族に前立腺がん患者さんがいる方103名
(全国、方法:インターネットによるアンケート調査、実施期間:2017年12月)

転移した前立腺がんに対して行われるのが、男性ホルモン(アンドロゲン)をブロックするホルモン療法です。アンドロゲンは95%が睾丸(精巣)から分泌され、残りの5%は副腎という腎臓の横の臓器から分泌されていますが、このアンドロゲンは前立腺の中のがん細胞の増殖を促進する働きがあります。つまり前立腺がんはこのアンドロゲンをえさにして増殖をしていますが、そのえさをブロックしようというのがここでいうホルモン療法なのです。具体的には、LH-RHアゴニスト(アンタゴニスト)という薬剤を月1回あるいは3カ月に1回注射をすることで、精巣を取るのとほぼ同じ効果を得られ、精巣性のアンドロゲンが完全にブロックされます。これにプラスしてアンドロゲンが前立腺にくっつくところを押さえる抗アンドロゲン剤を併用するのが複合アンドロゲン遮断(CAB)療法 であり、初回のホルモン療法として国内で広く行われているものです。

こうしたホルモン療法は平均2年ほどで効かなくなってしまいますが、その後の追加治療としては現時点で10種類もの薬が使用可能であり、これらの薬についてタイミングを見計らいながら追加していくことで、転移性前立腺がんのコントロールを行っているのが現状です。
前立腺がんは他のがんと比べて予後が非常に良好です。全がんの遠隔転移のある方の5年生存率は20%以下という厳しい現状ですが、前立腺がんだけに絞るとその率は40%を超えます。最近新しい薬剤が加わりさらにその生存率は高まるのではないかと期待されています。

前立腺がんと骨との関係について

骨転移には溶骨性転移と造骨性転移の2種類があります。溶骨性転移というのは骨転移の周辺に破骨細胞というものが出現して骨を溶かしてしまうもので、乳がんや肺がんなど多くのがんの転移で見られます。一方で前立腺がんには造骨性転移が多く、このがんの特徴となっています。これは骨芽細胞という骨をつくる細胞が増殖するもので、骨を溶かすのではなく骨を作っていく転移であり、この造骨性転移が多いことも、前立腺がんの予後がいい理由の一つになっています。ただ、全てが造骨性転移ではなくて溶骨性も含んだ混合性であることが多いというのが現状です。

骨転移の症状では、痛みの他、手足のしびれや麻痺が起こります。病的骨折という怖い病気もありますし、骨に転移があると骨の中のカルシウムが解け、高カルシウム血症と言って食欲不振や吐き気、倦怠感、意識障害などの症状をきたすこともあります。

バイエル薬品の調査では、前立腺がんの治療を受けている患者さんの約35%が「PSAの値に特に変動はないが、2週間前から背中に痛みが現れて強くなってきた」という状況でも「受診の際に医師に伝えない」と答えています。PSAが上がってなくても転移が増大することはありますから、こうした場合には必ず主治医に伝えていただきたいと思います。

また、痛みの伝え方としてセルフチェックもあります。痛みの程度を無痛がゼロで最悪が5としたとき、いくつなのか、痛む場所はどこなのか1カ所なのか複数なのか、ずきずきする痛みなのか刺すような痛みなのか、動かしたときに痛いのか、いつも痛いのか、眠れない、食欲がないなど、日常生活への影響が出ているのか、こういったことを医師に伝えることが良い治療に繋がります。

痛みやしびれの症状というのは、最初は小さな違和感からどんどん進行して起こります。前立腺がんの骨転移では背骨の中の神経のかたまりのような脊髄に転移することが多く、そこにがんが侵入していくと、足のしびれ、麻痺という症状が出てしまいます。麻痺の場合、発生して48時間以上経過すると、そのまま全く足が動かなくなるというリスクがありますから、手足がしびれる、力が入らない、足のもつれや踏ん張りがきかないという症状が起こったら必ず主治医に伝えてください。

日常のちょっとした動作で骨折する病的骨折にも注意が必要です。特に大腿骨の骨折では、歩行が困難になり日常生活への影響が大きくなります。この病的骨折には転移そのものに加えてホルモン療法の影響もあります。1年間ホルモン療法をすると腰椎で5%程度、大腿部で2%ぐらい骨密度が低下するというデータもあり、骨折のリスクが高まってしまうのです。

予防のためには、無理のない運動で骨密度を上げるといいでしょう。カルシウムの摂取や転倒防止のための室内の整理整頓も心がけましょう。また、骨修飾薬というものを使用することで骨折を防ぐこともできます。これは破骨細胞の作用を抑制して骨芽細胞の活性化を増強します。こういった薬も使いながら骨転移をコントロールしていきます。自分の気持ちをしっかり主治医に伝えることは、QOL(生活の質)の改善にも有効です。ぜひ医師との良好なコミュニケーションを心がけてほしいと思います。

【講演2】

転移の早期発見・治療のために放射線でできること

楠原 和朗先生
宮崎大学医学部附属病院 放射線科 助教
(2019年10月現在:宮崎県立延岡病院 放射線科)

さまざまな画像検査

前立腺がんは骨転移が多い病気です。多くの患者さんは、初発のときに少なくとも骨シンチグラフィや単純X線写真(レントゲン写真)、病変が見つかった方は CT(コンピューター断層撮影)などによる検査を受けているのではないでしょうか。

【レントゲンとCT】
レントゲン写真と CTは基本的には同じもので、撮影した画像をどう処理するかという点に違いがあります。レントゲン撮影の長所としては、前立腺の場合、多くは造骨型転移あるいは混合型転移なので、画像に白く写し出され、比較的状況の把握がしやすく、検査が簡単ということがありますが、炎症性変化や骨折のあとといったものとの区別がつきにくく、腫瘍そのものの評価が難しい面があります。一方、CTの方はある程度腫瘍の評価ができますが、それでも筋肉とかそういったものとの分離が少し難しいという点があります。

【骨シンチ・FDG-PET/CT】
最近はMRI(磁気共鳴画像)を撮ることが多くなっています。これは放射線を使うものではなく、磁気を使って画像を作り出すものですが、長所としては腫瘍としての評価が非常にしやすく、腫瘍が脊髄をどの程度圧迫しているかなど局所の描出がしやすい一方で、骨そのものの構造が画像にできないため、骨の変化は、CTやレントゲン写真も合わせて評価を行うことになります。MRIに関しては描出の条件をいろいろと変えることができるため、実際の腫瘍の広がりも把握しやすくなります。

【MRI】
放射線を出す薬を体に打って、腫瘍に集まり、それが写真に写るという原理を使ったRI(核医学検査)には、骨シンチグラフィやFDG-PET/CTがあります。全身をくまなく診られるというのが最大の利点で、正面断や水平断での描出もできることから、複数病変がある患者さんにはとても有効です。一方で、基本的に骨の変化としてみたときに骨折のあとなどの区別が難しい点があり、基本的に形態評価ではなく、あくまでも「ここに集まりますから、病気の疑いが濃厚です」という評価がされるだけであり、画像としてみたときに実際に治療の適用があるかを判断するのは難しい点があります。
以上の検査はそれぞれ長所・短所を持ち合わせているため、基本的には全部使うというのが理想ですが、実際は保険診療や金銭的負担などの問題もあり、「随時必要とされる方に使う」ということになります。

こうした検査結果を参考に放射線治療科ではその治療が適用になりうるかどうかを判断します。前立腺がんの診断がつけば骨シンチを撮り、明らかに腫瘍があればCTやMRIも撮ります。前立腺がんの場合は長い治療の中でなるべく早く骨転移を見つけるということ、初期治療でうまくいってもその後転移が起こることがあることから、時期を見て、全身が一度に見られる骨シンチ検査を積極的に利用しています。

前立腺がんにおける放射線治療

前立腺がんは骨転移が多い病気です。多くの患者さんは、初発のときに少なくとも骨シンチグラフィや単純X線写真(レントゲン写真)、病変が見つかった方は CT(コンピューター断層撮影)などによる検査を受けているのではないでしょうか。

前立腺の場合、転移に多いのが骨転移ですが、麻痺改善のための整形外科での緊急の手術を除き、基本は標準治療である薬物療法です。化学療法やホルモン療法、骨修飾薬療法などを行うほか、局所への放射線療法、また今積極的に行われているのが、放射性薬剤を体内に投与して体の中から治療するRI内用療法というのがあります。

