再発・難治のDLBCLの治療
Q.再発・難治のDLBCLにはどのような治療が行われますか
A.初回治療が奏効しなかった場合や、完全奏効後1年以内の再発の場合はCAR-T細胞療法、1年後以降の再発には自家移植が可能かどうか検討します。
再発とは、初回治療によって完全奏効になった後、再びリンパ腫が出現することです。DLBCLの場合、再発は治療直後から2年以内に起こりやすく、2~3年後以降の再発はまれとされます。再発時には、ろほう性リンパ腫など、おとなしいタイプのリンパ腫に変わっていることがあるので、可能な限り再生検して、確認する必要があります。
また、初回治療で完全奏効が得られず、病変が残ったり大きくなったりした場合には、治療抵抗性、あるいは難治性のDLBCLと呼ばれます。
再発したり難治性となったりした場合の治療選択肢には、薬物療法、CAR-T細胞療法、大量化学療法+自家造血幹細胞移植(自家移植)などがあります。薬物療法の選択肢は、多剤併用化学療法(救援薬物療法)、二重特異性抗体、抗体薬物複合体を含む抗体薬などです(図表17、18)。病状によっては、治療開始まで数日間も待てないケースもありますが、それぞれの治療法の長所と短所(図表21-1、21-2)を確認し、担当医などの医療スタッフと話し合いながら治療法を選ぶことが大切です。DLBCLの場合、再発しても治癒を目指す治療が可能です。
難治性か初回治療のCR後1年以内の再発
まずは、CAR-T(キメラ抗原受容体T)細胞療法が可能かどうか検討します。すぐにCAR-T細胞療法ができない場合には、大量化学療法+自家移植(自家造血幹細胞移植)も選択肢になります。
CAR-T細胞療法は、患者本人の免疫細胞であるT細胞を採取し(白血球アフェレーシス)、がん細胞を攻撃するように遺伝子改変したうえで、体内へ戻す治療法です。CAR-T細胞が増えやすい環境をつくるために、あらかじめリンパ球を除去しておきます(図表19)。白血球アフェレーシスから輸注まで3~5週間必要なので、その間に病状進行を抑える目的で、多剤併用化学療法を行うこともあります。
初回治療難治性の場合と1年以内の早期再発では、自家移植を目指した治療よりもCAR-T細胞療法のほうが、治癒の可能性が高いことがわかっています。ただし、CAR-T細胞療法は高度な治療であるため、実施できる施設が限られ、高額であることが難点です。
DLBCLの2次治療として行うCAR-T細胞療法には、アキシカブタゲン シロルユーセル(イエスカルタ)か、リソカブタゲン マラルユーセル(ブレヤンジ)を用います。アキシカブタゲン シロルユーセルは、①重篤な併存疾患がない、②おおむね65歳以下(66歳以上でも可能な場合がある)、③心肺機能が正常など、自家移植の適応基準を満たす人が対象です。リソカブタゲン マラルユーセルは、自家移植非適応の人も対象になります。CAR-T細胞療法は高い効果が期待できる半面、サイトカイン放出症候群(CRS)や免疫エフェクター細胞関連神経毒性性症候群(ICANS)など、重篤な副作用が出るリスクがあることに注意が必要です。
CAR-T細胞療法や自家移植の対象とならない場合や、これらの治療後に再発・難治性となった場合にはMos-PV療法や多剤併用化学療法を検討します。二重特異性抗体薬は、DLBCL細胞の表面に発現するCD20とT細胞の表面にあるCD3に同時に結合することで、T細胞をCD20陽性のDLBCL細胞に近づけて攻撃させます(図表20)。
Mos-PV療法では、モスネツズマブの皮下注射を、1コース目は週1回、用量を増やしながら3回行い、2~8コース目まで3週に1回行います。並行してポラツズマブ ベドチンの点滴注射を1~6コース目に3週に1回行います。
CAR-T細胞療法と二重特異性抗体薬の副作用
前述のように、CAR-T細胞療法と二重特異性抗体薬にはCRSやICANSなど重い副作用が起こるリスクがあります(「DLBCLの薬物療法の副作用」ページ参照)。
CRSは、生理活性タンパク質のサイトカインが血中に大量に放出されることで起こる、38℃以上の発熱、血圧低下、呼吸不全などの症状の総称です。ICANSは、活性化された免疫細胞が脳の中枢神経に影響をおよぼすことで、薬の投与後4~5日後に出現することがある副作用です。手のふるえ、字が書けない、言語障害、すぐ眠ってしまう(傾眠)、認知機能低下、けいれん,幻覚・幻視などICANSが疑われる症状が生じたら、ステロイド薬などで治療します。
