小児・思春期のがんと性腺機能への影響

思春期の体の変化

がんの治療は、さまざまな副作用や晩期障害をもたらすことがあります。その一つが、性腺(精巣・卵巣)への影響です。思春期には性腺から女性ホルモン、男性ホルモンが分泌されます。男女とも両方のホルモンが必要ですが、閉経前の女性は女性ホルモン、男性は男性ホルモンが優位に分泌されます。

二次性徴は、思春期に性腺が急激に発達して起こる体の変化で、個人差はありますが、女子は8~9歳くらいから乳房が発達し、陰毛が発育し、初経が来て、この頃に腋毛も生え始めます。男子は、平均的に11歳くらいから精巣(睾丸)が大きくなり始め、その後、陰茎が増大し、陰毛が生え始め、腋毛やひげが生えて声変わりします。がんの治療による性腺発達障害の症状としてあらわれるのが、この二次性徴への影響です。なお、晩期障害とは、治療のために生じる障害のことで、何年も経ってから出現することもあります。

がん治療の二次性徴への影響

がん治療による二次性徴や性機能への影響は、手術・薬物療法・放射線療法など治療内容や治療を受けた時期によって異なります。具体的にどのような影響が生じる可能性があるかは担当医に聞いてみましょう。

性腺発達障害として最も多いのは、二次性徴が遅れたり起こらなかったりすることです。女子では13歳、男子では14歳になっても二次性徴が起こらなければ思春期遅発症である可能性があります。思春期遅発症や性成熟が停止してしまった場合には、性ホルモンを補充する治療を検討します。

二次性徴が順調に来ても、卵巣や精巣ががん治療の影響を受けていると、女性の場合は40歳未満で閉経してしまう早発閉経、男性の場合は無精子症、乏精子症になることもあります。また、脳への放射線照射などによってホルモンの司令塔である下垂体が影響を受けると、甲状腺機能が低下し、月経不順、無月経になることもあるなど、がんの影響は多方面にわたります。二次性徴の遅れや早期閉経は不妊にもつながりますし、性ホルモンは妊娠を希望しない場合でも、性機能や成長に影響を与えます。

一方、幼少期に、ホルモンの分泌に関わる視床下部に放射線を照射したり手術で摘出したりすると、女子では7歳6カ月未満、男子では9歳未満に二次性徴が出現する「思春期早発症」を発症することがあります。思春期早発症の主な症状は、女子では7歳6カ月までに乳房の発育を認める、8歳までに陰毛やわき毛が生える、10歳6カ月までに初経があった、男子では9歳までに精巣が大きくなり始める、10歳までに陰毛が生える、11歳までにわき毛やひげが生えたり声変わりをしたりすることです。なかには、脳腫瘍によって思春期早発症になる人もいます。

思春期早発症が問題なのは、早い段階で大人の体になってしまうために身長の伸びも止まり、大人になったときに低身長になってしまうことです。性ホルモンの分泌を抑える治療をして、思春期の進行を遅らせることもあります。

がん治療はさまざまなホルモンに長期間にわたって影響を与えることがあるので、小児・思春期にがんを経験した人は、長期にわたってフォローアップを受け、「二次性徴が来ない」、「月経が止まった」、「性生活に困ったことがある」など、何か異常を感じたら、担当医や内分泌の専門医に相談し適切な治療を受けることが大切です。性に関わることは恥ずかしくてなかなか親や友人にも話しづらいかもしれませんが、治療ができる場合もありますので、勇気を出して相談してみましょう。