治療後の性生活の再開時期

がん治療によって性生活にどのような影響が出るのか、いつからセックスをしてもよいのかは、がん種や治療の内容によって異なります。医療関係者に対しても言い出しにくい話題ですが、セックスは生活の一部であり、性生活への影響もがん治療の副作用の1つです。いつからセックスをしてもよいかは、担当医、あるいは話しやすい看護師などに相談してみましょう。特に、近い将来、妊娠・出産を希望しているカップルは、いつまで避妊をするべきかについても担当医に確認することが大切です。

手術後

乳がんなど、生殖器から離れた部分のがんの摘出手術を受けた場合には、手術の直後からでもセックスの再開は可能です。ただし、手術のあとを圧迫したりこすったりしないよう配慮し、無理のない範囲でセックスを楽しんでください。

子宮頸がんで円錐切除を受けた場合には、1カ月後くらいからセックスが可能です。ただし、手術の影響がなくなり体の状態が元通りになるまでには半年くらいかかるとみられます。妊娠・出産を希望している場合でも、半年間くらいは避妊をしましょう。

男性が前立腺がんや精巣がんなど生殖器のがん、直腸がんや膀胱がんなど骨盤内の臓器の手術を受け、勃起や射精に関わる神経を温存できなかったり手術によって影響が生じたりしたときには、勃起障害や射精障害が生じることがあります。

腹腔鏡手術、あるいは開腹で子宮や卵巣を摘出したのであれば、性生活の再開の目安は、2~3カ月くらいです。男性が胃がん、大腸がんなどで手術を受け、性機能に問題がない場合の性生活の再開時期の目安は、1~2カ月くらいと考えられます。ただし、手術の術式や術後の合併症でも異なりますので、担当医に確認しましょう。

薬物療法

がんの薬物療法の影響は、女性は、抗がん薬治療や乳がんの抗エストロゲン療法中に卵巣機能が低下し、その影響で腟が乾燥し、性交痛を生じやすくなります。性交時に痛みや不安があるときには我慢せずにパートナーに伝え、抱擁するだけにしたり潤滑ゼリーを使ったりしてみてもよいでしょう。

男性は、一般的にあまり抗がん薬の影響は受けず、性機能が正常に保たれていることが多いですが、抗がん薬の種類によっては、治療開始直後に一時的に性欲低下や勃起障害、射精障害を生じ、性生活に支障をきたすことがあります。一方、前立腺がんのホルモン療法では、男性ホルモンの産生が遮断されるため、性欲の低下や勃起障害が生じます。

遺伝毒性がある薬物の治療後は、薬の影響が残ることがあるのため、薬の半減期に女性の場合には6か月、男性の場合は3か月を追加した期間はコンドームを用いて避妊することが求められます。「医薬品の投与に関連する避妊の必要性等に関するガイダンス」(2023年2月)によれば、例えば、乳がんのホルモン療法の場合は治療後9か月とされています。

放射線療法

性器の周辺に放射線照射をした場合以外は、治療直後でも性生活の再開は可能です。ただ、治療による倦怠感、照射部位の皮膚炎や皮膚が黒ずむ色素沈着などによってボディイメージが変化し、セックスをする気になれないこともあります。無理をせず、パートナーに自分の気持ちを伝えるようにしましょう。
性器の周囲に放射線を照射した場合には、おおむね1~3カ月程度が性生活の再開の目安です。皮膚や性器の周囲の組織が硬くなり性機能に影響が出る場合があるので、痛みや不安を感じたら無理をしないようにしましょう。いつ性生活を再開してよいかは、担当医や看護師などに確認することが大事です。

参考資料

・日本性科学会編『性機能不全のカウセリングから治療まで セックス・セラピー入門』(金原出版)
・日本乳癌学会編『患者さんのための乳がん診療ガイドライン2023年版』(金原出版)
日本医療研究開発機構委託研究開発(医薬品等規制調和・評価研究班(代表研究者:鈴木直・聖マリアンナ医科大学産婦人科教授)「医薬品の投与に関連する避妊の必要性等に関するガイダンスについて」(2023年2月 16 日付け薬生薬審発 0216 第1号、薬生安発 0216 第1号厚生労 働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課長、医薬安全対策課長連名通知)