勃起障害5-EDとパートナーシップ

ED(勃起障害・勃起不全)とパートナーシップ

ED(勃起障害・勃起不全)の有無を診断する上で、受診の際に必ず聞くことは「マスターベーションができるかどうか」です。マスターベーションができるのに、勃起機能に異常があるということはありえません。マスターベーションができる、つまり射精できるということは、陰茎に血流が流れている証です。マスターベーションはできるのに、パートナーとの性交渉でEDになっているのであれば、何らかの理由があります。

たとえば、器質的に問題がなくても、性生活に対するプレッシャーや心理的不安から妻とのセックスの際には勃起できないというケースに出会うことがあります。性交渉において支配する立場にあると認識している男性は多く、一度勃起ができないと自尊心が失われます。その結果、性交渉のたびごとに焦りが増し、ストレスがたまり、持続的なEDが生じてしまうのです。

勃起は副交感神経が交感神経よりも優位でないと起きません。恐怖や緊張などで交感神経が優位だと勃起ができないメカニズムになっているのです。性交渉の際にプレッシャーをかけられると交感神経が優位になってしまい、ペニスは言うことを聞かず、勃起不全に陥るわけです。

前立腺がん患者では治療が原因で生じるEDが多く、状況が異なりますが、一般的には若年性のEDは、心因性のものが多く、パートナーへの教育が功を奏する可能性が高いという傾向があります。たとえば、パートナーが妊娠等を強く希望した際に、「このタイミングでお願いします」というように、男性に性交渉を強要してしまうということは、よく聞かれる話です。男性は、性的に興奮するような動画を観るなどの性的刺激があれば、いつでもどこでも勃起して射精できると誤解している女性は少なくありません。そこで、勃起をしない男性に対し「何か異常があるのでは?」「病気では?」と疑い、「病院に行って、診てもらったら?」という流れから、受診に至ります。そんなふうにやってくるカップルの女性に、男性が勃起するまでには長い工程を踏まなくてはならず、そう簡単に勃起が完成するわけではないことを説明することには意義があります。「病気ではないのなら、私が悪いのですか?」という反応も診察室でよく見られる光景の一つですが、神経学的なことも含めて丁寧に説明していくと、女性の意識が大きく変わることがあります。一例として、「先生に言われて、主人は温泉が好きなので、温泉へ行ってきました。リラックスした雰囲気の中で、マッサージをしたり、触れ合ったり、初めて、満足な性交渉が体験できました」と、それ以来受診して来なくなったケースもあります。

性別を問わず、環境が伴わなければ、自然な勃起や射精、またオーガズムを得ることはできません。つまり、リラックスした状態を作り上げないことには、ふたりのゴールは達成できないのです。そこで、患者さん本人だけでなく、患者さんと性を共にするパートナーもともにカウンセリングを受けることが、心因性のEDにとって重要です。