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DLBCLの初回治療の薬物療法

Q.DLBCLの初回治療の薬物療法について教えてください

A.R-CHOP療法やPV-R-CHP療法などの多剤併用化学療法で、体の中のリンパ腫の撲滅を目指します。一部の特殊なタイプではDA-EPOCH-R療法で治療することがあります。


 病期にかかわらず治療の中心は多剤併用化学療法です。初回の薬物療法によって、完全奏効(CR)を目指します。薬物療法が一通り終わった時点で、効果判定(「治療の効果判定と経過観察」ページ参照)を行い、PET-CT検査で病変が認められない場合をCR(代謝的完全奏効:CMR)といいます。病変は縮小したものの、ある程度残っている場合(部分奏効:PR)には、局所放射線療法(「放射線療法について」ページ参照)や2次治療への移行を検討します(図表8)。臨床試験が治療の選択肢になることもあります。

 DLBCLは比較的進行が速いため、診断されてから数週間以内に治療を始めるのが一般的です。標準的な薬物療法は外来でも可能ですが、初回治療の1コース目は入院し、2コース目以降は外来で実施することが多くなっています。DLBCLの治療は、日本血液学会の「造血器腫瘍診療ガイドライン」などによって標準化されています。標準治療は、現時点で最も効果と安全性が高い治療法です。

DLBCL冊子図8

初回治療の標準治療

 DLBCLの初回治療の標準治療は、R-CHOP療法とPV-R-CHP療法です(図表8)。

 R-CHOP療法は、リツキシマブ(R:商品名リツキサンなど)、シクロホスファミド(C:エンドキサン)、ドキソルビシン(H:アドリアシンなど)、ビンクリスチン(O:オンコビン)、プレドニゾロン(P:プレドニンなど)という5つの薬の併用療法です。

 リツキシマブは、DLBCL細胞の表面にあるCD20というB細胞マーカーを標的にした抗体薬(分子標的薬)です(図表11)。

 シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチンは、従来からある殺細胞性抗がん薬で、3週間に1回点滴か静脈注射(静注)で投与します。プレドニゾロンはステロイド薬で、5日間続けて内服します。リツキシマブは、CHOP療法の前日か当日か翌日に1回、投与します。C、H、Oの点滴にかかる時間は1~3時間です。その後休薬して21日間で1コース、これを6コース繰り返します(図表9)。

 また、PV-R-CHP療法は、ポラツズマブベドチン(PV:ポライビー)と、リツキシマブ(R)、シクロホスファミド(C)、ドキソルビシン(H)、プレドニゾロン(P)の併用療法です。R-CHOP療法のビンクリスチンをポラツズマブ ベドチンに置き換えた治療で、Pola-R-CHP療法と呼ばれることもあります。

 ポラツズマブ ベドチンは、DLBCL細胞の表面にあるCD79bというB細胞マーカーを標的とした抗体と、抗がん薬のモノメチルアウリスタチンE(MMAE)を結合した抗体薬物複合体です。CD79bに結合すると抗がん薬が細胞内に取り込まれて、がん細胞を攻撃し増殖を抑えます(図表11)。

 IPIスコア(「DLBCLの病期(ステージ)」ページ参照)が2~5のDLBCL患者(18~80歳)を対象にした臨床試験では、R-CHOP療法よりもPV-R-CHP療法のほうが治療成績が良好であったと報告されています。安全性もほぼ同等であることから、この臨床試験の結果が発表された2022年以降、PV-R-CHP療法が、IPIスコア2以上のDLBCLの標準治療になりつつあります。

 PV-R-CHP療法では、リツキシマブ、ポラツズマブ ベトチン、シクロホスファミド、ドキソルビシンの点滴(静注)を3週間に1回、プレドニゾロンを5日間内服します。その後休薬し、21日間を1コースとして、6コース繰り返します。R-CHOP療法と同じように、リツキシマブは、PV、C、H投与の前日か当日か翌日に1回投与します(図表10)。