CR後1年超の晩期再発の治療
併存疾患や臓器障害の有無、年齢などから自家造血幹細胞移植(自家移植)を併用した大量化学療法が可能な状態であれば、まずは多剤併用化学療法を実施します。1~3コース行い、効果がみられた段階で、化学療法の骨髄回復期にG-CSFやプレリキサホルという薬を使って骨髄から造血幹細胞を動員して血液を体外に循環させ、造血幹細胞を分離・抽出(アフェレーシス)し、凍結保存します。その後、多剤併用化学療法によりCRかPRになったら、大量化学療法によってリンパ腫細胞に強力なダメージを与えたあとに、患者自身の造血幹細胞を輸注します(自家移植、図表22)。
再発・難治性のDLBCLに対して用いられる多剤併用化学療法には、R-DHAP療法、RESHAP療法などがあります(図表21-1)。大量化学療法は、MEAM療法、LEED療法
などが主流です(図表21-1)。MEAM療法は、ラニムスチン(M:サイメリン)、エトポシド(E)、シタラビン(A:キロサイドなど)、メルファラン(M:アルケラン)の併用療法です。LEED療法では、メルファラン(この場合はL)、エトポシド(E)、シクロホスファミド(E:エンドキサン)、デキサメタゾン(D)を併用します。
大量化学療法+自家移植は、通常の多剤併用化学療法よりも高い効果が期待できる半面、吐き気・嘔吐、下痢、口内炎、食欲不振、脱毛の副作用があり、肝臓、腎臓、心臓、肺、中枢神経など命にかかわる重大な機能障害を起こすリスクのある治療です。また、多剤併用化学療法の開始から自家移植後に造血機能が回復するまで、一時退院をはさみながら通算で1か月以上、約半年間の入院治療が必要となります。併存疾患や臓器の状態、年齢などから自家移植が難しい場合は、薬の量を減らした減弱多剤併用化学療法、CAR-T細胞療法、Mos-PV療法、PV-BR療法などが選択肢になります(図表21-1、21-2)。
CAR-T細胞療法と二重特異性抗体薬の副作用
原発性縦隔LBCLは、免疫チェックポイント阻害薬のペムブロリズマブ(キイトルーダ)を3週間に1回、最大2年間点滴投与する治療が2次治療の選択肢の一つになります。ペムブロリズマブは、がん細胞の表面にあるPD-L1というタンパク質とT細胞の表面にあるPD-1というタンパク質との結合を阻止して免疫細胞のブレーキを解除し、免疫細胞を活性化させる抗PD-1抗体薬です。この薬だけで治癒する可能性もありますが、CAR-T細胞療法へのつなぎの治療として使われることもあります。肝機能障害、甲状腺機能障害、神経障害、間質性肺炎、大腸炎・重度の下痢、腎機能障害、副腎機能障害など免疫関連の副作用に注意が必要です。
CAR-T細胞療法と二重特異性抗体薬の副作用
2次治療で完全奏効や部分奏効にならなかったり、再々発した場合には、2次治療以降の選択肢のうち、まだ受けていない治療法や、二重特異性抗体薬のエプコリタマブ(エプキンリ)が選択肢になります。エプコリタマブは28日を1コースとして、1~3コースまでは週1回、4~9コースまでは2週間に1回、10コース以降は4週間に1回、皮下注射で投与します。効果が続いている間、長く継続する治療です。
そのほかドナー由来の造血幹細胞を移植する同種移植や新薬の治験(臨床試験)も、3次治療以降の選択肢の一つです。
同種移植では、免疫を抑える作用の強い抗がん薬や放射線療法を前処置として行った後、血縁者や骨髄バンク、臍帯血バンクなどから提供された造血幹細胞を輸注することで造血機能を回復させます。ドナー由来の免疫細胞が体内に残るリンパ腫細胞を攻撃する移植片対リンパ腫(GVL)効果を期待した治療です。
ただし、薬物療法による強い副作用が起こるリスクがあるうえ、ドナー由来の免疫細胞が正常細胞を攻撃することで起こる移植片対宿主病(GVHD)には注意が必要です。GVHDには移植から3か月以内に起こる急性GVHDと、それ以降に起こる慢性GVHDがあります。
また、感染症のリスクは多剤併用化学療法などより高く、治療の合併症で死亡するリスクはほかの治療より高くなります。同種移植を受けるかどうかは、年齢、全身状態、リンパ腫の状態、臓器の状態、ドナー候補の状況などから期待できる効果とリスクを踏まえ、患者本人の価値観をもとに、担当医と話し合いながら慎重に判断する必要があります。
参考資料
もっと知ってほしいびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)のこと 2026年版, p.18-22


