胃がんの手術後の薬物療法
Q.手術後の薬物療法について教えてください
A.手術後の薬物療法は、切除したがんの病理検査でステージⅡかⅢと判定された場合に、再発を予防する目的で行われます。また手術後は、再発を早期発見したり、合併症や後遺症を治療したりするための定期的な診察や検査(フォローアップ)も重要です。
再発を防ぐための術後補助薬物療法
目に見えるがんを手術で切除しても、実際には微小ながん細胞が残存していたり、すでにどこかに転移したりしている可能性があります。この残ったがん細胞を薬物療法で死滅させ、再発を防ぐことを目的とした治療を術後補助薬物療法といいます。
術後補助薬物療法が推奨されるのは、手術後の病理検査でステージⅡかⅢ(「胃がんの病期(ステージ)と治療方針」ページ参照)と判定され、全身状態がよく、主要な臓器の働きが保たれている患者さんです。ステージⅡ、 Ⅲでは、手術のみでは20~60%の患者さんが再発することがわかっています。
使用されるのは、いずれも殺細胞性抗がん薬(「胃がんの切除不能がん、再発がんの治療」ページ参照)です。ステージⅡの患者さんには、S-1(内服)による単独療法が推奨されます。4週間毎日服用したあと2週間休む、というサイクルを1年間続けます。臨床試験では、3年無再発生存率93%という良好な治療成績が報告されています。
ステージⅢの患者さんに対しては、①カペシタビン(内服)とオキサリプラチン(点滴) の併用療法(略称CapeOX)、②S-1とオキサリプラチンの併用療法(略称SOX)、③S-1とドセタキセル(点滴)の併用療法(略称DS)のなかから、全身状態や副作用を考慮して選択されます。いずれも投薬と休薬を1サイクルとして繰り返しながら、CapeOXは6か月、SOXとDSは2剤併用6か月のあとS-1単剤を6か月続けます。
ステージⅣの患者さんで根治切除が可能であった場合は、臨床試験などに基づく十分な根拠は得られていませんが、やはり再発を防ぐ目的で何らかの術後補助薬物療法が行われるのが一般的です。
術後のフォローアップが重要
手術後、薬物療法と同様に重要なのは、定期的な診察と検査(フォローアップ)です。その目的は、手術後の合併症や後遺症を適切に治療し、再発をできるだけ早期に発見することにあります。
再発した場合には薬物療法が原則となりますが、肝臓への転移などでは、早期であれば手術が選択される場合もあります。また、胃の切除後は食事への影響が大きいため、ダンピング症候群(「胃がんの手術療法」ページ参照)などの不快な症状への対策を含めた食生活の指導も、フォローアップの重要な役割です。
『胃癌治療ガイドライン』では、ステージⅠの胃がん手術後のフォローアップと、ステー ジⅡ、Ⅲの胃がん手術後のフォローアップの計画が推奨されています(図表17、18)。
ステージⅠの患者さんでは、最初の受診を手術の1か月後に、その後3年目までは6か月ごと、4年目、5年目は1年ごとに受診します。受診時には診察、血液検査(腫瘍マーカーの CEA、CA19-9の測定を含む)を行い、必要に応じてCT(コンピュータ断層撮影)や超音波検査、内視鏡検査なども行います。腫瘍マーカーは、腫瘍があると血液中で検出可能な物質で、画像診断などよりも早期に再発を診断できる場合があります。ただし、偽陽性にも注意が必要です。
ステージⅡ、Ⅲの患者さんは、術後補助薬物療法を6か月、または1年継続しつつ、2年目までは3か月ごとに受診します。ステージⅠとの違いは、術後3年目まで6か月ごとにCTか超音波検査を受けることです。
胃を全摘した場合、ビタミンB12が小腸で吸収できなくなるため、数年に1回、注射もしくは内服でビタミンB12を補う必要があります。
胃がんの手術後のフォローアップ期間は原則5年間です。しかし、その後も再発の可能性はゼロではありません。残った胃に(再発ではなく)新たながんが生じることもあります。したがって定期的に検査を継続することが望まれます。どの施設で、どのくらいの間隔で受診するかは、仕事や生活環境を踏まえ、医師と相談して決めるとよいでしょう。

参考資料
もっと知ってほしい胃がんのこと 2026年版,p.15-16