放射線を外から照射する治療(外照射)については、治療導入が比較的容易で、比較的短期間で治療効果が得られる、治療コストが比較的安価であること、また、痛みのある箇所、症状が出そうな箇所だけを治療でき、反復治療に使いやすいという長所があります。ただ、逆に広く治療することが難しく、また、痛みが強くじっとしていられない患者さんには使い難いといった点があります。

一方で、注射で治療する放射線治療(RI内用療法)は、注射によって体の中の必要な箇所に取り込まれ、そこでアルファ線あるいはベータ線を放出することで、内側から治療するものです。全身をくまなく治療するのに向いている反面、 治療効果が短期間では得にくく、コストが高い、長期経過内での反復治療が制限されているといった問題があり、初回治療のみというスタンスで臨む必要があります。

放射線治療についてお話ししてきましたが、そもそも放射線治療とはどういうものかについても簡単におさらいしておきましょう。放射線治療は、放射線によって腫瘍そのものを壊すものではありません。人間の体を構成している細胞核内にある遺伝子を壊すことで、がん細胞の世代交代をストップさせ、腫瘍細胞を減らすというのが放射線治療です。

放射線治療はがん治療としては、入口から出口まで全ての段階で使うことが可能です。かつては緩和治療として行うことがほとんどでしたが、現在は根治を目指す治療において照射を行うことが主となっています。

緩和照射という考え方は患者さんの症状に対して迅速に効果を発現させることで、1日2日しか時間的猶予がないという緊急性のある照射を含みます。また前立腺がんは予後が長いので、長期的な効果を期待し、症状が出てくるのを事前に防ぐ、あるいはすぐにでも症状が出そうだという時には出る前に症状を叩くという考え方で治療することもあります。

骨転移に対する緩和照射の目的は除痛、脊髄の障害による麻痺の改善・予防、骨折予防があります。大腿骨などの四肢骨を骨折すると日常生活が困難になり、寝たきりになるリスクがあり、それを事前に予防することが重要です。

放射線の照射方法ですが、根治目的の照射の場合は、37回、39回といった具合に分け、少量ずつ長期的に渡って前立腺に照射しますが、骨転移では2週間で3グレイを10回といった具合にある程度多い量を短期間で治療する方法が標準的です。痛みを取るだけであれば8グレイを1回で当てるような使い方もあります。また、より集中的に放射線を集めるために、体の周りを機械がぐるりと回りながら放射線を当てる治療を行うこともあります。

外照射による除痛効果については、鎮痛剤の量が減った、鎮痛剤の強さを落とすことができたという除痛効果は8割から9割の患者さんにみられますし、また全く痛みがなくなりましたという人も半分近くいらっしゃいます。骨転移の局所の痛みに対しての放射線治療はグローバルスタンダードとしてずっと使われているものです。

骨転移の痛み・麻痺に対する治療と骨折予防

さて、そもそも骨転移がなぜ痛むかですが、大きく3つの原因があります。まず骨にも痛点はありますから、骨そのものが痛むもの、骨が腫瘍によって膨らむことで周りの神経を圧迫することでも痛みが出ます。また、脊髄など大きな神経の近くで神経そのものを腫瘍が圧迫することによる痛みもあります。放射線治療はこのすべてに効きますが、特に骨そのものの痛みに対しては短期間で大線量を照射することによる除痛効果は効果が出やすいといえます。逆に腫瘍そのものによって痛いという場合は照射を小分けにして腫瘍を縮小させることで疼痛を抑える効果を求めます。

麻痺に関しては緊急を要することが多く、ガイドラインが決まっており、症状の強さや外科適応がすぐにあるのかないのかといったことで対応が決まりますが、基本的にはある程度以上の予後がある方は麻痺が出そうなとき、あるいは出ているという状況ではすぐに手術をすることが多いです。麻痺症状出現から48時間以内の治療が必要とされ、その48時間をゴールデンタイムと呼ぶこともあるのですが、その時間に適切な治療ができれば80%くらいで歩行機能を維持することが可能で、すでに麻痺により歩行が困難になっている場合でも20%から30%で歩行機能の回復が可能だとされています。治療開始時に完全麻痺の場合ではその割合は10%以下に下がります。

複数箇所治療があるような場合は、単発のそれぞれの治療が有効だと期待できる方や、麻痺や骨折がすぐに出そうという方は「すぐにでも放射線を」と勧められることが多く、手術の適用になる患者さんも手術後すぐに放射線をあてるのが基本になっています。ただし、著しく困難な疼痛がある、認知症の症状が見られるなど、体の制御が難しい患者さんの場合は、内用療法など全身くまなく治療することもあります。

骨転移によって起こるさまざまな問題を骨関連事象といいますが、そうした事象が最終的に何を引き起こすかといえば、生存期間の短縮です。前立腺がんのように予後が長く期待できる患者さんであればあるほど、患者さんのQOLを下げないよう放射線を積極的に使うということが勧められています。

まとめですが、診断としては放射線を使った検査が治療の指針として重要になりますし、初期であれば骨シンチが優先ですし、それ以降の経過ということになれば PSA が再度上がってきた時点で また骨シンチをしたり、病変の確認ができた時点で CT を撮ったり MRI を撮ったりします。PET CT を撮ったりすればリンパ節転移を含めた一括での他の転移も評価ができます。

前立腺がんは有痛性の骨転移を起こしやすく、予後が長い病気ですから、痛みを取るための放射線治療は非常に有益ですし、それだけでなく麻痺や骨折予防という役割も果たすことができます。高齢の男性の方は我慢してしまう傾向があるのか、かなり症状が出てきてから診察に来られる方が多いのですが、それでは放射線を使った治療が難しくなってしまうこともありますから、みなさんも痛みが小さいうちに我慢せずに主治医に訴えるようにしていただきたいと思います。

【講演3】

治療と向き合う上で大切なこと ~骨転移を体験して~

川﨑 陽二さん
(前立腺がん骨転移経験者)

前立腺がんの骨転移体験者として、きょうは何かみなさんに一つでもヒントになればという思いで、これまでの自分の歩みを話させていただきます。

私の前立腺がんが見つかったのは今から7年前で当時は介護福祉士として働いていました(その後退職を余儀なくされましたが、現在は復職しています)。最初から骨転移があり、治療前のPSA700.68、グリソンスコア10でしたから、みなさんにもその時の私のショックの度合いが分かっていただけるかと思います。がん宣告を受けたときには、がん自体を率直に受け止められなかったですし、骨転移についても理解していませんでした。私自身、変な勘違いをしていて、当時介護の現場で働いていたのですが、「介護職にとって腰痛は勲章」と考えてしまっていました。
また、50代になり、肩こりも年齢的なものかなと思っていた部分があったのです。

治療前の骨シンチ画像

がんが見つかってからこれまでの生活の質(QOL)と痛みの関係をグラフにしてまとめましたのでご覧ください。見ていただければわかるように最初から骨転移の痛みがあったため放射線治療を受けました。そこから4年間は痛みが非常に少なく済んでQOLも高く、仕事もバリバリやっていたように思います。しかしその後は骨転移からくる腰部脊椎狭窄症に悩まされ、ブロック治療や内視鏡による除圧術を受け、現在に至っております。

ブロック注射は痛み緩和のために脊髄と脊椎の間に打っていたのですが、それだけでは痛みを緩和できず、2017年の2月に受けたのが腰部脊椎除圧術でした。背中を30センチほど切り、3カ月近くの入院が必要でしたが、痛みがとれず昨年7月に受けたのが腰部脊椎内視鏡術です。この手術では日本の医学の進歩を強く感じました。同じ内容の手術なのに傷跡はとても小さく、入院は2泊3日ですみ、退院翌日には徳島から飛行機で福岡に行き、今回のようにセミナーで話ができたほどです。

その手術の後は、基本的にはがん治療を受けながらもごく普通の生活を送っていますし、それを目標にしてきました。一部身体的に制限する仕事はあるものの介護福祉士として現場復帰もしています。そしてこれが今年4月に撮った最新の骨シンチです。脊椎で少し黒くなっているのは骨転移も含まれますが、手術をした跡が大半です。安心できる部分と安心できない部分両方あるような画像だと私は受け取っていますがまずは改善されているということは言えます。

これまでの治療で受けてよかったものとしては、最初の放射線緩和治療が挙げられます。これによって骨転移の痛みがかなり改善されました。また、骨に製剤を打っている副作用であごの骨がもろくなりやすいため、口腔外科にも4週間に1回通い、泌尿器科や整形外科とも連携を取っていただいています。歯はいつまでも大切にしたいと思っていますし、骨転移がある方は口腔管理も大切にしてほしいと思っています。

