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薬物療法の副作用

Q.薬物療法の副作用について教えてください

A. 使用する薬の種類によって、副作用は異なります。日々のセルフケアに加え、些細な体調変化に注意し、つらい症状は我慢せずに医療者に相談することが治療の継続と生活の質の維持につながります。


 前立腺がんの治療では、ホルモン療法を長期間継続することが多いため、予想される副作用とその対策を予め知っておくことは、自分らしい生活を維持するために非常に大切です。特に、転移のない段階では、がん自体の症状がほとんどないケースも多く、治療を続けながらいかに普段通りの生活を維持できるかが鍵となります。

 副作用を適切に管理し、日々の生活の質を保つことは、治療を前向きに継続するための大きな支えとなります。

薬物療法で出現する可能性がある主な副作用

 図表20は、薬物療法で用いられる主な薬とその主な副作用です。

 ホルモン療法は、さまざまな仕組みで男性ホルモンの分泌や働きを抑制する治療です。しかし、男性ホルモンは骨や筋肉、気分、性機能など、体のさまざまな働きを支えています。そのため、ホルモン療法によって男性ホルモンの量や働きが低下すると、ほてり、だるさ、性機能の低下、骨がもろくなるなどの副作用が生じることがあります。

 LHRHアゴニスト、LHRHアンタゴニストの副作用としては、急な発汗やほてり、うつ症状など女性の更年期障害に似た症状が頻出するほか、体重増加や性機能障害などもみられます。注射した部位に腫れやかゆみなどが出ることもあります。長期的には高血圧、糖尿病の悪化、骨密度や筋力の低下などがみられます。

 旧来の抗アンドロゲン薬では、肝障害や心障害のほか、血栓症や糖尿病の発症・悪化、間質性肺炎、乳房の腫れや圧痛、女性型乳房、性欲減退などもみられます。

 ARSIのうち、新規抗アンドロゲン薬では、男性ホルモンを抑制することが原因で起こる副作用だけでなく、脳の神経のバランスに薬が影響することが原因で起こるけいれんが知られています。ただし頻度は高くなく、多くの方で起こる副作用ではありません。アンドロゲン合成阻害薬の副作用としては、肝障害や心障害、低カリウム血症や高血圧、吐き気・嘔吐、便秘、下痢、疲労、末梢の浮腫、ほてりなどが知られています。

 薬物療法では、女性ホルモンや副腎皮質ホルモンを用いることもあります。

 女性ホルモンの副作用には、血栓塞栓症(血栓症)、心障害、肝障害、女性化乳房、食欲不振、吐き気・嘔吐などがあります。

 副腎皮質ホルモンの副作用は、男性ホルモンの働きを抑える影響だけでなく、ステロイド薬特有の生体反応によって起こります。感染症、糖尿病の発症や悪化、消化器の潰瘍・穿孔、骨粗鬆症・骨折、血栓塞栓症、うつなどが代表的です。

 化学療法で用いるタキサン系抗がん剤は、がん細胞が分裂する働きを止める作用があり、血液をつくる骨髄や髪の毛、胃腸の細胞などにも影響が及んで、副作用が起こります。白血球の減少は、G-CSF剤の併用により抑えることができるようになっています。

 PARP阻害薬は、がん細胞の傷ついたDNAを修復する力を弱める薬です。しかし、その作用が骨髄や胃腸などの細胞にも影響を与えます。その結果、骨髄抑制(貧血)、間質性肺炎、吐き気・嘔吐、食欲不振、疲労・無力症などが出現することがあります。

 RI内用療法薬は、放射線を出す薬が体内からがん細胞を狙って攻撃する治療です。しかし、周囲の正常な細胞にも少なからずダメージを与え、骨髄に影響すると貧血や白血球減少、だるさなどが生じることがあります。

 骨修飾薬は、骨が壊れないようにすることで、骨折や骨の痛みを防ぐ治療です。ただし、骨は常に古い骨を壊し、新しい骨をつくってバランスを保っています。骨修飾薬はこのバランスをくずすため、顎や耳の骨のトラブル(顎骨壊死など)や低カルシウム血症などが起こることがあります。
前立腺がんに用いられる主な薬とその主な副作用

副作用と上手に付き合うために

 薬物療法で現れる主な副作用には対処法があります(図表21)。

 吐き気や食欲不振時には、あらかじめ制吐剤を服用するほか、食事を少量ずつ何回かに分けて食べるなどの工夫が助けになります。下痢や便秘には、整腸剤の活用や生活リズムの調整、適度な運動で対応します。

 また、こまめな手洗いやうがいによる感染予防 、頭皮や口腔内の清潔保持など、日々のセルフケアを習慣化することも大切です。

 些細な体調変化であっても、我慢せずに医療者に伝え、早めに対処していくことが、治療の継続や生活の質の維持につながります。
前立腺がんの薬物療法で現れる芋な副作用と対処法

参考資料

もっと知ってほしい前立腺がんのこと 2026年版, p.24-26

公開日:2026年10月29日 最終更新日:2026年10月29日

BOOKLET薬物療法の副作用に関する冊子