がん治療に伴うボディイメージの変化

がん治療は、ときに、ボディイメージの変化をもたらします。乳房の切除を始め、抗がん剤による脱毛やストーマ造設、手術の創やリンパ浮腫のように外見の変化を伴うものもあれば、子宮・卵巣の摘出のように、一見外見上の変化は伴わなくとも、女性として象徴的な臓器を失うことから生じるものもあります。もちろん、個人差は大きいものですが、ボディイメージの変化に伴い、喪失感を抱く患者さんは少なくありません。ひいては女性である自分というアイデンティティにまで影響することがあります。

ボディイメージへの影響が大きいものの一つが乳房です。乳房温存手術という方法もありますが、たとえ乳房を温存できたとしても、変形や放射線治療後の変化によって、喪失感を感じることもあります。一方で、乳房を全摘したとしても乳房再建術で再建するという選択肢もあります。ただし、再建後にイメージと異なることもあります。再建術をしなくても、パッドや下着などで工夫したり、エピテーゼと呼ばれる取り外し可能な人工乳房を利用したりして、いままで通りの生活を楽しむこともできます。

また、子宮や卵巣を摘出することは、喪失感とともに、将来の妊娠・出産への影響が避けられません。(※妊孕性に関しては、詳しくは「がんと妊孕性」へ。子宮・卵巣の摘出に伴う各性機能障害に関しては、詳しくは各記事をご覧ください。)

治療に伴うボディイメージの変化は、あなたにアイデンティティをも問いかけてくるかもしれません。恋人や友人関係などの人間関係にも影響し、恋愛や結婚にポジティブになれないこともあるでしょう。でも、誰かに恋するドキドキやセックスの楽しみが失われるわけではないということは、ぜひ頭の片隅に覚えておいてください。

~Patient’s Voice ~

乳がんと診断された時、手術などの治療により今後も生活を続けることは可能とはいえ、乳房を失うことで女性としてのアイデンティティが失われるのではないかと、なかなか手術を受ける決心がつきませんでした。そんな時に乳房を再建した患者さんの写真集を見て、乳房再建を知り、治療に前向きに取り組むことができるようになりました。

乳房を切除した喪失感を味わうことが怖かったため、同時再建を選択しました。術後も定期的に形成外科に通院することで、ケアをしっかり行い、合併症などのリスクや不安を減らすことができたので、再建してよかったと感じています。

乳房を失えば女性でなくなるわけではありません。乳房を再建しなくても自分らしく女性らしく生きることはできます。また、自分は気にならなくても温泉などでの他人への影響を考え、その時だけエピテーゼを使用するということもできます。ただ人の価値観はさまざまなので、視覚的なボディイメージがセクシュアリティに影響を与えることもあるでしょう。乳がん手術後のQOLを向上させる選択肢は増えているので、自分に合った方法を見つけることが大切だと思います。