これまでに苦しかったことや辛かったことはたくさんありますが、夜眠れない状態が1週間続いたときの痛みは経験しないとわからないと思います。骨転移そのものだけではなく、脊柱管狭窄症や新たな関節炎などにも悩まされました。日によって歩行が困難なこともあり、転倒防止のために杖を使うこともあります。前立腺がんの場合は、がん患者だと言わなければ外見上理解されないという点も苦しかったですね。職場にも理解されず「やめてほしい」と言われたのは辛かったです。

*患者さん個人のご経験をお話しいただきました。すべての患者さんが同様の経過を示すわけではありません。

【Q&Aディスカッション】

パネリスト:賀本 敏行先生 寺田 直樹先生 楠原 和朗先生 川﨑 陽二さん
司会:武内 務さん(NPO法人腺友倶楽部 理事長)

質問:市の検診ではPSAの基準値が4.0より大きいときに要精検となっていたかと思いますが、骨転移経験者の川﨑さんはさきほど、700とおっしゃっていました。単位が違うのではないでしょうか。また、PSAが基準値を超える6であってもがんでないことはあるのでしょうか。

賀本先生:腫瘍がたくさんになってしまうとPSAの値も高くなります。川﨑さんが52歳でがんが見つかり、数値が700だったということは、(本人の前で)申し訳ないのですが、たちの悪いというか厳しいがんがかなり早い段階で出てきてしまったということだと思います。一方でPSAが検診における基準値を超える6とか8であってもがんではないケースもありますが、4以上の場合には泌尿器科の受診は必要です。また、検診を1回受けて4以下だったら大丈夫かといえばそうではありません。ぜひ3年に1回ぐらいは PSA を受けていただきたいと思います。

質問:PSAの上昇変化から前立腺がんかどうか判断できるのでしょうか。

賀本先生:PSAの上がり方でがんの疑いがよく分かります。ぜひ前回のPSAの値を持って泌尿器科を受診してほしいと思います。PSAの絶対値が高ければ高いほどがんの確率は高まりますし、PSAの上昇のスピードが速いほど、がんがある確率が高いというふうに捉えてください。1回測って2だからもう測らないではなく、3年くらいごとに継続して測っていただくことで非常に有用なマーカーになると思います。

質問:前立腺全摘手術を受けると完全にがんが取り除けると思うのですが、それでもがんの可能性はあるのですか。

寺田先生:局所の前立腺がんに対して全摘手術を行うのが原則です。ただそれでも10%から20%の方は手術で切った端にがん細胞が残ってしまう。そういう方が全員再発するかといえばそうではなく、きれいに取り切れたという方でも再発することがあります。再発を一番予測できるのが、病理学的に悪性度を見るグリソンスコアです。例えば4+5であれば断端が陰性であっても40%から50%は再発してきますから、追加治療が必要となってきます。逆に3+3であれば再発率が10%以下となります。もちろん全ての方に当てはまるわけではありませんが、そうした因子によって再発を予測するのが一般的です。

質問:PSA再発から実際の再発(臨床的再発)まで何年かかりますか。

寺田先生:前立腺全摘に関して言うと、術後に0.2を超えるとPSA再発と呼びます。ただPSA再発をしても、放射線治療をすれば約半分ぐらいの方はPSAが下がります。そういう方はその局所に再発はしたものの、追加治療で下がったということです。下がらなかった残りの半分の方にはホルモン治療をしていきます。局所がんの場合はそれにより約5年はコントロールできます。ですからPSA再発をしても、5年くらいは本当の意味で臨床的再発をしないことが多いというのが一般的な話となります。

質問:放射線のあと手術ができないというのはどうでしょうか。

楠原先生:小線源療法は、小さな放射線の線源を日本人の平均的な体形の方で60本から80本埋め込む治療なのですが、前立腺炎を起こすこともあって、それが原因でまたPSAが上がるということも結構あります。そのため数字ではなかなか言えませんし、実際の患者さんをみても1から3を上下することがよくあり、上昇率などで見ていくしかないところもあります。小線源療法はそこにしか放射線をあてないという点では究極の治療なのですが、本来前立腺がんはPSAをきちんと管理することで病気の全体像がわかるものなのに、そのPSAが炎症によって上下することで、そうしたPSAの利点が損なわれるという面はあります。

質問:前立腺手術後、尿漏れが治りません。尿漏れに対する手立てでどんなものがありますでしょうか

寺田先生:前立腺の手術後の尿漏れについては原因が大きく二つあります。一つは手術によって前立腺のすぐ下にある尿道括約筋が損傷を受けてしまうことです。特に尿道括約筋につながる神経をどうしても切らなければならず、それによって締める筋肉が弱ってしまいます。また、膀胱と前立腺はくっついているので、前立腺を取るときに膀胱も一部なくなってしまいます。それによって膀胱にためられるおしっこの量が少なくなってしまうことです。この2つによって尿漏れは起きやすいのですが、当院では3カ月ほどで、ほぼ90%の方は尿漏れがなくなり、10%くらいの方はパットが必要な状態です。膀胱の縮小については、それを広げる薬があり、これが比較的よく効くのでそれで対処しています。また尿道括約筋の弱まりに関しては、人工括約筋というものがあり、陰嚢のところにシリコン製のチューブを巻き付け、その中に水を入れることで尿道を圧迫し、尿漏れを防ぐものです。2012年から保険適用になっています。

質問:運動した方が良いと聞きますが、どれくらいの運動量がいいのでしょうか。

川﨑さん:私は最初に診断を受けたときには、運動をしなければいけないと主治医から言われて、骨転移の手術をするまでは、散歩や犬の散歩とか中心に行なっていた。ただ、手術後は逆に運動制限せよという指示がありましたので、動かせる範囲での運動をしようと努力しているのが現在です。

武内さん:私も前立腺患者で、ホルモン療法をしているのですが、ホルモン療法はちょっと太りやすく感じますし、運動しないと骨が弱くなるというのもあり、体形維持や足腰を頑丈にするために運動の必要性を感じています。私の場合はゆっくりとしたウォーキングよりも、速足で歩くとか軽いジョギングとか少しきつめの運動を心がけています。ホルモン療法を受けている方は家でじっとしてお菓子を食べているのではなく、ちょっとした運動を心がけたほうがいいのではないかと思います。
の中に水を入れることで尿道を圧迫し、尿漏れを防ぐものです。2012年から保険適用になっています。

質問:6年前肺転移と骨転移が見つかりました。その後は何年も画像検査をしていないのですが大丈夫ですか。

楠原先生:検査自体と言う意味でいえば、それはどうなのかなと思いますが、一度小さくなってということであれば、前立腺がんに関していえば、ホルモン治療をして骨転移や肺転移、リンパ節転移などが消えたら、それは転移がなくなり、原発だけの病気になりましたというニュアンスで治療のスタンスを組み立てることはあります。そのときにある程度の期間を見てPSAが上がってこなければいいかな、と主治医の先生が2年とか3年の間隔でしか検査をしなくなるというのはあると思います。PSAは極めて正確なので、それが上がらない限りは大丈夫なのではないかというニュアンスで主治医の先生は見ているのかもしれません。

賀本先生:まれにPSAが上がらなくても転移がひどくなるケースがありますが、95%以上の方は転移に先んじてPSAが動いていますので、PSAの変化があった時に画像検査を入れるというのが基本的な泌尿器科医のやり方です。ただまれに、PSAが上がらなくても病勢が悪くなるケースもありますので、PSAに変化がなくても自覚症状があった時には是非言ってください。そうしていただければその原因が何か調べることができ、必要があれば整形外科に行っていただく、他の科に相談するということができます。ただ基本的にPSAに変化がなければ、画像検査を定期的に行うということはあまりありません。

質問:骨転移がなかったのですが、リンパ節転移があります。リンパ節転移がある場合、どの範囲まで放射線治療が可能で完治が望めるのでしょうか

楠原先生:前立腺がんでは、かつては骨盤全部に放射線を当てることでリンパ節の転移を制御するという方法が行われていたのですが、ホルモン治療が主体になって以降は、そうしたやり方をすることはほとんどなくなり、最近はリンパ節領域への放射線治療は行われなくなっています。転移が出てきて、投薬治療での制御ができなかったときに、そこにだけ、あるいは程度リンパ節領域を治療することはあります。リンパは骨盤の下から上にずっと上がっていくという流れですので、どこのリンパ節が腫れているかということで話は変わってくると思います。今の放射線治療のガイドラインでは、骨転移や転移の局所といった局所治療のスタンスが多いので、リンパ節領域に対して根治を目指して放射線治療を行うことは少ないと考えてください。

