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前立腺がんの再発・転移

Q.再発や転移とはどのような状態ですか。また、どのような治療が行われますか

A.治療後に残った小さながん細胞が再び増殖し始めるのが再発、がん細胞が他の組織に移動して、そこで腫瘍を形成するのが転移です。
再発や転移は主に薬物療法によって治療します。


 根治目的で手術しても目に見えない微細ながん細胞が残り、それが再び増殖し始めた状態が「再発」です。放射線療法で消滅させたはずのがん細胞がしぶとく生き残り、増殖し始めるのも「再発」です。がんが同じ臓器(前立腺がんの場合、摘出した部位やその周辺)ではなく、離れた組織や臓器に「転移」した状態で見つかることもあります。

●PSA値の上昇で再発を見つける

 初発時の治療のフォローアップとして、また再発や転移を早期発見するために、図表12のような検査が必要に応じて行われます。
 なかでも重要視されるのがPSA値です。再発の兆候はまずPSA値の上昇として現れるからです(PSA再発=生化学的再発)。手術後から2〜4週間ごとにPSA値を測定し、術後1か月以上経って0.2ng/mlを上回った場合、またはその後の測定で2回連続して0.2ng/mlを上回った場合には再発とみなされます。放射線療法で根治治療を行った場合は、照射後にPSA値が2ng/ml以上上がった場合に再発を疑います。ただし、放射線療法後は一時的にPSA値が上昇することが知られており、何回かの測定が行われます。内分泌療法後の再発の目安は最低値から2ng/ml以上上昇した場合です。
 直腸診やMRI検査、CT検査で腫瘍が確認された場合(臨床的再発)には再発したがんがかなり進行していると考えられます。

●再発時には主に薬物療法が行われる

 再発時の治療方法は、根治治療前のがんの悪性度や病期、PSA値の上昇速度などに応じて検討されます。患者さんの年齢や状態によっては当面、経過を観察する場合もあります。
 手術後に生化学的再発や局所的に臨床的再発がみられる場合は、放射線療法が行われます(救済放射線療法)。また、救済放射線療法の効果が期待しにくい場合や救済放射線療法後もPSA値が下がらない場合には、内分泌療法、あるいは内分泌療法とタキサン系の抗がん剤との併用が行われることもあります。
 放射線療法後に同じく生化学的再発あるいは局所的に臨床的再発がみられる場合は、内分泌療法あるいは内分泌療法とタキサン系の抗がん剤との併用療法、前立腺全摘除術、凍結療法(コラム「今後が期待される局所治療」)、放射線の組織内照射、高密度焦点式超音波療法(HIFU)、経過観察などの選択肢があります。
 内分泌療法で治療していて生化学的再発や臨床的再発がみられる場合(再燃)には、薬の変更、特にAR標的薬への変更、またはタキサン系の抗がん剤の単剤使用、あるいはタキサン系抗がん剤と内分泌療法薬との併用が行われます。

再発や転移について調べるために行われる検査

●骨転移に薬物療法やラジウム照射で対応

 がん細胞が発生した場所から離れ、リンパ管や血管を経て、リンパ節やほかの臓器で増殖して腫瘤を形成した転移の場合、残念ながら根治は不可能と考えたほうがよいでしょう。内分泌療法や化学療法でできるだけがんの増殖を抑え、生活の質(QOL)を維持しながら延命を図るのが一般的な治療方法です。
 前立腺がんは骨盤、下部腰椎、大腿骨など骨に転移しやすく、腰や脚の痛みのために受診し、初めて前立腺がんだとわかるケースも少なくありません。骨転移には、ビスホスホネート系の注射薬(破骨細胞の働きを抑制する)や抗RANKLモノクローナル抗体薬(破骨細胞の形成を抑制する)が使われます。
 2016年には塩化ラジウム223(223Ra)が骨転移のある去勢抵抗性前立腺がんに保険適用され、骨にのみ転移がみられるケースに使われています。ラジウムには、がんの骨転移がある部位のように骨代謝が進んでいる部分に集積する性質があり、また、高エネルギーのα線を放出するため、これを注射で投与して骨転移している部分に集積させて、がん細胞をたたくのです。副作用としては、吐き気や貧血、下痢、骨の痛み、疲労などが挙げられます。
 また、痛みの緩和には鎮痛薬、ステロイドなどの薬物が用いられるほか、放射線の外照射が痛みの緩和や骨折の予防に有効です。
 ほかには、リンパ節、肺、肝臓などへの転移もあります。
 リンパ節や肝臓への転移には自覚症状がほとんどありません。一方、肺への転移は咳や痰が出たり、息苦しさを感じたりすることがあります。これらの転移が見つかった場合には、やはり主に内分泌療法を中心にして、がんそのものに対応するほか、咳や痰を抑える薬、呼吸を楽にするための少量の麻薬などを使います。肺に水がたまった場合には水を抜くこともあります。
 再発したがんや転移のあるがんでは、根治しなくても、がんと共存していくことは可能です。担当医や薬剤師、看護師などとよく話し合って、がんと付き合っていきましょう。

参考資料

もっと知ってほしい前立腺がんのこと 2018年版,pp.17-18

公開日:2022年1月21日 最終更新日:2022年1月21日

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