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膀胱がんの膀胱摘出後の排尿方法について

Q.膀胱を摘出した場合、排尿の方法はどうなりますか

A.膀胱を摘出したときには、尿の出口と尿をためておく場所をつくる尿路変向術を受け、排尿するためのリハビリテーションを行います。尿路変向術にはいくつか種類があり、自分のライフスタイルに合わせて選ぶ必要があります。


 膀胱を摘出する手術を受けた場合、新たに尿の出口をつくる尿路変向(変更)術を受ける必要があります。尿路変向術には、主に、尿の出口であるストーマを造設する回腸導管造設術、ストーマを造設せず新たに膀胱を再建する自排尿型新膀胱造設術、そして、尿管を切断して直接皮膚に縫いつける尿管皮膚瘻造設術という3つの方法があります。

●合併症が少ない回腸導管造設術

 小腸の一部を切除し、取り出した部分に左右の尿管をつなぎ、尿を導く回腸導管をつくり、尿の出口を腹部の右側の皮膚に出す方法が回腸導管造設術(図表7)です。その出口を「ストーマ」と呼びます。利点は術式が簡単で合併症が少なく、新膀胱をつくる方法より手術時間が短くて済むことです。しかし、ストーマの先に尿をためるパウチをつけなければならない不便さがあります。また、ストーマの周囲の皮膚はかぶれやすいので清潔を保ち、こまめに手入れするストーマケアが重要です。

回腸導管造設術

●外見上変わらない自排尿型新膀胱造設術

 自排尿型新膀胱造設術(図表8)は切除した小腸を使って袋状の新膀胱(代用膀胱)をつくり、これを尿道につなぐ方法です。尿をためるパウチなどの装具をつける必要がなく、手術前と同じように尿道から尿を出すことができます。尿意は感じませんので、4~5時間に1度程度、定期的に腹圧をかけて尿を出さなければなりませんが、外見上は手術前と変わらないのが利点です。欠点は、ストーマを造設する方法に比べて手術時間が長く術式が比較的難しいことです。また、尿道を切除した人にはこの方法は使えません。腸閉塞があったり腸の手術をしたことがある人も、小腸を使って新膀胱をつくることができないので回腸導管造影術を選ぶことになります。

自排尿型新膀胱造設術

●負担の少ない尿管皮膚瘻造設術

 尿管皮膚瘻造設術は、尿管を切断して直接皮膚に尿管を縫いつけ、尿の出口となるストーマを造設する方法です。手術方法が単純で負担の少ない方法ですが、パウチをつけなければいけないことと、ストーマ合併症などのトラブルが多いのが難点です。
 どの尿路変向術でも再発率に差はありません。複数の方法から選べる場合には、担当医や看護師に利点と欠点をよく聞き、自分の生活スタイルに合わせて選ぶようにしましょう。実際に尿路変向術を受けた患者さんに話を聞くのも参考になります。

●排尿リハビリを受けて退院へ

 膀胱全摘除術と尿路変向術を受けたときには1か月程度の入院が必要です。手術後しばらくは造設したストーマや新膀胱にカテーテル(管)を入れて尿を出しますが、術後2〜3週目くらいから、排尿リハビリを行います。
 自排尿型新膀胱造設術を受けた人は、新膀胱に400mL程度尿がたまった時点で腹圧をかけて排尿するようにします。最初は新膀胱が膨らみにくいため、尿失禁がありますが、パッドを当てれば心配ありませんし、2~3か月すれば失禁も徐々になくなります。ただ、新膀胱が膨らみすぎて巨大膀胱になると、尿が残りやすくなるので尿をためすぎないよう注意します。新膀胱から腸粘液が出る場合は、自分で尿道へ管を入れ洗浄すると、不快感が軽減されます。ケアの仕方は担当医や看護師に聞いておきましょう。
 回腸導管造設術などでストーマを造設した人は、入院中にストーマの洗い方や装具のつけ方の指導を受け、自分で排尿とストーマの管理ができるように練習します。退院後もストーマ外来に定期的に通い、心配なことは看護師などに相談しましょう。
 ストーマを造設した人は、市区町村の福祉担当課に申請すれば身体障害者手帳が交付され、乗り物料金などの割引が受けられます。とはいえ、日常生活にはほとんど支障がないので、外出や性生活を控える必要はありません。装具をつけつつ、仕事を続けたりスポーツや海外旅行を楽しんでいる人は大勢います。

参考資料

もっと知ってほしい膀胱がんのこと 2022年版,pp.10-11

公開日:2022年9月5日 最終更新日:2022年9月5日

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