武内さん:最後に本日のセミナーの座長である賀本先生に一言お願いいたします。

賀本先生:皆さんお疲れ様でした。質問コーナーでもありましたが PSAは25年前に開発されたマーカーですけれども今も非常に大事な値です。ただ逆にPSAが高くてもがんじゃないケースもありますし、0.1と0.2といった小さな変化で一喜一憂しないでいただきたいというのもあります。このあたりのPSAの扱いについては、泌尿器科医はプロですので、ぜひ何かあったら主治医に聞いてください。

また、患者さんのみなさんのなかには、できれば病気のことは知らない方がいいとか、知りたくないといった気持ちもある方もいるかと思いますが、こういう時代ですので正確な情報の入手を心がけていただきたいと思います。ネットや本などでは怪しげな治療法を紹介していたりします。「藁をもつかむ気持ち」で、そうした情報に飛びついてしまう方もいるようですが、みなさんにはぜひ主治医と円滑な関係を築いていただき、自身で正しい知識を得ながら、病気に向き合っていただきたいと思います。


もっと知ってほしい消化器がんのこと2019 in 島根

※プログラムは変更になる場合があります

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総合司会: 奥村 美香(アナウンサー)

開会挨拶 13:00-13:10(10min)
小阪 真二 (島根県立中央病院 病院長)

講演① 13:10-13:35(30min)
胃がんについて ~内視鏡治療から手術治療の適応について~
宮岡 洋一 (島根県立中央病院 消化器内科 内視鏡科 部長)

講演② 13:35-14:05(30min)
大腸がんについて ~体にやさしい最新治療~
金澤 旭宣 (島根県立中央病院 外科部長)

休憩

講演③ 14:20-14:50(30min)
消化器がんの最新薬物とがんゲノムについて
川上 耕史 (島根県立中央病院 臨床腫瘍科 部長)

講演④ 14:50-15:20(30min)
がんと栄養について ~食べたい気持ちを応援します~
周藤 紀子(島根県立中央病院 栄養管理課 副科長)

休憩

15:35-16:20 (45min)
Q&A・トークセッション ~希望をもって治療を受けるために~

主催団体活動紹介 16:20-16:25(5min)
NPO法人キャンサーネットジャパン

閉会挨拶 16:25-16:30(5min)
金澤 旭宣

【医療者対象】乳がん薬物療法のShared Decision Making セミナー in 名古屋

13:30-13:32 開会挨拶 NPO法人キャンサーネットジャパン

13:32-14:20 挨拶/講演 ① 医療者と患者の考え方のギャップはどこにあるのか、誤解を生まないための説明とは
愛知県がんセンター 副院長 岩田 広治 先生

休 憩 5 min

14:20-14:55 講演 ② 再発乳がん患者のこころの葛藤
名古屋市立大学 医学研究科精神・認知・行動医学分野 教授 明智 龍男

休 憩 10 min

15:05-16:20 グループワーク&発表
座長: 岩田 広治 先生
いくつかのケースを患者の背景(年齢、職業、立場、経済状況、趣味など) 治療歴など考慮してどの治療を選択するかグループごとに話し合う

16:20-16:30 総括
岩田 広治 先生

もっと知ってほしい消化器がんのこと2019 in 佐賀

総合司会: (鳥井智子アナウンサー)

開会挨拶 13:00-13:10(10min)
木村 晋也 先生(佐賀大学医学部医学科内科学講座 教授)

講演① 13:10-13:30(20min)
胃がんの手術について
與田 幸恵 先生(佐賀大学医学部附属病院 一般・消化器外科  助教)

講演② 13:30-13:50(20min)
胃がんの薬物治療について
柏田 知美 先生(佐賀大学医学部附属病院 外来化学療法室 副室長)

休憩

講演③ 14:00-14:20(20min

大腸がんの手術について
田中 聡也 先生(佐賀県医療センター好生館 消化器外科 部長)

講演④ 14:20-14:40(20min)
大腸がんの薬物療法について
廣橋 喜美 先生(高邦会高木病院 副院長)

講演⑤ 14:40-15:00(20min)
がんと栄養・食事
小根森 智子 さん(佐賀県医療センター好生館 栄養管理部 栄養管理長)

休憩

15:10-15:55 (45min)
Q&A・トークセッション ~希望を持って治療を受けるために~

閉会挨拶 15:55-16:00(5min)
NPO法人キャンサーネットジャパン

11月9日(土)かながわ血液がんフォーラム開催!申込受付開始しました!

11月9日(土)に横浜情報文化センター(情文ホール、大・小会議室)にて「かながわ血液がんフォーラム」を開催いたします。

少人数セッションに関しては、事前のお申込みが必要となります。

血液がん患者さん・ご家族・骨髄バンクドナー登録者・献血協力者・医療従事者の他、どなたでもご参加いただける、国内最大級の血液がんフォーラムです。

是非、お越しくださいませ。

もっと話そう前立腺がん転移と治療中の QOLのこと~変わらない日常を続けるために〜in ジャパンキャンサーフォーラム

司会:武内 務(NPO法人腺友倶楽部 理事長)

15:00-15:19 開会挨拶
武内 務

15:10-15:50 講演1「前立腺がん治療アップデート:転移がんの最新治療情報」
佐藤 威文(佐藤威文前立腺グリニック)

休憩 15:50-15:55 (5分)

15:55-16:25 講演2「転移の早期発見・治療のために放射線でできること」
中村 和正(浜松医科大学医学部 放射線腫瘍学講座 教授)

16:25-16:40 講演3「治療と向き合う上で大切なこと ~骨転移を体験して~」
堀内 隆(前立腺がん骨転移経験者)

休憩 16:40-16:45 (5分)

16:45-17:00 Q&Aディスカッション「もっと話そう前立腺がん転移のこと」
パネリスト:佐藤 威文、中村 和正、堀内 隆
司会・進行:武内 務

かながわ血液がんフォーラム

一人ひとりが当事者となり血液がんを考える。
「かながわ血液がんフォーラム2019」をレポート

2019年11月9日、横浜情報文化センター・情文ホールにて、神奈川県と認定NPO法人キャンサーネットジャパン、一般社団法人グループ・ネクサス・ジャパン、はまっこ(多発性骨髄腫患者・家族の交流会)の共催で「かながわ血液がんフォーラム2019」を開催しました。血液がんの患者さん、ご家族に限らず広く一般の人が血液がんを知り、学び、集う場作りを目指し、多数の医療関係者の協力のもと科学的根拠に基づく最新の医療情報を発信。会場には献血協力者、ドナー登録者なども集い、フォーラム参加者は433名、全セッション参加者の延べ人数は合計で739名を数えました。盛況でした多彩なセッションをピックアップしてレポートします。

取材・執筆/北林あい 撮影:AKANE

オープニングトークで言及、造血幹細胞移植の現状と課題

フォーラムの幕開けを飾ったのは、金森平和先生(神奈川県立がんセンター副院長・血液内科部長)によるオープニングトーク。「骨髄移植(造血幹細胞移植)とは」「国内の移植状況」「骨髄・末梢血幹細胞提供の実際」「バンクドナーのコーディネートの現状」「ドナー登録と骨髄提供に関する課題」について語っていただきました。

血液がんの移植治療に不可欠なのがドナーの存在であり、2019年までに、骨髄バンクからの移植数は23,000件以上、臍帯血バンクからの移植数は17,000件以上となっています。金森先生の話で特に印象に残ったのは、コーディネートの現状について。「約22万件をコーディネートしても移植に到達するのは11,000人。移植率は4.9%に留まっています。HLA型の適合通知を受け取ったドナー側の都合でコーディネートが終了になるケースは多く、その場合、一から新たにドナーを探す必要があります。それが移植到達までに時間を要する一因であり、日本の移植医療の現状」と語りました。日本骨髄バンクが行ったドナーコーディネート終了理由の調査(2015年度実績)では、ドナー側の理由による終了が93%、そのうち健康理由以外が66%。具体的には、育児や仕事で都合がつかない場合が43%、連絡が取れない場合が35%。多くのドナー候補者と連絡を取れずコーディネートを諦めざるを得ない状況です。骨髄提供を断ったドナー側からは、強い不安感がある、職場・家族の理解が不十分、年休が取りにくい、休暇制度がないという声が届き、心理面と職場環境面のサポートが急がれます。

