Zoomとマインドフルネスでがんサバイバーのセクシャルヘルスを支援

オハイオ大学が小規模研究結果を報告

がん治療により性的な活動に影響を受ける人は沢山います。手術や化学療法などによる外見の変化から心理的に自信を無くしてしまったり、ホルモンの変化で性欲そのものが低下してしまったり。米国ではこうしたセクシャルヘルスの問題についても、積極的に医療従事者と相談しながら対応するように呼びかけてきましたが、宗教的、文化的な背景から性的な話題がタブー視されてきた経緯もあり、実際にはセクシャルヘルスについて話すのに躊躇する人が多いのが現状です。

オハイオ大学の研究者は、治療後にこうしたセクシャルヘルスの問題に直面することの多い乳がんと婦人科がんのサバイバーを対象に、オンラインでマインドフルネスを使った介入が現実的かどうかを小規模グループで試してみました。

マインドフルネスでは、先入観や判断にとらわれることなく、意図的に意識を今現在の感覚や経験に集中します。その瞬間に経験している身体的、精神的、感情的な状況に注意を払い、受け入れ、気づきを得ることで、各人が状況や問題に振り回されるのではなく、自分の考え方や感情をコントロールしやすくなると考えられています。このため米国では、認知行動療法や心理療法などにとりいれられています。

この試験でも22人のがんサバイバーが、マインドフルネスを活用した8週間のプログラムを経験しました。具体的にはZoomで訓練を受けたファシリテーターが行う1時間30分から2時間の週一回のグループミーティングで、セクシャリティ関する話し合いをしたり、ガイド付き瞑想をしたりしました。また日常生活でマインドフルネスの訓練をしたり、セクシャリティについて考える「宿題」もありました。

参加者の約4分の3の人はマインドフルネスのプログラムについて、「感情や行動がいかにセクシャルな興味に影響するかを学べた」、「がん経験がいかに性的な心配事と関連しているかを考える機会になった」などの前向きな報告をしています。またグループミーティングについても、大部分の参加者が「セクシャリティについて悩んでいるのは自分だけじゃないとわかって良かった」と評価する一方で、オンラインだとつながりを感じにくいといった声や、よく話す人、気後れする人など発言者に偏りがでるなどの問題もありました。

この研究を行ったオハイオ大学のジェシカ・ゴーマン准教授は、「がん患者やサバイバーで性的な機能不全を経験する人は本当に多く、何もしないままで良くなることはあまりありません。孤独感の中であきらめてしまっている人も多いのです」と言います。また同教授は、こうした状況の改善に役立てるべく、今後はより多くの人を対象にオンラインを使った介入に効果があるか研究を続けていく予定だそうです。

なおこの研究は、2022年5月に国際性機能学会が発行する医学誌「ジャーナル・オブ・セクシャル・メディシン」で報告されました。

参考にしたリンク
OSU study: Zoom-based mindfulness group proves feasible intervention for post-cancer sexual health | Oregon State University
Feasibility of Mindful After Cancer: Pilot Study of a Virtual Mindfulness-Based Intervention for Sexual Health in Cancer Survivorship – The Journal of Sexual Medicine (jsexmed.org)

翻訳・執筆 片瀬ケイ(一般社団法人 日本癌医療翻訳アソシエイツ:JAMT)