がんとセックスと性感染症

主な性感染症

近年、増えている性感染症には、梅毒、淋菌感染症・性器クラミジア感染症、性器ヘルペスウイルス感染症などがあります。梅毒は、痛みのない潰瘍ができ、放置していると全身の発疹やリンパ節の腫れなどを生じる性感染症です。妊婦が感染すると死産や胎児の重篤な異常につながることがあります。淋菌感染症・性器クラミジア感染症は、感染しても無症状のことが多いものの、気づかず放置していると不妊の原因になることがあります。性器ヘルペスウイルス感染症は、性器に痛みを伴う水泡を発生させます。

性器やその周辺のかゆみ、女性ではおりものの増加や下腹部の痛み、男性では尿道からの分泌物や不快感があったら、婦人科や泌尿器科などを受診しましょう。

また、HIV・エイズも怖い性感染症の一つです。性感染症の早期発見のためには、パートナーが変わったら、性感染症の検査を受けにいくとよいでしょう。HIV、梅毒、淋病・クラミジアなどの検査は、最寄りの保健所などで、無料で受けられます。匿名での検査受診も可能です。

ヒトパピローマウイルス(HPV)とがん

がんと関連するウイルスの一つには、子宮頸がん、肛門がん、中咽頭がんなどを引き起こすヒトパピローマウイルス(HPV)があり、主に性的行為を介して感染します。HPVは、性体験のある人であれば、性別を問わず誰でも感染するリスクのあるウイルスです。そのため、セックスをしたことのある相手が生涯たった1人だったとしても、感染する可能性があります。HPVは、性器にいぼができる尖圭(せんけい)コンジローマの原因にもなります。

子宮頸がんなどHPV関連がんになったときには、自分やパートナーを責めたり責められたりと、パートナーとの関係がぎくしゃくすることがあります。しかし、多くの人がもっているウイルスであり犯人捜しをすることにあまり意味はありません。また、子宮頸がん検診でHPVに感染していることが分かったとしても、セックスを手放す必要もありません。

子宮頸がんの発症は、HPVワクチンで予防ができます。小学6年生から高校1年生までは公費での接種が可能です。国によるHPVワクチンの積極勧奨が停止していた期間に公費でのワクチン接種を受けなかった1997年4月2日~2006年4月1日生まれの女性も2025年3月までは公費でキャッチアップ接種が受けられます。それ以外の世代でも、まだHPVに感染していないのであれば、自費でのHPVワクチンの接種を検討してみてもよいかもしれません。

がん検診で早期発見すれば命に関わらないことも多いがんであり、20歳以上の女性は、定期的に子宮頸がん検診を受けることも大切です。がんの原因となるHPVにはたくさんの種類があり、HPVワクチンはその感染を100%予防するものではないので、ワクチン接種を受けた人も子宮頸がん検診を定期的に受ける必要があります。

ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)とがん

HTLV-1は、成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)などの発症の原因となるウイルスです。HTLV-1感染者(キャリア)から発症しますが、大部分は無症状のまま経過します。主な感染経路は、母子感染ですが、まれに継続的な性行為でも感染することがあります。性行為よる感染は、精液中にあるHTLV-1感染細胞を介して起こることが多いと考えられています。ただし、キャリアであることが分かっている人とセックスをする場合でも、コンドームをすれば感染をほぼ防ぐことができます。不安や心配なことがあったら、厚生労働省の「HTLV-1総合対策」推進におけるキャリア対策の基盤整備と適正な研究開発の推進に資する包括的評>価と提言のための研究」班が開設している「HTLV-1キャリアのための電話相談(https://htlv1.jp/telcounseling/)」を利用してみましょう。

参考サイト

厚生労働省「性感染症」

厚生労働省「HPVワクチンに関するQ&A」

HTLV-1情報ポータルサイト HoTLiVes