骨髄ドナー登録者数の推移を見ると、20代、30代での登録が多く40代が最多。40代の登録者は15年後に提供可能年齢の「55歳以下」を超えるため、「安定して骨髄提供を受けられる社会にするには、若い年代のドナー登録が必須。そして、バンクドナーを支える家族、職場、環境も含めた第二のドナーの理解・協力・支えが不可欠」と訴えました。

「移植医療」の現状を知り、将来を考えるパネルディスカッション

オープニングのパネルディスカッションには、金森平和先生、鬼塚真仁先生(東海大学医学部付属病院 血液腫瘍内科 准教授)、秋山典子さん(横浜市立大学附属病院 中央無菌室 HCTC)、浅野史郎さん(神奈川大学 特別招聘教授)、間島悠介さん(神奈川県骨髄移植を考える会)の5名が参加。それぞれの立場で移植医療に携わる5名が今感じている「課題」を投げかけ、司会の町永俊雄さんと共に議論を深めました。

  • 鬼塚真仁先生「ドラッグラグと検査を阻む保険制度の問題」

鬼塚先生が言及したのは、現場の医師が抱える課題ついて。一つは、海外で投与可能な薬剤が日本で使用できないドラッグラグの問題。もう一つは、同種移植において治療効果の判定を行う重要な検査を保険診療で行えない現状。後者は、実際は行っているものの保険請求できず、患者さんや研究室が高額な検査費用を負担しています。治療の選択に関わる遺伝子変異の測定や治療効果をはかる検査が、保険診療の壁によって行えていないと言います。

前者の課題に対し秋山さんは、「エビデンスが未確立なものを試さないと医療は進歩しません。しかし治験者に負担がかかるのも事実。治験コーディネーターを含め様々な人が参加して医療を進歩させる社会作りが必要」とコメント。鬼塚先生は、「新薬を国内に入れるには製薬会社が治験を行う努力が必要。一方、国内で使用可能な薬剤を適用外の症例に使えるようにするには、医師主導で臨床試験を行い安全性と効果を証明する必要がある」と語りました。

後者の保険制度に関わる課題について金森先生は、「日本でも未承認薬に対する特殊な検査を保険で認め、保険対象外の薬剤を提供する流れになりつつあるが、造血幹細胞移植の分野は遅れている」と説明しました。

  • 秋山典子さん「意思決定支援 ~誰もが治療の当事者になる~」

秋山さんは移植コーディネーターの立場から、移植医療で難しくもあり大切な「意思決定支援」をクローズアップ。「患者さん、ドナー、医療者を含めて移植医療の当事者と捉え、私の役割は治療を意思決定支援という形でサポートすることです。患者さんとそのご家族にどのように説明し、理解を求め、同意を得るかという部分に関わってきました」とコメント。血縁ドナーの場合は選択を迫られる家族に対し、「どのように負担感、責任感をクリアしていくかが課題。ドナー側の葛藤には個別性があり、年齢、ライフサイクル、社会的背景、経済状況など、どんな条件下で治療を選択するかで不安の大きさは異なります。また兄弟間の移植の場合、子どもより親の意思がポイントを占めるため、ドナーになる子どもの状況と様子によっては権利を擁護し、移植ソース変更の相談や提案もコーディネーターの役割と考えています」

金森先生は、「移植はチーム医療でなければ成り立ちません。たえずカンファレンスを行い、意思決定も患者さん一人ではなく周りがサポートとサジェスチョンをしながら行うのがベスト」とコメント。

血縁ドナーに対する医師の関わり方について鬼塚先生は、「医師は病気を治したいので『移植しますよね』というニュアンスでドナーと接してしまいがち。そうならないように、我々は患者さんとドナーの主治医をわけて、ドナーにはリスクまで医学的に説明しています。また、医師が考えるのはどうすれば治るのか、どんな合併症が起こるかという治療に関わることで、家族の不安には応えられないことが多い。ですから、秋山さんのような移植コーディネーターが医師に足りない言葉を埋めて、ご家族、患者さん、医療スタッフの信頼関係を固めてもらっています。移植コーディネーターは移植医療になくてはならない存在です」

血縁者のサポートが望めない単身者への支援に話題が及ぶと、鬼塚先生は「血縁ドナーの選択ができない場合は、骨髄バンクや臍帯血バンクという選択肢があります。ただし移植後、GVHDなどを一人で乗り越えるのは困難。移植後の生活リスクを説明したうえでどのように支援していくかは課題と言えます」

  • 浅野史郎さん「移植を待つ患者の心配事」

2009年、浅野さんは成人T細胞白血病(ATL)を発症し、奥様のサポートもあり骨髄移植を行いました。

「ドナーを待つ患者の心配事は、ドナーが見つかるのか、見つかったとしても提供に至るのかという点です。白血病の中でも治りにくいATLを告知され、医師に骨髄移植しか治る道はないと言われたときは足がガクガクと震えました。移植は60歳までという知識が自分の中にあり、当時の私は61歳。一時は移植を諦めかけましたが、医師から移植可能と言われたときは安心しましたね。移植は無事に終わり当初の心配事は杞憂に終わりましたが、移植後はGVHDで肺炎を発症し大変でした」

移植を行うにあたり合併症や治療の副作用の説明も大切です。鬼塚先生は、「移植後の合併症で約3割の患者さんが亡くなるのが現実。合併症による死亡リスクやGVHDを発症したときの治療を事前に伝え、安心して移植に臨める環境を作っています」とコメント。秋山さんは、「移植についての説明時に移植後の合併症について医師からも説明がありますが、移植コーディネーターからも伝えています。今は治療に関わる『チーム』として、LTFUも含め移植後の生活をどのようにサポートするべきか考えていきたい」と述べました。

  • 間島悠介さん「ドナー登録者を増やす有効な手段を模索中」

2度の骨髄提供を行った間島さんが実感しているのは、「骨髄移植の正しい知識が浸透しておらず、世間の関心が薄い」ということ。「なぜそう思うかというと、骨髄液の採取のため入院する旨を職場の同僚に伝えると、『すごいね、偉いね、痛いんでしょ』という答えが8割。すごいね、偉いねという言葉は、自分と切り離した他人事としての認識の現れだと感じます。自分事として捉えドナー登録する人を増やすには、子どもの頃からの教育が必要では。小学校の道徳の授業で議論してほしいテーマです」

ドナー登録をしても提供に至らないケースについて金森先生の考えは、「例えば20歳でドナー登録した独身者は10年、20年後、結婚して子どもを授かり、職場では重要なポジションに就き、環境の変化からHLA型が適合しても提供を断るケースはあります。大事なのは登録時のモチベーションを保つことであり、骨髄提供を断っても別の方法で骨髄バンクに花を添えることは可能だと思います」。鬼塚先生は、「ドナーになった理由を聞くと、近しい方が血液がんを発症したケースが多いです。しかし、そうした特別なきっかけがないとドナーになろうと思えないようでは登録までのハードルが高い。骨髄バンクやボランティア団体に頑張ってもらい、提供しやすい雰囲気を作ってほしいです。」

最終ディスカッション「血液がんの治療が目指す未来」

  • 鬼塚真仁先生

「かつて我々の目標は、とにかく病気を治すことでした。今は治るのは当たり前で発症前のQOLに戻すことが目標です。患者さんにとってはQOLの回復が大事であり、それは医師だけでは叶わず、リハビリや栄養などに関わる様々なスタッフがいて実現でき、それをまとめていただいているのが移植コーディネーターです。今はチーム医療で移植患者さんを捉える流れになっています。退院後の生活支援や職場復帰がゴールであり、その点は10年前、20年前の移植医療とは大きく異なっています」

  • 秋山典子さん

「血液がんに限らずがん患者さんは他者に病気を知らせることをためらうことも多く、がん患者さんを受け入れて支援していく社会的な環境が、日本は未熟だと感じています。ドナーになることについても社会が普通の事として支援し、企業はドナー休暇を認め、自治体は保証を考慮していく必要があり、患者さんの社会復帰を後押しするために支援の輪を広げていく意識が大事だと感じています」

  • 金森平和先生

「移植医療を受ける患者さんを治し社会復帰させるには、『ドナー』という支援者と患者さんとドナーを支える『社会』という両輪の支援がないと難しい。具体的な枠組み作りが必要だと思いました」

