造血幹細胞移植について
Q.急性骨髄性白血病(AML)に対する造血幹細胞移植について教えてください
A.抗がん剤などによる薬物療法だけでは完治が難しいと考えられるAMLに対して行われる治療です。体への負担や副作用が大きいため、移植を実施するか、どういう方法を選択するのかは慎重に検討されます。
造血幹細胞移植は、大量の抗がん剤投与と放射線照射によって白血病細胞を極限まで減らし、骨髄を破壊する前処置を行った後、造血幹細胞を移植して造血機能を回復させる治療法です。ドナー(提供者)の造血幹細胞を移植する同種造血幹細胞移植(同種移植)と、あらかじめ採取して冷凍保存しておいた患者本人の造血幹細胞を移植する自家造血幹細胞移植(自家移植)があります。
AMLで行われる造血幹細胞移植は、ほとんどが同種移植です。自家移植が検討されるのは、急性前骨髄球性白血病(APL)の再発後の寛解導入療法後に、骨髄中にPML:: RARA遺伝子が見られなくなった場合に限られます(「急性骨髄性白血病の治療」参照)。
同種移植の方法には、骨髄移植、末梢血幹 細胞移植、臍帯血移植の3種類があります(図表17)。自家移植では自分の末梢血幹細胞を用います。
造血幹細胞移植は、AMLを完治させる可能性が高い治療である半面、通常の抗がん剤治療よりも強い副作用が出やすくなります。同種移植と自家移植に共通の副作用は、前処置によって起こる骨髄抑制、口内炎、脱毛、吐き気・嘔吐、感染症、食欲不振、下痢などです。また、頻度は高くないものの、心臓、肺、肝臓、腎臓などの臓器障害もあります。
移植片対宿主病(GVHD)は同種移植特有の合併症で、移植片に含まれるドナーのリンパ球が移植を受けた人の体を異物とみなして攻撃するために起こります。同種移植では、ドナーのリンパ球が白血病細胞を攻撃する移植片対白血病(GVL)効果が期待できますが、正常細胞も攻撃してしまうのです。
GVHDには急性と慢性のものがあり、急性期には発疹、腹痛、下痢、吐き気・嘔吐、食欲不振、肝機能障害などが生じます。口腔内の痛みや違和感、眼や皮膚、粘膜の乾燥、下痢などを伴う慢性GVHDを発症する人もいます。
近年、主に56歳以上の人に対して、移植前処置の強度を下げた骨髄非破壊的移植(ミニ移植)が普及してきました。前処置の抗がん剤投与量と放射線照射量を少なくして副作用を抑え、ドナーのリンパ球が白血病細胞を攻撃するGVL効果を促す方法です。ただし、一般的な造血幹細胞移植に比べて再発率が高く、やはりGVHDや感染症になるリスクもあります。
造血幹細胞移植とHLA
HLAはヒト白血球抗原のことで、白血球の型を示します。同種造血幹細胞移植では、原則としてA座、B座、C座、DR座という4座(8抗原)のHLAの型が一致する人から造血幹細胞の提供を受ける必要があります。HLAがすべて一致する確率は兄弟姉妹で4分の1、非血縁者では数百~数万分の1です。HLAがすべて合致する人がいない場合には、一部が合致しない血縁ドナーから造血幹細胞の提供を受けるHLA半合致移植(ハプロ移植)を行うこともあります。ハプロ移植では、生着不全やGVHDを最小限に抑えるために、免疫抑制剤を用います。
参考資料
もっと知ってほしい急性骨髄性白血病のこと 2024年版, p.21


