小児がんについて 症状/診断/治療
どのような診断/治療を受ける?
小児がんでは、小児がん拠点病院などの専門医療機関で、専門医による適切な診断が行われることがとても重要です。また、JCCG(日本小児がん研究グループ)による小児がんの中央診断も大切です。
小児がんの治療法として、血液がんでは主に 抗がん剤治療、必要に応じて造血幹細胞移植、固形がんでは、抗がん剤治療・手術・放射線治療の3大治療が行われます。再発・難治性のがんには、近年、第4の治療法としてがん免疫療法が注目されています。
研究が進んできたことで、たとえば同じ病名であったとしても、「この検査で陽性の場合は治療経過がよい/悪い」といった情報も得られるようになってきました。そこで、標準的な治療をベースに、患児一人ひとりの検査結果や治療経過に応じて、柔軟に治療の強度を変えるこ とも大切だと考えられています。また、希少がんで個別性が高く、さらに成長段階にある子ど もに対し副作用が少なく治療効果の高い治療が求められる小児がんでは、臨床試験への積極的な参加が推奨されているのも特徴です。臨床試験は、患児によりよい治療法を提供するために新しい治療に対する有効性や安全性を確認することと、標準治療の開発を目的に行われます。
小児がんの中央診断
希少疾患で個別性の高い小児がんでは、よりよい治療法開発のために、JCCG(日本小児がん研究グループ)による臨床試験が重要な役割を担っています。中央診断は、正確な診断に基づく臨床試験、ひいては、患児一人ひとりがより適切な治療を受けるために大切なものです。中央診断を受けるには、JCCGに参加する施設であることが条件となりますが、全国の小児がん研究・治療に関わる医療機関の多くが参加しています。
中央診断には、主に3つあります。血液がんのための細胞マーカー中央診断、リンパ腫や固形腫瘍のための病理中央診断、そして中央分子診断です。中央診断の精度は非常に高く、世界最先端の診断と治療の機会の提供に、つまりより正確な診断、より適切な治療に貢献しています。WHO分類2021ではオミックス解析が導入され、今後は幅広い遺伝子解析に基づく、より正確な診断が期待されます。血液がんの遺伝子検査は保険診療として実施可能ですが、固形腫瘍や脳腫瘍で実施できる遺伝子検査は限定的です。 2016年より小児脳腫瘍の中央分子診断が導入されたことで、中央診断の件数が急増し、マンパワーや資金不足が深刻化しています。よりよい 診断と治療開発のためには、人材の育成と財源の確保が欠かせません。また、小児の範疇外にあるAYA世代(Adolescent and Young Adult 世代の略)のがんの診断が取り残される現状も生まれています。小児からAYA世代へのスムーズな治療の移行も求められています。
白血病
白血病は血液がんの一つで、小児がんで最もよく見られる病気です。身体の中を流れる血液は、骨の中の骨髄でつくられますが、その骨髄の中にある血液の元になる造血細胞ががん化し、増殖して白血病が生じます。白血病では、「急性」か「慢性」か、あるいは「リンパ性」か「骨髄性」かの正確な分類がとても大切です。小児に生じる白血病の約70%が急性リンパ性白血病(ALL)、約25%が急性骨髄性白血病(AML)、約5%が骨髄異形性症候群(MDS)です。そのほか、慢性骨髄性白血病(CML)や若年性骨髄単球性白血病(JMML)などがあります。
症状
発熱、全身倦怠感、体重減少、貧血、感染症にかかりやすい、血が止まりにくい、鼻血、アザ、骨の痛み、リンパ節の腫れ、喘息のような咳、呼吸困難などの症状が見られます。
診断
診断には、血液検査、骨髄検査、髄液検査、場合によってレントゲン、超音波、CT、 MRIなどの画像検査を行います。
治療
発症年齢や白血球数、治療への初期反応、 染色体・遺伝子異常などの要因に基づくリスク分類を行い、多剤併用化学療法が用いられます。 治療経過次第では、造血幹細胞移植が行われます。治療期間はALLではおおよそ2年ですが、AMLは8ヶ月程度と異なります。また、がん免疫療法のCAR-T細胞療法は、投与時25歳以下の再発・難治性のALLへの適用が認可されています。CMLでは分子標的薬の内服治療が一般的です。
リンパ腫
リンパ腫はリンパ球系細胞ががん化する病気です。白血病同様血液のがんですが、白血病と異なり、腫瘤(塊)をつくりやすいという性質を持っています。大きくは、ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫に分けられ、非ホジキンリンパ腫が90%を占めます。
症状
