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小児脳腫瘍の治療とフォローアップについて

手術のこと

 小児脳腫瘍の治療は、第一に手術で腫瘍を取り除くことが挙げられます。腫瘍の大きさやできている場所などによって、生活に支障をきたす障害や晩期合併症が生じることも考えられるため、脳機能への影響を視野に入れて、手術を行います。手術前に抗がん剤などによる薬物療法を行って、腫瘍を小さくしてから手術を行ったり、再発・転移のリスクを減らすために手術後に化学療法(薬物療法)や放射線治療を行ったりすることもあります。
 これらの治療も行いながら、手術は一回だけでなく、複数回に分けて行うこともあります。近年では、できるだけ脳神経機能を損なわずに、可能な限り腫瘍を摘出できるように、術中迅速病理診断や神経ナビゲーション(腫瘍や周りの大切な脳組織の位置を正確に知る)、術中神経生理学的手技(脳機能の保存を図るために、神経機能をリアルタイムでモニターする)が用いられます。
 小児脳腫瘍の診断・治療に適した医療機器が設備されており、経験豊富な医師がいる病院で手術を受けることがより望ましいでしょう。

化学療法(薬物療法)/放射線治療のこと

 小児脳腫瘍では、病理診断によって脳腫瘍の種類や悪性度などが診断され、化学療法(薬物療法)や放射線治療が選択されます。手術で肉眼的全摘出ができたとしても、化学療法や放射線治療が行われることが少なくありません。化学療法を行う場合、小児脳腫瘍に詳しい小児がんの専門医や抗がん剤に精通した薬剤師、看護師が連携し、副作用にも配慮します。放射線治療を行う場合は、年齢に伴うその後の発育や発達も視野に入れて、合併症や後遺症などを考慮しながら、放射線量を検討します。生活をする上で大切な機能が詰まった脳神経に対しては、より精度の高い放射線照射が必要であるため、十分な医療機器の揃った、経験豊富な専門医がいる病院を選択することもポイントでしょう。また、乳幼児に対する放射線治療の影響は大きく、放射線治療を回避・軽減するために、自家造血幹細胞移植を伴う大量化学療法を選択することもあります。

治療後のフォローアップ

 病気や治療の影響で、その後の人生にも関わる合併症や後遺症、障害が生じるリスクのある小児脳腫瘍において、治療後のフォローアップはとても重要です。再発のチェックだけでなく、晩期合併症や障害が生じていないかのスクリーニング、学校や社会生活への復帰支援を行うにあたっては、小児腫瘍科や脳神経外科だけでなく、内分泌科、眼科といった診療科、リハビリテーション科、精神科などさまざまな診療科・職種との協力、連携が欠かせません。

Specialist Interview
作業療法士(OT)Occupational Therapist

遊びや学びを通じて、発達段階に合わせたリハビリテーション

 お子さん本人と家族の希望を細かく聴き取りながら、やりたいこと、やりたくてもできないことをキャッチし、短いゴールを立てて積み重ねることを大切にしています。機能回復を目指すことは大前提ですが、時にそれが実現できないこともあります。その時にもさまざまな手段でアプローチできるのが作業療法です。たとえば、あるお子さんが、遊園地に行きたいという希望を伝えてくれたとします。そのお子さんは、病気が原因で歩けなくなっています。もちろん、歩けるようになればその願いは一瞬で叶いますが、歩けなかったとしても、そのお子さんが遊園地で楽しむ方法はいくらでもあるはずです。作業療法では、生活の中の、さらに奥深くにある人生の本当の願いを引き出して、いろんな方法で実現する方法を探っていきます。
 また、どうしても機能の低下が避けられないことがありうる小児脳腫瘍では、目標も柔軟にチェンジしていく必要があります。それは決して目標を下げるということではなく、視点を変えていくということです。「子どもだから治療が終わればリハビリなんてやらなくても勝手によくなるでしょう」「治療で大変なのに、この上リハビリまで」という気持ちはとても理解できます。しかし、頑張った療養生活後に、子どもたちがさらなる苦痛を味わうことを避けるためにも、予防的リハビリテーション、早期リハビリテーションは大切だと考えています。その方法はさまざまですが、なるべく心身への負担のない、子どもが主体的に取り組める課題を選択できるのも作業療法の特徴です。ご家族に実際のリハビリ場面を見てもらうと、お子さんたちの楽しそうな様子に「もっと入ってもらえませんか?」と言われることもよくあるんですよ(笑)。
 さらに、リハビリテーションは他職種との共同が不可欠です。機能が低下したお子さんは、「こんなふうになったのは頑張らない自分のせいだ」「あの時こうしたからだ」などと自分を責めてしまうことがあります。そんな時は、医師や看護師、CLSらと共同して、「なぜ今こうなっているのか」「こんなふうにすると上手にできるよ」などの話を、その都度伝えていくことで、安心して過ごせるようになることがほとんどです。
 とりわけ、さまざまな身体機能が変化しやすい小児脳腫瘍。その医療チームの中にリハビリ職種がいてほしい、願わくば、早期から切れ目なく関わることができたらよいなと思います。一般的に体調悪化によるリハビリの中止はよくあることですが、リハビリ職はどの時期においても何かができる職種だと思っています。もうリハビリはやってもらえない、やれないと一般的に思われているタイミングでも、リハビリ職は、リラクゼーションやポジショニング(快適で安全な姿勢の保持)、遊びやコミュニケーション実現へのアプローチ、呼吸リハ(呼吸の改善によるQOL向上を目指すリハビリ)など、意外と多くの引き出しを持っているのです。どのような状況でも、お子さんが快適に暮らせるよう、ぜひリハビリ職を活用してもらえたらと思います。まずは主治医に相談してみてくださいね。
(作業療法士 深澤 聡子)

参考資料

もっと知ってほしい小児脳腫瘍のこと 2020年版,pp.13-14

公開日:2022年1月25日 最終更新日:2022年1月25日

BOOKLET小児脳腫瘍の治療とフォローアップについてに関する冊子