治療の副作用と対処法
Q.治療の主な副作用とその対処法について教えてください
A.急性骨髄性白血病(AML)の薬物療法では、ほとんどの人に副作用が出ます。副作用が出る時期や症状は薬物療法の内容によって異なります。主な副作用の出現時期と対処法について知っておきましょう。
AMLの治療薬には、さまざまな副作用があります。治療が複数の選択肢から選べる場合には、どのような副作用が起こりやすいのかも、選択の基準の一つになります。治療を受ける前には、どのような副作用が起こりやすい薬なのか、副作用を軽減する方法がないのか確認することが重要です。
薬やサプリメントによっては、AMLの薬物療法と併用しない方がよいものがあります。常用している薬やサプリメントがある場合には、必ず担当医に伝えましょう。
◆殺細胞抗がん剤の副作用
症状の出方や強さ、出現時期には個人差があるものの、アントラサイクリン系抗がん剤やシタラビンなど従来からある殺細胞性の抗がん剤では、起こる恐れが高い副作用とその出現時期がある程度わかっています(図表 13、14)。骨髄抑制、肝障害、腎障害、心機能障害、間質性肺炎などの副作用が出ているかどうかは検査をしないとわからない場合も多いため、薬物療法中は定期的に血液検査や骨髄検査、X線検査、心電図検査、電解質検査などを行います。
AMLの治療に用いる殺細胞性抗がん剤で生じやすい副作用は、血液をつくる骨髄機能が低下して白血球、赤血球、血小板が減少する骨髄抑制、吐き気・嘔吐、食欲不振、脱毛などです。
アントラサイクリン系抗がん剤では特に、むくみ、胸の痛み、体がだるいといった症状が出る心筋障害に注意が必要です。シタラビンでは、まれに投与直後に呼吸困難、全身が赤くなる全身潮紅、血管浮腫、蕁麻疹などのアレルギー反応が、点滴してから6~12時間後にシタラビン症候群(発熱、筋肉痛、骨痛、皮疹、胸痛、結膜炎、倦怠感)が生じることがあります。急に呼吸困難になる急性呼吸促拍症候群、間質性肺炎にも要注意です。 ダウノルビシン・シタラビンリポソーム製剤では、まれに、腫瘍の急激な崩壊によって電解質異常、腎障害や不整脈などを引き起こす腫瘍崩壊症候群が起こる恐れがあります。
◆分子標的薬の副作用
分子標的薬は比較的副作用が少ないと言われることがありますが、実際には、抗がん剤とは特徴が異なる副作用が出ることが少なくありません(図表15)。分子標的薬の場合、 出やすい副作用は薬によって異なり、その出現時期も一定ではないのが特徴です。
FLT3阻害薬のキザルチニブ、ギルテリチニブで注意が必要なのは、不整脈の一種で、失神や心停止につながることもあるQT間隔延長です。
高齢者の治療選択肢となるBCL2阻害薬のベネトクラクスでは、まれに、腫瘍崩壊症候群が治療開始12~72時間後に出現することがあります。治療開始から3〜4日間かけて徐々に薬の量を増やし、増量している間に1日1.5~2リットルの水分補給がすすめられるのは、このような副作用ができる限り起こらないようにするためです。
また、骨髄抑制が起こった場合には、一時的に休薬や減量をすることがあります。ただし、副作用とみられる症状が出た時には担当医や看護師に相談し、自己判断での薬の中断はしないでください。グレープフルーツやそれを含む食品は、薬の作用を強める恐れがあるので、ベネトクラクスの服用中は避けましょう。
急性前骨髄球性白血病(APL)の治療薬のATRA、タミバロテンでは、投与直後に、 38℃以上の発熱、息苦しさ、息切れ、胸の痛み、頭痛、からだがだるいなどの症状が出るレチノイン酸症候群、APL分化症候群が生じることがあります。早期発見・治療が重要なので、息苦しさや胸の痛みなどを感じたら、身近なスタッフに伝えましょう。亜ヒ酸では、不整脈の一種のQT間隔延長、骨髄抑制に注意が必要です。
再発治療に用いられる抗体薬のゲムツズマブオゾガマイシンは、悪寒、発熱、吐き気・ 嘔吐、頭痛、低血圧、呼吸困難などの症状が投与後24時間以内に生じるインフュージョンリアクション(急性輸液反応)、骨髄抑制が起こりやすい薬です。頻度は低いものの、血管内で血液が固まったり出血したりする播種性血管内凝固症候群が生じることもあります。
◆副作用を抑える支持療法
吐き気や嘔吐といった副作用は、支持療法の進歩によってかなり軽減できるようになってきています。
また、重篤な感染症を引き起こす骨髄抑制の一種である発熱性好中球減少症を予防するために、G-CSF(顆粒球コロニー形成刺激因子)製剤を用いることもあります。AMLの寛解導入療法、寛解後療法時にG-CSF製剤を投与すると好中球減少や発熱の期間の短縮がみられることが報告されています。特に、高齢者や重症感染症を併発したケースでは、寛解導入療法、寛解後療法に、好中球減少を改善・予防する目的でG-CSF製剤が投与されることが多くなっています。
他にもつらい症状があれば、軽減できる方法がないか、担当医や看護師、薬剤師などに相談してみましょう。食欲不振など、食事に関する悩みについては、管理栄養士による栄養相談を活用するとよいでしょう。
外見の変化に伴う医学的・社会的・心理的苦痛の軽減を目指すアピアランスケアを行う医療機関もあります。そのような悩みがある場合には、相談する場所がないか、身近な医療スタッフに聞いてみましょう。
◆副作用への対処法と薬物療法の注意点
副作用については、その対処法を知っておくとつらい症状が軽減できる場合があります (図表16)。また、副作用には、ある程度様子をみてもよい症状と、すぐに医療スタッフに連絡したほうがよいものがあります。薬物療法を受ける前に、起こりやすい副作用の対処法と、どういうときに医療者に連絡すべきか確認しておくことが大切です。
参考資料
もっと知ってほしい急性骨髄性白血病のこと 2024年版, p.17-20