発熱、全身倦怠感、その他白血病と同様の症状に加え、腹痛、嘔吐、腹部膨満などの症状が見られることがありますが、子どもによくある便秘や胃腸炎と間違われ、診断が遅れることがあります。腹部原発の場合は、腸重積とい った症状が見られることもあります。
診断
診断には、血液検査、レントゲン、超音波、CT、MRI、FDG -PET、Gaシンチグラフィー、骨髄検査などを行います。リンパ腫では 針生検は推奨されず、通常、全身麻酔の上、病変部の生検が行われます。髄液検査が必要なこともあります。
治療
非ホジキンリンパ腫は病型分類によって 治療が異なりますが、いずれも抗がん剤治療を 行います。ホジキンリンパ腫は、抗がん剤治療と併用して低線量の放射線治療を行うのが一般的です。
脳腫瘍
小児がんの中で白血病に続いて多いのが小児脳腫瘍です。脳に腫瘍ができる病気です。
症状
腫瘍のできた部位によって、視覚障害、 思考の低下、言語障害、ふらつき、めまいなど多様な症状が現れます。腫瘍が原因による学校に馴染めないなどの精神症状が見られることも あります。それらに加え、頭蓋内圧亢進症、水頭症といった症状が考えられます。
診断
診断には、CTやMRI、脳血管造影、核医学検査(RI検査)、髄液検査を行います。
治療
腫瘍のある場所によって、手術、抗がん剤治療、放射線治療を組み合わせて治療を行います。詳しくは、「もっと知ってほしい小児脳腫瘍のこと」をご覧ください。
神経芽腫
神経芽腫は、交感神経節や副腎髄質に生じます。
症状
初めは無症状で、進行するまで気が付かないことも少なくありません。発熱や全身倦怠感、食欲不振などのほか、腫瘍ができた場所によって症状は異なります。眼球突出や出血、眼瞼下垂や瞳孔収縮などの症状を伴うホルネル症候群や、歩行困難や転倒などの症状を伴うオプソクローヌス・ミオクローヌス症候群などの症状が見られることもあります。
診断
診断には、血液検査や尿検査、レントゲン、超音波、CT、MRIの画像診断に加え、 MIBGシンチグラフィーや骨シンチグラフィー、 FDG-PET検査を行うこともあります。骨髄転移の有無を調べるために骨髄検査を行います。
治療
年齢、病理診断、遺伝子診断、転移の有無によってリスク分類を行い、治療計画が立てられます。低リスク群は手術、中間リスク群は抗がん剤治療と手術、場合によって放射線治療、 高リスク群では抗がん剤治療の後に手術、または手術の前もしくは後に大量化学療法を併用し た自家末梢血幹細胞移植を行います。加えて、放射線治療を行うのですが、近年は陽子線を用 いることもあります。高リスク群では、抗GD2抗体免疫療法といわれる分子標的薬を用いた免疫療法が行われることもあります。
胚細胞腫瘍
精子細胞や卵細胞などの胎児(赤ちゃん)のもとになる未熟な細胞の成熟過程で生じるがんです。精巣や卵巣などにできることもあれば、頭や縦隔、後腹膜、おしりの周りにできることもあります。
症状
できる部位によって症状は異なります。
診断
血液検査では、AFP、HCG-βの数値が腫瘍マーカーとなります。部位に応じて超音波、CTやMRIなどの画像診断を行います。確定診断には、生検や手術で切除した腫瘍で病理診断を行います。
治療
一般的に、抗がん剤治療と手術を行います。放射線治療は、抗がん剤治療が抵抗性である場合に考慮されます。
ウィルムス腫瘍(腎芽腫)
腎臓に発生するがんで、子どもの腎臓にできるがんの約80%はウィルムス腫瘍(腎芽腫) です。腎臓がんには、ほかに先天性間葉芽腎腫、腎明細胞肉腫、腎悪性ラブドイド腫瘍、腎細胞がんなどがあります。2歳前に発症することが多く、90%が5歳までに発症しています。 WT1、WT2と呼ばれる遺伝子の変異を原因とするものもありますが、変異を伴わない腫瘍も少なくありません。
症状
お腹の張りやしこり、腹痛、発熱、吐き気、食欲低下、血尿、高血圧などの症状が見られます。
診断
診断には、血液検査、尿検査、腹部の超音波検査、CT検査、MRI検査などを行います。 胸部CTで肺転移、頭部CTで脳転移、骨シンチグラフィーで骨転移を調べます。生検や摘出した腫瘍で、ウィルムス腫瘍かどうかを確定診断します。
治療
一般的には、手術で腫瘍と腎臓を摘出した後、抗がん剤や放射線による治療が行われます。抗がん剤で腫瘍を小さくした後に手術を行うこともあります。
肝芽腫
肝臓に発生するがんです。子どもの肝臓にできるがんで最も多いのが肝芽腫です。肝臓にできるがんには、ほかに肝細胞がん、肝内胆管がん、肝未分化肉腫などがあります。
症状
お腹の張りやしこり、腹痛、発熱、吐き気、 食欲低下、体重減少などの症状が見られます。
診断
診断には、血液検査、腹部超音波検査やCT、MRIの画像検査を行います。胸部CTで肺転移、骨シンチグラフィーで骨転移を調べます。開腹あるいは超音波による針穿刺で腫瘍組織を採取し、生検を行うことが推奨されています。