  • 間島悠介さん

「今日、改めてこれから自分に何ができるのか考える機会になりました。私の原点であるドナー登録説明員という役割を通してしっかり情報を伝えていきたいと思います」

  • 浅野史郎さん

「白血病の特異性は、医療者以外に『ドナー』が関わるという点です。そうやって命が救われるシステムの中で自分が病気を克服したと実感できたのはいい経験でした。社会が支え合うことでより良い結果を生み出せるという、わかりやすい例が血液がん。このしくみが日本の社会を変えるのではないかと思っています」

悩みをシェアしつながりを生む「AYA世代の集い」

15歳から39歳の血液がん患者さん同士が語り合う「AYA世代の集い」。AYA世代で血液がんを経験した、増田真彦さん、梅津薫さん、橋本正一さん(造血幹細胞移植患者会「心愛の会」「勇希の会」)がファシリテーターを担当。参加者は3名が悪性リンパ腫の経験者、そして「同世代のがん経験者とつながりたい」と血液がん以外の患者さんも参加しました。

最初の話題は、AYA世代が直面する妊孕性について。「2児の母ですが、診断時に3人目を希望するか医師に聞かれ、『希望していない』と伝え卵子凍結はしていません」「卵子の凍結保存を選択しました。県の制度を利用し、妊孕性温存治療に必要な費用の一部助成を受けましたが、それでも大きな出費でした。現在、抗がん剤治療により閉経中。凍結保存はしたけれど果たして妊娠できるか不安です」と女性参加者。ファシリテーターの橋本さんは男性の立場から、「私は36歳の時、精子の凍結保存を選択しました。現在52歳で独身。でも、保存しておけば子どもを授かる可能性はゼロではなく、自分の選択を前向きに捉えたい」とコメント。精子・卵子の凍結保存をしても必ず妊娠できるわけではなく、まずは病気を治すことが先決という現実もあり、様々な葛藤が伝わってきました。

「今後の不安」に話が及ぶと、真っ先に語られたのは「お金と仕事」。「正社員なので傷病手当金をもらえましたが、もし仕事を辞めたら再発の不安がある人の再就職は難しそう」「私は半年ごとに契約が更新される雇用形態なのでそのたびに不安」といった声が聞かれました。雇用形態など状況は様々ですが、お金と仕事の問題は治療の継続に直結するため常に不安を抱えているようです。

しかし、不安を抱えながらも日々を生きる気持ちは前向きです。「できること、食べられるものを楽しみたい。今はフラダンスが楽しい。趣味がはり合いになっています」「少し先の待ち遠しいことを探すように意識しています」と語り、できないことよりできることに目を向け、「今日」を自分らしく生きようとする姿勢が印象的でした。

今回、みなさんが共通して感じていたのが、「同世代の血液がん患者と出会う機会が少ない」という現状。AYA世代が直面する結婚、出産、仕事などの悩みをシェアし、様々な価値観に触れ、有効な情報を得る場作りの必要性を強く感じました。

ドナーと移植経験者が本音を交えた「血縁ドナーの集い」

「血縁ドナー」とは、兄弟・姉妹・親子など患者さんと血縁関係にあるドナーの事。初開催となるこの集いは、自身も弟さんに骨髄提供をしたCNJ理事の古賀真美氏の発案で実現。司会は大野明美さん(神奈川工科大学看護学部看護学科 講師)、アドバイザーは秋山典子さん(横浜市立大学附属病院 中央無菌室 HCTC)が担当しました。

今回の「血縁ドナーの集い」には、「ドナーの気持ちが知りたい」という思いで、骨髄バンクを通して移植した血液がん患者さんも参加しました。「ご家族と白血球の型であるHLA型が適合したときの気持ちは?」と、移植経験のある患者さんに問いかけた大野さん。血縁者から骨髄提供を受けた参加者は「移植にはリスクがあるので、移植をしていいのか迷った時期がありました」。「私は子供とHLA型がフルマッチで、親子間では珍しいケースだと主治医も驚いていました。子供は『親孝行できる』と喜んでいましたが、周りから『お母さんを助けるために生まれてきたんだね』と言われるたび、有り難いと感じる一方で不憫だとも思った」とコメント。

家族の関係性は様々で、家族が発病しても「私はドナーになりたくない」というケースはあり、第三者の「家族なのだから提供するのが当たり前」という勝手な常識は、患者さんと家族を追い詰めるという意見も聞かれました。秋山さんは移植コーディネーターの立場から、「HLA型が一致してドナーになることに不安を覚えるご家族もいます。なので『よかったですね』ではなく、血縁者間で一致した確率に対して『すごいですね』と言葉を掛けるようにしています。当事者が一番望ましい状況に導けるよう尽力したい」とコメントしました。

また移植経験者は、「『ありがとう』が言いやすいのは移植を受ける側。ドナーは自制心が働き感情に蓋をしがちなのでは」と発言。ドナーの胸中を察するコメントが聞かれたのは、ドナーと患者さんが共に語り合えた成果ではないでしょうか。

秋山さんは、「家族の形や思いは様々です。移植後、元の家族関係を取戻し、それぞれの家族に合った関係性が築けるようドナーが本音を言える場作りをしていきたい」と締めくくりました。

闘病の支えになる情報と勇気を発信する「多発性骨髄腫体験談」

長い治療の様子とその経過、心の支えにしたことなどを語ってくれたのは、2名の多発性骨髄腫サバイバー。司会は建部美由紀さん(多発性骨髄腫患者・家族の交流会「はまっこ」)が担当。オブザーバーに仲里朝周先生(横浜市立市民病院血液内科 診療科長)を迎え、質疑応答では高橋寛行先生(神奈川県立がんセンター血液・腫瘍内科 医長)にも回答をいただきました。

  • 「治療と共に仕事や趣味を楽しんで生きる」 吉田富雄さん

「54歳の時、他の病気で血液検査をしたところ多発性骨髄腫と診断されました。検査のたびにIgG値が上昇し、VAD療法後に自家移植へ。その後、帯状疱疹に悩みましたが治療経過は順調で移植から1年後、NY旅行を楽しみました。しかし4年後に再び数値が上昇し、サリドマイドを使用したところ心臓の数値が上がり、IgG値は下がらず休薬。二度目の自家移植となり入院しましたがバセドー病を発症し移植は延期に。症状が回復したところで自家移植を行い、地固め療法、維持療法へ。ステロイドの副作用で躁鬱、声のかすれなどがありますが、手足のしびれはなく趣味のステンドグラス制作などを楽しんでいます」

「治療中も旅行など好きなことに没頭したのでQOLが上がり、入退院を繰り返しましたが周囲のサポートのおかげで塾経営の仕事を続けられました。そして、多発性骨髄腫患者・家族の交流会「はまっこ」と出会い、同じ病の人と話すことで勇気をもらいました。仕事と趣味に前向きに取り組める今が幸せです。この病気は数値に左右されますが、悲観的にならずしぶとく生きることが大事。副作用の理解を深めるために情報を集めることも大事です。私のようにのんびりした長距離ランナーがいることを知ってもらい、治療しながら粘り強く生きてほしいです。楽しいこともたくさんあります。体の声を聞いて明るく生き、自分らしく様々なことにチャレンジしたいもの。少しでも長くこの病気とつき合っていきたいです。みなさん、一緒にがんばりましょう!」

  • 「今日も『良いこと探し』」 佐藤孝子さん

「人間ドックで異常が見つかり、44歳で多発性骨髄腫と診断されました。確定診断を受けた日に見た満開の桜が違う世界の出来事に思えたことを覚えています。治療はVAD療法を経て2009年に自家移植。2011年には再燃による腰椎圧迫骨折で緊急入院、車椅子生活になり『これからどうなるだろう』と不安になりました。2012年に二度目の自家移植を行い、地固め療法を経て現在は維持療法を継続中です。VAD療法の副作用による末梢神経障害で趣味のフルート演奏に支障が出たため、その後の治療の際には主治医に早めに相談するように心掛け、治療の合間にはウィーン演奏旅行なども楽しんでいます」

