AYA世代のがんと性の悩み

治療後に不妊治療・生殖機能に関する悩みが上位に

AYA(アヤ)世代は、思春期と若年成人を意味する英語「Adolescent&Young Adult」の頭文字を取った言葉で、一般的には15~39歳を指します。この世代は、就学、就職、結婚、出産といったライフイベントが多く、病気であるかどうかに関わらず性や恋愛のことで悩む人が多い時期です。特に、思春期は、家族との信頼関係を築いてきた幼少期から一歩進んで、友人、先輩後輩、恋人を作り、その関りの中でさまざまな葛藤を抱えながら成長していく時期とされます。

厚生労働省の研究班が15~39歳のがん患者213人を対象に実施した「AYA世代がん医療に関する包括的実態調査」によると、治療中は「今後の自分の将来のこと」「学業のこと」「仕事のこと」で悩む人が多く、治療が終わってサバイバーになると、「後遺症・合併症のこと」や「不妊治療・生殖機能に関する問題」を懸念する人が増加します(下表)。

(厚生労働省の「総合的な思春期・若年成人(AYA)世代のがん対策の在り方に関する研究」班(代表研究者・堀部敬三氏)「AYA世代がん医療に関する包括的実態調査」より)

性生活の影響についても相談を

「AYA世代がん医療に関する包括的実態調査」では、「情報が欲しかったが、なかった」項目に「セックスのこと」を挙げた人が46.1%、「結婚のこと」31.0%、「恋愛のこと」は27.7%で、「相談したかったが、できなかった」項目に「セックスのこと」を挙げた人が36.1%、「結婚のこと」は28.6%、「恋愛のこと」は31.2%でした。AYA世代の患者の多くが性や恋愛、結婚に不安を抱えながら、情報や相談先にたどり着けないまま悩んでいることがうかがえます。

認定NPO法人キャンサーネットジャパンでは、2021年、小児・AYA世代を含む10代~60代以上でがんになった人とそのパートナーを対象に、「がん経験者の性生活への影響の評価とセクシュアリティ支援ツールの開発」調査をインターネットで実施しました。この調査の結果では、がんの治療前に比べて性交渉の頻度が「だいぶ減った」人は19.9%、「少し減った」人は6.3%、「現在は全くない」と回答した人が53.7%でした。現在の性生活に、「とても満足している」(9.7%)、「ほぼ満足している」(16.9%)人もいる一方で、「全く満足していない」人は13.0%、「あまり満足していない」人が17.6%と、性生活に不満を抱えている人は少なくありません。

性生活への影響も治療の副作用や後遺症の一つであり、改善が可能な場合もあります。小児・思春期にがんになった場合には、性機能への影響について説明されなかったり、親や医療者に子ども扱いされたりして、つらい思いをしている人もいるかもしれません。年齢に関わらず、性の問題は人には打ち明けにくい悩みですが、一人で抱え込まず、身近な看護師や担当医などに相談しましょう。