治療
一般的には、抗がん剤治療を行って腫瘍を小さくしてから手術し、術後にも抗がん剤治療を行います。ステージやリスク分類に応じて治療法を選択していきます。肝動脈化学塞栓術を行うこともあります。肝移植という治療選択が必要な場合もあります。
網膜芽細胞腫
網膜にできるがんです。95%以上が5歳までに発症します。
症状
白色瞳孔や斜視、結膜充血、眼球突出などの症状が現れます。
診断
診断には、眼底検査、超音波検査、頭部CT検査、頭部MRI検査を行います。眼球以外へ腫瘍が広がっている場合、髄液検査や骨髄検査を行います。網膜芽細胞腫には、RB1遺伝子の異常が関係していることがわかっており、 遺伝性か非遺伝性かを確定する遺伝子検査が推奨されることがあります。
治療
腫瘍が眼球内にとどまっている場合、化学療法に加えて、レーザー治療、冷凍凝固、小線源治療などによる局所治療を行うことで視力の温存を図ります。眼球内でも進行例の場合は抗がん剤治療を先行し、局所治療を行います。動注化学療法を行う場合もあります。腫瘍が眼球より外へ広がっている場合や転移がある場合、眼球摘出後に抗がん剤治療、放射線治療を行います。
小児の肉腫は、大きく骨腫瘍と軟部腫瘍に分かれます。骨にできる腫瘍と、骨以外の筋肉や脂肪、末梢神経などの軟部組織にできる腫瘍のことで、まとめて骨軟部腫瘍とも呼びます。軟部腫瘍で最も多く見られるのが横紋筋肉腫です。 小児の骨腫瘍で最も多く見られるのが骨肉腫で、次にユーイング肉腫です。骨腫瘍は肺転移しやすいことで知られています。
横紋筋肉腫
横紋筋肉腫は横紋筋になるはずの細胞ががん化する病気です。子どもに多く見られるのは、胎児型横紋筋肉腫(ERMS)です。眼窩、頭頸部、泌尿生殖器などに多く発症しますが、からだ中どこでも生じる可能性があります。胞巣型横紋筋肉腫(ARMS)は、10〜20歳に多く発症します。
症状
症状は腫瘍ができた場所によって異なりますが、臓器が腫瘍に圧迫されて生じることから、眼球が出てきたり、耳が聞こえづらくなったり、尿が出にくくなったりといった症状が見られます。
診断
診断には、血液検査、尿検査、レントゲン、超音波、CT、MRI、骨シンチグラフィー、PETなど の画像検査、骨髄検査などを行います。髄液検査を行うこともあります。確定診断には、生検組織による遺伝子診断を含む病理診断が必須です。
治療
治療は、病理組織型、発症部位、サイズ、転移の有無、切除度などによりリスク分類し、手術、抗がん剤治療、放射線治療を組み合わせて行います。
骨肉腫
骨肉腫は、骨にできるがんです。子どもの骨にできるがんで最も多く、10代の成長期に多く発症します。大腿骨や脛骨に多く見られます。
症状
主な症状は痛みと腫れですが、初期には症状が出ないことも多く、また成長痛などと混同されてしまうこともあります。
診断
診断には、血液検査、尿検査、レントゲン、超音波、CT、MRI、骨シンチグラフィー、PETなどの画像検査、骨髄検査を行います。確定診断は、手術で切除した腫瘍による病理診断で行われます。
治療
治療は、最初に抗がん剤治療で腫瘍を小さくしてから手術を行い、術後の抗がん剤治療を行います。以前は手術で患肢を切断することが一般的でしたが、現在は患肢温存が可能な場合に、腫瘍を部分切除し、年齢などに応じて再建術を行います。放射線治療が行われることはほとんどありません。
ユーイング肉腫
骨にできるがんで、多くは手足の骨や骨盤に生じますが、まれに軟部組織に生じることもあります。近年の研究成果により、骨ユーイング肉腫、骨外性ユーイング肉腫、未分化神経外胚葉性腫瘍(PNET)とアスキン腫瘍(胸壁に生じるPNET)はEWS-FLI1などの共通の遺伝子異常を持つことが判明し、これらの疾患群をユーイング肉腫ファミリー腫瘍(ESFT)と呼ぶようになっています。
症状
痛みと腫れが主な症状ですが、痛みが一定期間をおいて生じたり止んだり間欠的であることと、思春期に多く見られることから、成長痛と間違えられやすく、診断が遅れることがあります。また、発熱などの全身症状を伴うため、骨髄炎と間違えられることがあります。
診断
診断には、血液検査、尿検査、超音波、CT、MRI、骨シンチグラフィー、PETなどの画像検査や骨髄検査を行います。確定診断は、手術で切除した腫瘍による病理診断、遺伝子診断で行われます。
治療
骨肉腫同様、抗がん剤治療で腫瘍を縮小した後に手術し、術後の抗がん剤治療を行います。 放射線治療や造血幹細胞移植が用いられることもあります。
参考資料
もっと知ってほしい小児がんのこと 2022年版,p.8-12





