性欲とオルガズム-男性編-

男性の性欲と勃起の仕組み

男性の性欲は、性ホルモンのテストステロンと密接に関係しており、その分泌量が低下すると性欲も減退します。性欲には精神状態、栄養状態や使用している薬も影響します。性欲を低下させる薬の代表例は、前立腺がんの治療に使用される抗アンドロゲン薬、前立腺肥大の治療に用いられる5a還元酵素阻害薬、一部の降圧薬、抗うつ薬などです。一般的に男性の性欲は20代がピークで、加齢とともに徐々に低下していきます。

男性のペニス(陰茎)は、性的興奮が高まると、硬く大きくなって勃起します。勃起が起こるのは、性的興奮による神経シグナルが脳の視床下部から骨盤神経、陰茎海綿体神経へ伝わり、多くの血液がペニスの海綿体に流入して内圧が上がるからです。勃起の指令をペニスに伝える末梢神経は骨盤内にある自律神経で、前立腺がんや直腸がんなどの手術や放射線治療この神経が障害されると勃起が起こらなくなります。また、糖尿病や高血圧などによって動脈硬化が進むと、ペニスの海綿体に血液が流れ込みにくくなり、勃起障害が生じやすくなります。

男性のオルガズムと射精の仕組み

勃起が副交感神経を介しているのに対し、射精は交感神経に制御されています。性的興奮による刺激が、脳から交感神経を介して男性の生殖器に伝わると、精巣、精管、精嚢(せいのう)、前立腺が収縮して、精液が尿道へ送られます。骨盤底筋の収縮によって、蓄積された精液がペニスの先から射精されます。射精後、快楽ホルモンとも呼ばれる脳内物質「ドーパミン」が分泌され、オルガズムに達します。オルガズムは、性的興奮の絶頂期のことで、男性の場合、一般的には射精とほぼ同時に起こります。射精するとペニスの動脈、ペニスの海綿体の平滑筋が収縮し、血液の流出量が増えペニスは萎縮して軟らかくなります。

男性の性機能は、脳、神経、血液循環、ホルモンの状態などの相互作用によって成り立っており、がんやがんの治療によってどこかの機能が障害されると、勃起不全(ED)などの性機能障害が生じます。病気への不安や自信喪失など精神的なことも性機能の低下に影響します。

参考サイト・参考文献

日本泌尿器科学会「こんな症状があったら-勃起力が低下した」
・MSDマニュアルプロフェッショナル版「男性性機能の概要」
・MSDマニュアル家庭版「男性の性機能障害の概要」
・「Neurotransmission and the contraction and relaxation of penile erectile tissues」World J Urol. 1997;15(1):14-20.