「確定診断当初、ネットで情報収集をすると『余命○年』『予後不良』とネガティブな言葉が目に付き、本を開けば『○○でがんが治る』といった言葉が躍り、なかなか必要な情報にたどりつけませんでした。当時はまだ今の形ではありませんでしたが、おすすめしたいのは国立がんセンター・がん情報サービスのサイト及び、そこからダウンロードでき、がん全般の知識が載っている『がんになったら手に取るガイド』などです。また、治療が始まると一人では対応できなくなることが増え、今まで以上にコミュニケーションが大切になります。治療を選択するにあたり、主治医には自分が大事にしたいことを伝え、職場では病気の事を『誰にどこまで伝えるか』に悩みました。上司及び同じチームの同僚には、できること、できないこと、配慮してほしいことを詳しく伝え、その他のスタッフには『ウィッグがずれていたら教えて(笑)』などと深刻にならずユーモアを交えた伝え方を意識しました」

「他には、がん情報サービスのサイトからダウンロードできる『わたしの療養手帳』などを活用し、『どんな副作用が、どの程度あり、どのくらいで回復したか』など治療の記録をつけ、主治医に伝えると共に、次の治療時の参考にしました。職場では業務の内容を共有できるよう心掛け、家族や同僚に言いづらいことは、患者仲間や職場のカウンセラーに相談し力をいただきました。今も心掛けているのは、やりたいことや大事なことを最優先に。そしてたくさんの人に感謝し、できることをありがたく楽しみたいと思っています」

体験談の後は、参加者から募った質問に仲里先生と高橋先生が丁寧に回答。「現在の治療を続けるべきか」「多発性骨髄腫の治療に力を入れている病院を知りたい」「次世代の治療とは」「同種移植での臍帯血移植の有効性とリスク」など、治療に関わる具体的な質問が目立ちました。

闘病に有効な情報とつながりを提供する「展示ブース」も盛況

展示スペースには企業・団体などのブースが並びました。企業ブースは、医療用無菌装置メーカーの株式会社コスモアンドトレードサービス、ヘルスケア分野の市場調査などを行う株式会社インテージヘルスケアが出展。他に、神奈川県赤十字血液センターは献血啓発に力を入れ、献血者へ届ける輸血経験者の感謝のメッセージを募集。当フォーラムを共催する神奈川県は、がん検診の啓発、骨髄ドナー支援事業、妊孕性温存治療費の助成制度など、県の取り組みをPR。また、血液がんの患者会が複数出展し、患者さんとそのご家族の情報収集や患者同士の交流をサポートしました。

閉会式では血液がんの「総合的支援」の必要性を再確認

すべてのプログラムを締めくくるクロージングでは、司会の町永俊雄さんがこのフォーラムの運営について言及しました。「造血幹細胞移植を総合的に支援するプロジェクトStart to Beは、血液がん患者とその家族、ドナー、サポーター、ボランティア、医療者を含め移植医療に関わる『当事者』を巻き込みながら進めていく新しい取り組みです。これまでは医療者は医療者側から、ドナーはドナー側から発信し関係が分断されていました。その状況を統合し総合的な支援を実現したのは大きな変化と言えます」とコメントしました。

続いて3名が登壇。濱卓至さん(神奈川県健康医療局 保健医療部 がん・疾病対策課 課長)は、血液がんに関する県の取り組みを紹介。「昨年度、神奈川県はCNJと協働して、骨髄バンクのドナー登録者と血液疾患がん患者およびその家族を支援するWEBサイトStart to Beを開設しました。他に神奈川県骨髄移植を考える会と共に大学などで骨髄ドナー登録会を実施、骨髄ドナー登録説明員の養成講座の開催、骨髄バンク普及啓発事業などの取り組みにより県内のドナー登録者は増加傾向にあります。県における新しい事業としと、ドナー登録をしても提供に至らないケースを踏まえ、ドナーの心理的、経済的負担を軽減するため、ドナーとドナーご本人が勤務する事業所に助成を行う骨髄ドナー支援事業を開始。最終的には県内の全市町村での実施を目指しています。さらに、平成30年の8月より妊孕性温存治療費の補助に取り組んでいます」

次に、天野慎介さん(一般社団法人グループ・ネクサス・ジャパン理事長)が、骨髄バンクの維持・発展について熱弁。「1991年、たくさんの血液がん患者の声により骨髄バンク事業を主体とする骨髄移植推進財団が設立。当時、厚生労働省に要望に行った際、『まったく健康な人の体を傷つける治療を国民が許すのか』と言われました。骨髄バンクの維持・発展を考えるにあたり、その存在が当たり前ではなく、困難な道のうえに成り立っていることを想起する必要がある」と述べました。

最後は金森平和先生。「Start to BeのWEBサイトは血液がん患者、ドナー、患者家族にとって有用な情報が総合的に掲載されています。また、本日のように複数の患者会が総合的に運営に携わるフォーラムは初体験。骨髄移植の課題が患者、ドナー、家族だけの議論で終わらないよう総合的に支える社会を作っていくべき」と結びました。

司会の町永さんは、「一人ひとりができることを持ち寄り、自分事として一歩を進めてほしい」とコメントし盛大な拍手と共に閉会しました。

今回の「かながわ血液がんフォーラム2019」は共催団体のスタッフ13名、ボランティアスタッフ25名の総勢38名の協力のもと無事に開催することができました。また、ご登壇いただいた先生方は28名でした。多くの方々の支えにより開催できましたことをこの場を借りてお礼申し上げます。

神奈川県立こども医療センター もっと知ってほしい小児がんのこと(子ども向けイベント)

夏休み中の2019年8月10日(土)、神奈川県立こども医療センターと認定NPO法人キャンサーネットジャパンの共催により、小児がんをテーマにした子ども向け無料講座を開催しました。小児がんは、14歳までにかかるがんの総称です。小児がんで最も多い病気は白血病で全体の40%ほどを占めますが、中でも急性リンパ性白血病が最も多い病気です。今回集まった小学4年生から高校生まで43名の子どもたちと共に、同世代が闘っている小児がんを学び、自分たちにできることを考える機会を創出。先生方の惜しみない協力により実現した、夏休みの自由研究にもぴったりな多彩なプログラムの内容をレポートします。

取材・執筆/北林あい 撮影/小北一兵

小児がんを知ってもらうため基礎知識をレクチャー

最初のプログラムは、神奈川県立こども医療センター副院長で血液・腫瘍科部長の後藤裕明先生による、『“小児がん”ってどんな病気?』と題した授業。小児がんとは何か、なぜがんはできるのか、どんな治療法があるかなどをわかりやすくレクチャーしていただきました。冒頭で先生が、「子どもにもがんができると知っている人?」と質問すると、約半数が「知っている」と手を挙げていました。

「子どもにとってがんは、すごく希な病気です。日本全国で一年に2,000人くらい、神奈川県で100人くらいの子どもががんと診断されます。がんにはちゃんと治療法があり、小児がんは大人のがんより治りやすいのが特徴です。でも、すべてのがんが治るわけではなく、中には命を落とす人が大人にも、子どもにもいます」と後藤先生。小児がんの治療は手術、放射線療法、化学療法が有効で、特に重要な抗がん剤を用いた化学療法は副作用が治療後も続くことがあります。また、従来の放射線療法より強力で副作用が少ない陽子線治療や重粒子線治療、がん細胞だけをターゲットにした治療薬など、希望となる新たな治療法についてもご紹介いただきました。

先生は、「自分の身近に小児がんにかかった子どもがいたら、どうやって応援すればいいと思いますか。今日一日を通して考えてください」と投げかけました。

開会の挨拶をする神奈川県立こども医療センター総長の町田治郎先生。スイカキャップで登場し子どもたちを和ませてくれました。

後藤裕明先生の話に耳を傾け小児がんを学ぶ子どもたち。

 

子どもたちに命の重さを伝える小児がん体験談

続いて登壇したのは、小児がんサバイバーの小川名優貴さん。小児がんに罹患し小学6年生から中学2年生までを過ごした同センターでの入院生活を振り返っていただきました。小川名さんの場合、初期症状は首のしこり、倦怠感、発熱だったといいます。サッカー少年だった小川名さんは、試合中も疲れやすくなり次第に学校を休みがちに。病院で検査を受けた結果、血液がんと判明。「治療は辛い、きつい、苦しい、気持ち悪い!それしか覚えていません!」。でもそれ以上に辛かったのは、入院中に出会った友人との永遠の別れだったと言います。

「親友だった男の子がいて、ある日病室に遊びに行ったらすごく不機嫌でした。僕は相手をするのが面倒になり、その日から病室に行かなくなったんです。しばらくして看護師さんに病室に行ってあげてと言われ訪ねてみると、彼のお母さんは泣き崩れ、親友の彼はもう亡くなっていました。後悔しましたね。あの日、なぜもっと言葉をかけて寄り添えなかったのかって。その後、別の友人も亡くなりました。今、その子たちの分まで生きたいと強く思っています」

