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前立腺がんの手術法

Q.どのような手術が行われますか

A. 前立腺を周囲の臓器ごと、すべて摘出するのが基本です。
開腹手術のほかに腹腔鏡手術があり、手術ロボットを利用するロボット支援腹腔鏡手術も保険適用になりました。


●合併症のない限局性がんに最適

 手術は前立腺がんの治療法としてよく行われていますが、ほかの多くのがんと違って部分切除という選択肢はなく、基本的にすべて前立腺全摘除術になります。最も大きな理由は前立腺がんは臓器内に多発する性質があり、全摘しなければ微小ながん細胞を取り残す可能性が高いことです。ほかに、小さな臓器で部分切除は困難であることや、全摘が生命に関わらないことも、理由として挙げられるでしょう。前立腺を精嚢や精管などの周囲ごとそっくり摘出するほか、一般にリンパ節郭清も行います。前立腺摘出後に、排尿路を確保するために膀胱と尿道をつなぎ直します(図表8)。
 根治を目的とするため、がんが前立腺のなかにとどまっている限局性前立腺がん、または局所進行性のT1c~T3(TNM分類)の前立腺がんが主な対象となります。
 被膜を越えて周囲に浸潤している場合も、リンパ節転移や遠隔転移がなければ手術を行うことがあります。その場合は病期や患者さんの意思により、放射線療法や薬物療法が併用されます。

前立腺全摘除術

●全摘除術の術式は合併症が少ない方法へ

 現在広く行われている手術は、恥骨後式前立腺全摘除術です。この恥骨後式前立腺全摘術の方法としては、開腹手術、腹腔鏡手術、手術支援ロボット(da Vinci®:ダヴィンチ)を用いる腹腔鏡手術があります(図表9)。
 開腹手術ではおへその下の皮膚を切開してお腹側から前立腺に到達します。腹腔鏡手術、手術支援ロボットを用いる腹腔鏡手術では、腹部に5~6か所の穴を開け、内視鏡や鉗子を挿入して手術を行います。
 開腹手術では視野が広くてリンパ節郭清も容易ですが、前立腺が深い位置にあるため切開創が大きくなり、患者は出血や術後の痛みに悩まされることがあります。しかし、腹腔鏡手術は画像を通して広い視野が得られ、傷が小さく出血も少ない低侵襲治療法であり、現在、主流となっています。

前立腺全摘除術の手術法の特徴

●手術支援ロボットの普及

 なかでも最近世界的に普及しているのが手術支援ロボットを用いる腹腔鏡手術です。近年、米国の前立腺がん手術の95%以上が手術支援ロボットを使用しており、日本でも2012年に前立腺全摘除術に保険が適用されて以降、全国で約250台のロボットが導入され、手術に使われています。
 手術支援ロボットを用いる腹腔鏡手術では、腹部に開けた5~6か所の穴からカメラのほかに鉗子を取り付けたロボット・アームを挿入し、操作ボックスに入った医師がロボット・アームを操作します。内視鏡画面は三次元で、従来の腹腔鏡画面(二次元)よりもリアルに精密に患部を観察できます。また、医師が直接長い鉗子を操作するよりも、手術器具の動きがスムーズです。その結果、より安全で精度の高い手術が可能になりました。
 前立腺全摘除術は尿失禁、勃起不全などの合併症を伴う可能性がありますが、手術支援ロボットの利用で、これらの合併症を低減できるようになっています(精液をつくる臓器を摘出し、精管も切断するので射精は不可能ですが、勃起神経の温存により、射精感は残ることがあります)。

今後が期待される局所治療

 がんが前立腺に限局していて、さらに再発のリスクが低いケースでは、局所治療(部分治療、フォーカル・セラピー)が行われることがあります。
 これはできる限り正常な組織を温存して、がんを治療することを目標としており、経過を見守る監視療法と前立腺全摘除術や放射線療法のような根治を目指す治療との中間的な治療です。
 この局所治療には、高密度焦点超音波療法(HIFU)、凍結療法、放射線の組織内照射(密封小線源治療)などが含まれます。
 高密度焦点超音波療法は、体内で焦点を定めて高密度に超音波を照射することで、がん細胞を熱と衝撃で破壊する方法です。
 凍結療法では、がんの部分に特殊な針を刺し、アルゴンガスを注入してがん細胞を凍結させます。その凍結が解けたときにまた凍結を行い、がん細胞をだんだん壊死させます。
 いずれも臨床試験や自由診療で実施されており、健康保険の適用にはなっていません。放射線の組織内照射は保険適用されます。
 現在のところ、高密度焦点超音波療法や凍結療法は症例数が少なく、その効果や副作用に関してのデータがまだ蓄積されておらず、局所治療を適応するTNM分類やグリーソン・スコア、PSA値についてはまだ定まっていません。そのため、がん自体は低リスクではあるものの、医学的な理由で前立腺全摘除術や放射線の外照射ができない場合、患者さんが排尿機能や性機能などを損ないたくないと強く希望していて前立腺全摘除術や放射線の外照射を行いたくないと考えている場合などの限られたケースが対象です。
 局所治療の選択にあたっては、患者さんや家族が医師とよく話し合って、共同意思決定(シェアード・ディシジョン・メイキング)することが重要です。

参考資料

もっと知ってほしい前立腺がんのこと 2018年版,pp.11-12

公開日:2022年1月21日 最終更新日:2022年1月21日

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