DLBCL冊子図9
DLBCL冊子図10
DLBCL冊子図11

低リスクDLBCLの初回治療

 限局期低リスクの場合は、R-CHOP療法を4コースにし、後半の2コースはリツキシマブのみ投与する方法が選択肢になります。

 IPIスコアが0(予後不良因子なし)で、7.5㎝以上の巨大病変がないDLBCLの患者を対象に、この治療法の有効性と安全性を検証した臨床試験では、R-CHOP療法6コースと比べて治療成績が劣らないことがわかりました。また、限局期低リスクで巨大病変(最大腫瘍径7.5㎝超)がない場合には、R-CHOP 療法3 コースの後に局所放射線療法(「放射線療法について」ページ参照)を行う治療も選択肢になります(図表8)。R-CHOP療法4コース+リツキシマブ2コース、または、R-CHOP療法3コース+局所放射線療法では、抗がん薬治療の回数が減ることによって、感染症、末梢神経障害などの副作用や治療が終了して数年後以降にも起こりうる心筋障害や二次発がんなどの晩期障害(「DLBCLの薬物療法の副作用」ページ参照)の軽減が期待されます。ただし、局所放射線療法にも、肺臓炎、心不全、二次発がんなどの晩期障害が起こるリスクがあることに留意が必要です。

高齢者や併存疾患のある人の初回治療

 高齢者(80歳以上が目安)や併存疾患のある人は、R-CHOP療法のリツキシマブ以外の薬剤を減量して投与するR-miniCHOP療法を実施することもあります。副作用を最小限に抑えつつ完全奏効を目指す治療法です。R-CHOP療法と同じように、3週間に1回リツキシマブとC、H、Oを点滴投与し、プレドニゾロンを5日間服用して1コース。これを6コース繰り返します。

 R-miniCHOP療法を選択するかどうかは、年齢だけではなく、心臓や腎臓、肝臓などの臓器の状態や体力、本人の希望、身の回りのことを自分が行うために最低限必要な「日常生活動作(ADL)」の評価などから総合的に判断します。

 80~95歳の高齢者を対象にR-miniCHOP療法を実施した海外の臨床試験では、CHOPの量を半量に減らしても、50%以上の人は治癒が期待できる状態になったとの結果が出ています。

臨床試験とは?

 新しい薬や治療法の患者に対する有効性や安全性について調べるために行われるのが「臨床試験」です。現在使われている薬や標準治療は、国内外で臨床試験を重ねることで開発され、確立されたものです。

 臨床試験には、初期の安全性や薬物動態などをみる「第Ⅰ相試験」、少数(多くは数十例)を対象に有効性と安全性をみる「第Ⅱ相試験」、数百人を対象にすでに承認されている薬と新薬の候補、あるいは、標準治療と新治療の候補を比較して有効性と安全性をみる「第Ⅲ相試験」の3段階があります。

 臨床試験は医療の発展に不可欠であり、試験への参加は将来の患者さんを助けることになります。また、ある程度よいとわかっている薬や治療法が早く使える利点がある場合もありますが、予期せぬ副作用が出るリスクもあります。臨床試験への参加を検討するときには、試験の段階、目的と方法、利点やリスクをよく確認することが大切です。

原発性縦隔LBCL、高悪性度B細胞リンパ腫・非特定型の初回治療

 肺の間にある縦隔にB細胞リンパ腫が発生する原発性縦隔LBCLや、高悪性度B細胞リンパ腫・非特定型に対しては、DA-EPOCHR療法も選択肢になります。

 DA-EPOCH-R療法では、エトポシド(E)、ビンクリスチン(0)、ドキソルビシン(H)を4日間(96時間)持続点滴した後、シクロホスファミド(C)を点滴投与します。リツキシマブはE、O、H投与の前日か当日か翌日に1回点滴投与し、プレドニゾロン(P)は5日間内服します。21日間で1コース、これを6~8回繰り返します。持続点滴のために入院が必要です。DAはDose Adjustedの略で、投与量の調節を意味します(図表12)。

 高悪性度B細胞リンパ腫・非特定型では、バーキットリンパ腫に対する治療と同じ薬物療法が行われることもあります。

DLBCL冊子図12

脳に病変があるDLBCLの初回治療

 R-CHOP療法やPV-R-CHP療法に用いる薬の多くは脳に届かないため、メトトレキサート(MTX)大量療法、シタラビン(AraC)大量療法など、脳に到達する薬を用いた治療を実施します。

参考資料

もっと知ってほしいびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)のこと 2026年版, p.9-12

BOOKLETびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に関する冊子