辛い闘病を乗り越え命の重さを伝える小川名優貴さん。一言一言が熱く、重く心に響きます。

小川名さんは現在24歳。当時の闘病体験が自身に与えた影響について、「僕の場合、がんになって楽しい生活や夢が一旦すべて崩れてしまい、いいことなど何もありませんでした。でも、小児がんになったから子どもたちに命の大切さを伝えたくて小学校の教師になりました。そして、がんになったおかげで強い自分を手に入れました。生きたくても生きられない人はたくさんいます。だから、今自分が生きていることに感謝し、亡くなった人たちの分まで命を燃やしたい。生きていることだけで、僕は恵まれていると思うから」

小川名さんの軽妙でエネルギッシュな語り口に引き込まれ、じっと聞き入ったり、熱心にメモを取ったりする子のどもたちの姿も。目頭を熱くする保護者も見受けられました。

今できることを始める一歩に。レモネードスタンド体験

今回は、小児がん支援のための募金活動として、レモネードスタンド体験を実施。まず、レモネードスタンドの歴史を動画で振り返ります。その原点はアメリカ。自身の小児がん罹患を機に同病の子どもたちを救いたいと4歳の少女アレックスが自宅の庭でレモネードを売り、その売り上げを病院に寄付したのがレモネードスタンドの始まりです。自分が辛い状況でどうして他の人を助けようと思うのか。その質問に、「人生が酸っぱいレモンを与えたときは、甘いレモネードを作ればいい」と答えたアレックス。2004年8月、アレックスは他界しましたが、活動の輪は全米そして日本にも広がっています。子どもたちは、レモネードスタンドのバックグラウンドを知ったことで活動の意義を理解し、この体験に意欲を見せていました。

レモネード作りは6グルーブにわかれて行い、レモン原液、砂糖、水を混ぜるシンプルな作業なので小学生でも簡単。完成したら募金箱を持って家族やスタッフにレモネードを配り、代わりに模擬通貨を受け取り実際の活動の様子を体験。その後、各グループの代表者が感想を発表しました。「他校の友人がレモネードスタンドをやっていて、当時は活動の目的を知らずに飲んでいました。今日レモネードスタンドの始まりとやり方を知り、高校生の自分にできることを考えるきっかけになりました」。「小児がんは治って終わりではなく、その後の発達にも影響するので継続的な支援が必要。自分には病気を治すことはできないけれど、レモネードスタンドのボランティアに参加して、できることを行動に移していきたいです」等々、子ども心に支援の必要性を感じ立ったようで、ますます活動の輪が広がる可能性を感じました。

グループで協力して初めてのレモネード作りにトライ。みんなおいしくできました。

緊張しながら募金箱を持ってレモネードを配りました。レモネードスタンドは学校の文化祭、企業、地域のお祭りなどで開催されています。

小児がん、AYA世代のがん啓発・研究推進プロジェクト「レモネードスタンド」はNPO法人キャンサーネットジャパンで実施しております。詳細については、こちらをご覧ください。

気分はドクター!? 本物の医療器具を使って検査・手術を模擬体験

午後は先生方の指導のもと検査や手術を模擬体験。その準備知識として、同センター外科医長・小児がんセンター長の北河徳彦先生が、『“小児がん”はこうやって見つける!治す!』をテーマにレクチャーを行いました。小児がんを見つけるための検査は、「まずエコー検査を行い、さらに詳しい検査としてCTなどのレントゲンで体の中を映し出しがんのある場所を特定。次に、血液腫瘍内科でお腹を切りがんと疑われる細胞を取り出し、病理検査科の先生がその細胞を顕微鏡で見て病気が確定します」という、治療に至る検査の流れを紹介していただきました。

北河徳彦先生は、小児がんの検査映像を見ながら検査方法などを解説。

いよいよ、子どもたちが楽しみにしていた模擬体験へ。今回の体験は、(1)がんの細胞を顕微鏡で見てみよう(2)エコー検査を体験してみよう(3)模擬手術を体験しよう(4)内視鏡をのぞいてみようの4種類です。

(1)がんの細胞を顕微鏡で見てみよう

病理検査科の先生にご協力いただき、顕微鏡をのぞきながら様々ながんの細胞を観察し、がんの種類ごとに細胞の特徴を説明。「顕微鏡を両目で見るのが難しい!」という声も聞かれました。

先生の説明を受けながら初めて見るがん細胞に興味津々。

(2)エコー検査を体験してみよう

2人1組になり、検査を受ける人はベッドに腹部を出して横になり、検査を行う人はゼリーをつけたプローブをお腹に当て、モニターに映る心臓、肝臓、腎臓の様子を観察。「自分の心臓の動きをチェックして!心臓が動くことで全身に血液が送られるんだよ」という先生の説明に興味深く耳を傾けていました。

自分の臓器が動く様子を観察する新鮮体験。プローブの扱いは想像以上にスムーズでした。

(3)模擬手術を体験しよう

子どもたちは手術着に着替え、手術の傷口を縫い合わせる「縫合」を体験。針とピンセットを使い縫合する糸の結び方を教わる子どもたちの表情は真剣そのもの。さらに腹腔鏡手術の模擬体験では、モニターを見ながら内視鏡を操り、先端についたはさみでビーズをつかみ棒に刺していく作業にトライしました。

ガウン、帽子、手袋、マスクを着けて手術の準備は万端!?

器用にピンセットを操り、初めての「縫合」をクリア。「上手だね!」と先生からお墨付きが。

腹腔鏡を使いこなすのは至難の業。日々手術を行うドクターに尊敬のまなざしが向けられました。

(4)内視鏡をのぞいてみよう

用意されたのはお腹の中を模した箱。この箱の中には大腸のような細いトンネルがあり、上下左右に方向を変えるアングルノブを左手で操作し、右手でレンズがついた内視鏡の先を持ちモニターを見ながらトンネルの中に挿入、箱の中にあるシールを探します。

本物の内視鏡を扱える貴重な機会、曲がりくねったトンネルの中に内視鏡を挿入するのに悪戦苦闘。

すべてのプログラムを終えた子どもたちは、座学と体験を通して楽しく、正しく小児がんと向き合い、今できることを前向きに考える時間を過ごせたようです。笑顔で記念写真を撮り、全員に「参加証明書」が発行されました。

子どもたちと先生方、スタッフも交えて記念撮影。

支援の輪を広げるには、まず小児がんに興味を持ち病気を理解することが第一歩。本講座でそれぞれが感じたこと、できることを持ち帰り、学校、家庭、地域でレモネードスタンドなどの活動を広げてくれることを期待したいです。支援のバトンを手に会場を後にする子どもたちの背中が頼もしく見えました。

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イベントタイトル:神奈川県立こども医療センター 夏休み公開講座 もっと知ってほしい小児がんのこと~“小児がん”ってどんな病気?小児がん治療・支援を体験しよう!~

開催日時:2019年8月10日(土) 10:00-15:00
会場:神奈川県立こども医療センター 本館 2F 講堂
共催:神奈川県立こども医療センター / 認定NPO法人キャンサーネットジャパン
協賛:メディデータ・ソリューションズ株式会社
協力:メドライン・ジャパン合同会社
後援:神奈川県 / 横浜市医療局 / 若年性がん患者団体STAND UP!!
参加者:43名(小学生24名、中学生12名、高校生7名)
見学者:40名

【プログラム】
10:00-10:05 開会挨拶
町田 治郎 先生 神奈川県立こども医療センター 総長

10:05-10:35 授業 “小児がん”ってどんな病気?
後藤 裕明 先生 神奈川県立こども医療センター 副院長/血液・腫瘍科 部長

10:35-10:45 体験談 僕・私の“小児がん”

10:45-11:00 休憩 

11:00-11:50  レモネードスタンド体験
小児がん支援のレモネードスタンドを開催してみよう!
レモネードの作り方・スタンドの開催方法

11:50-12:05 授業 “小児がん”はこうやって見つける!治す!
北河 徳彦 先生 神奈川県立こども医療センター 外科部長/小児がんセンター長

12:05-13:15 休憩

13:15-15:00 技術体験
先生の指導で検査や手術を体験してみよう!
①がんの細胞を顕微鏡で見てみよう ②エコー検査を体験してみよう
③模擬手術を体験しよう ④内視鏡をのぞいてみよう