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乳がんの薬物療法の副作用

Q.薬物療法では、どのような副作用がいつごろ現れますか

A.吐き気やアレルギー反応は24時間以内、骨髄抑制、全身倦怠感、下痢、口内炎は3日~2週間目以降に起こりやすい副作用です。
脱毛など2週間~1か月以上経って出る副作用もあります。


 薬物療法で出やすい副作用と症状の強さ、出現時期は、薬によって異なりますし、患者さんによっても個人差があります。副作用に対処する薬の開発が進み、吐き気・嘔吐などのつらい副作用はかなりコントロールできるようになってきました。副作用の一般的な出現時期や対処法を知っておくと、冷静に対処できます(図表12~16)。
 副作用には、ある程度自分で対処できるものと、我慢せずにすぐに病院へ連絡したほうがよいものがあります。また、自覚症状があるものもあれば、最初は目立った症状がなく検査でわかる副作用もあります。不安があったら担当医や看護師、薬剤師に相談するようにし、副作用を恐れて勝手に薬物療法を中断しないようにしましょう。
 乳がんの薬物療法に使う抗がん剤に共通して出現しやすい副作用は、骨髄抑制(白血球・赤血球・血小板・好中球の減少)です。エピルビシン、シクロホスファミド、ドキソルビシンなど、吐き気が強く出やすい抗がん剤を使う際には、あらかじめ点滴の中に吐き気止めを入れ、セロトニン受容体拮抗薬やニューロキニン1受容体拮抗薬、ステロイドなどを服用します。エピルビシン、ドキソルビシン、ドセタキセル、パクリタキセルは特に脱毛が出やすい薬です。脱毛は治療を開始してから2~3週間後くらいから始まり、眉毛、まつ毛、体毛が抜けます。アンスラサイクリン系薬剤(エピルビシン、ドキソルビシンなど)は心臓に対する副作用に要注意です。タキサン系薬剤は手や足のしびれ、ピリピリ感、感覚が鈍くなるなどの末梢神経障害が起こりやすい薬です。ボタンをかけにくい、ものを落としやすいなど、日常生活に支障が出始めたら早めに担当医に伝えましょう。
 分子標的薬は、抗がん剤で出やすい骨髄抑制、脱毛などの副作用は少ないのですが、抗HER2薬のトラスツズマブ、ペルツズマブ、T-DM1などは、まれに心毒性(心臓機能の低下、心不全などを引き起こすこと)が現れます。血管新生阻害薬のベバシズマブは高血圧、タンパク尿、鼻や歯ぐきからの出血、骨髄抑制が要注意です。
 mTOR阻害薬のエベロリムスは骨髄抑制、腎不全、間質性肺炎、肺塞栓症、CDK4/6阻害薬のパルボシクリブは骨髄抑制、感染症、肺塞栓症に注意が必要です。
 PARP阻害薬のオラパリブで注意したいのが、骨髄抑制と間質性肺炎です。
 ホルモン薬も抗がん剤のような副作用は少ないですが、顔がほてったり、急に汗が出たりするホットフラッシュ、更年期障害のような症状、性器出血、精神・神経症状が人によっては強く出ます。また、頻度は低いものの肺塞栓症、脳梗塞、心筋梗塞を引き起こします。LH-RHアゴニスト製剤やアロマターゼ阻害薬は関節のこわばりや痛み、骨粗しょう症が起こりやすい薬なので、定期的に骨密度を測ります。重い副作用が出たときには薬物療法を中止し休薬するか、使う薬を変更します。
 薬物療法を受けるときには、事前に出やすい副作用とその対処法、病院へ連絡すべきときなどを確認しておきましょう。

どのような副作用がいつごろ現れるのかを知っておきましょう
乳がんの治療に使う抗がん剤と主な副作用
乳がん治療に使う分子標的薬と主な副作用
乳がん治療に使うホルモン薬と骨転移治療薬の主な副作用
乳がんの薬物療法の主な副作用と対処法
こんな症状が出たときにはすぐ病院へ連絡を!

●38度以上の発熱に痛みや出血を伴う
●強い胸痛、動悸や息苦しさ、空咳が続く
●嘔吐または下痢が続き、水分もとれない
●手足の強いしびれ、ピリピリ感、痛み
夜間・休日の緊急時の連絡先と連絡方法をわかりやすい場所に貼っておきましょう。

妊娠中の乳がん治療、治療後の妊娠・出産は?

 妊娠中に乳がん(妊娠期乳がん)と診断される場合があります。妊娠前期のCT検査、放射線療法、薬物療法は胎児に悪影響を及ぼす危険があり、お勧めできません。妊娠中期以降の薬物療法も、薬によっては胎児に悪影響を与えます。胎児の安全を優先して治療を遅らせるのか、治療を開始・継続するのか、乳がんの治療を優先して中絶を考えるのか、担当医や家族と納得がいくまで相談して決めるようにしましょう。
 一方、がんの治療後に赤ちゃんがほしいと考えている人の場合、抗がん剤治療を受けた人は、投与終了後半年間は胎児に影響が出る恐れがあるので、妊娠は控えましょう。また、ホルモン薬は胎児奇形を増加させる恐れがあるので、ホルモン療法中と治療後数か月間は避妊が勧められます。薬物療法の内容と期間、患者さんの年齢によっては、無月経あるいは無排卵になってしまう場合があります。そのため、一部の医療機関では、40歳以下で抗がん剤治療やホルモン療法を受ける人の妊娠可能性を残すために、治療前に受精卵、卵子、卵巣の凍結保存を行っています。自然妊娠も含めて、治療後に、妊娠、出産、授乳をしたとしても、がんの進行が早くなったり、再発率が高まったりすることはないとされていますが、現在、そのことを確認する臨床試験が進行中です。
※がん患者さんの妊孕性(妊娠可能性)温存については、日本がん・生殖医療学会のサイトに詳しい情報が載っています。
http://j-sfp.org/public_patient/index.html

参考資料

もっと知ってほしい乳がんのこと 2018年版,pp.17-20

公開日:2022年1月21日 最終更新日:2022年1月21日

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