がん医療の連携

    監修者 濃沼信夫(東北医科薬科大学医学部 教授)

    「医療連携」「地域連携」という言葉が、医療のキーワードとなっています。これは、地域の医療機関が協力して患者さんの健康をサポートしていこうとする考え方です。現在、がん診療についても連携体制の整備が進められています。

    がん診療は「がん診療連携拠点病院」を中心とした連携で

    がん医療で、この「医療連携」「地域連携」の中心となるのが、がん診療連携拠点病院です。どこに住んでいても質の高いがん医療が受けられるよう、全国に、(1)都道府県がん診療連携拠点病院 51施設、(2)地域がん診療連携拠点病院 325施設、(3)特定領域がん診療連携拠点病院 1施設、(4)地域がん診療病院 43施設があります。また、年齢が15歳未満の患者には小児がん拠点病院は15施設が指定されています。

    ●がん診療拠点病院の連携

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    都道府県がん診療連携拠点病院(PDF)は、各都道府県に1~2施設が設置されています。質の高いがん医療を担うとともに、地域がん診療連携拠点病院に対して情報提供や診療支援を行ったり、都道府県内でがん医療に携わっている医師や看護師らに対して研修を実施するなど、都道府県単位でのがん医療のリーダーとしての役割を果たしています。例えば、県立のがんセンター、大学病院、国立病院機構や都道府県立の中核的な病院、などです。

    地域に密着、地域がん診療連携拠点病院

    地域がん診療連携拠点病院は、都道府県で一般的な医療が完結する2次医療圏に原則1ヵ所指定されています。全国に325病院が地域がん診療連携拠点病院に指定されており(令和元年7月21日現在)、どの地域に住んでいても、比較的身近なところで専門のがん治療が受けられるような仕組みとなっています。すなわち、地域がん診療連携拠点病院は地域に密着したがんの専門病院であり、次のような機能・体制を有しています。

    ■地域がん診療連携拠点病院の機能や体制

    (1) 専門的な知識・技能を持つ医師、医療従事者がいる。
    (2) 抗がん剤を使った化学療法が提供できる。
    (3) 緩和ケアチームがあり、緩和ケアが提供できる。
    (4) 地域の医療機関と連携・協力するための地域連携クリティカルパス(共同診療計画表など)を作成している。
    (5) セカンドオピニオンを提示する体制ができている。
    (6) 敷地内禁煙を実施している。
    (7) がん相談支援センターを設置している。
    (8) 院内がん登録を実施している。

    地域がん診療連携拠点病院は、2次医療圏内の医療機関からの紹介でがん患者さんを受け入れるとともに、患者さんの治療・治癒の状態に応じて地域の医療機関と適切な連携を取ります。また、地域の医療機関に対する診療上の支援、医療従事者に対する研修なども行います。

    地域がん診療病院 拠点病院のない2次医療圏で基本的がん診療を行う病院。
    地域がん診療病院一覧(PDF)
    特定領域がん診療連携拠点病院 特定のがんに高い診療実績を持ち、都道府県内で拠点的な役割を果たす病院。
    特定領域がん診療連携拠点病院一覧(PDF)

    小児がん拠点病院

    小児がんの新規患者数は年間約2,000~2,500人と推測され、小児の死因の第1位となっています。この理由として小児がんが多種多様であることや、小児がんを扱う医療機関が200程度と少ないことから、適切な治療を受けられていない状況が考えられています。

    現在、小児がん中央機関として国立成育医療研究センターと国立がん研究センターの両施設が指定され(平成26年2月)、小児がん拠点病院は全国15ヵ所が指定されています(平成25年2月現在)。小児がん中央機関および小児がん拠点病院は小児のがんに対する医療や支援を提供するとともに、患者さんを長期にわたってフォローアップします。また、地域全体の医療の質を向上させる役割も担っています。

    がん診療連携拠点病院で治療を受けるには

    がん診療連携拠点病院は、その名称の中に「連携」があるように、原則として地域の医療機関からの紹介によって、がん患者さんを受け付けています。自分で「がんかもしれない」と思ったら、まずはかかりつけ医か、がん診療連携拠点病院に設置されているがん相談支援センターに相談してみましょう。かかりつけ医は必要に応じて、がん診療連携拠点病院などに紹介してくれることでしょう。

    また、いわゆる人間ドック、がん検診などで、がんの疑いがあることがわかり、「要精検」とされることがあります。この場合は、人間ドックやがん検診を実施している医療機関・健診(検診)機関の指示・紹介に従いましょう。

    緩和ケア

    がん診療連携拠点病院では緩和ケアを受けられます。

    緩和ケアとは、「生命を脅かす疾患による問題に直面している患者とその家族に対して、痛みやその他の身体的問題、心理社会的問題、スピリチュアルな問題を早期に発見し、的確なアセスメントと対処を行うことによって、 苦しみを予防し、和らげることで、QOLを改善するアプローチである」(WHO:世界保健機関より)とされています。そのため、緩和ケアは精神心理的、社会的苦痛を含めた全人的な対応が必要であり、その対象者は、患者のみならず、その家族や遺族も含まれています。

    つまり、緩和ケアとは、終末期に行う“鎮痛療法”といったレベルのものではなく、身体だけでなく心(精神面)のケアも含めて、また患者だけでなく家族も含めて、早期から取り組むべきものなのです。

    また、「がん対策推進基本計画」では、緩和ケアについて、例えば「がん診療連携拠点病院を中心に、医師をはじめとする医療従事者の連携を図り、緩和ケアチームなどが提供する専門的な緩和ケアへの患者とその家族のアクセスを改善する」など、患者の視点に立って、チーム医療や専門性を重視した施策を打ち出しました。

    それを踏まえて、厚生労働省では平成26年1月、がん診療連携拠点病院の指定要件を改定しました。同拠点病院では、緩和ケアに関して、次のような提供体制が要求されています。

    (1) 苦痛のスクリーニングの徹底

    すべてのがん患者に、診断時から、外来および病棟で、苦痛のスクリーニングを行う。

    (2) 苦痛への対応の明確化と診療方針の提示

    緩和ケアに関する診療方針を、必ず、患者・家族に提示する。

    (3) 緩和ケアチームの看護師による外来看護業務の支援・強化

    緩和ケアチームの看護師は「がん看護専門看護師」、「緩和ケア認定看護師」、「がん性疼痛看護認定看護師」のいずれかで、患者に対するカウンセリングなどを行う。

    (4) 迅速な苦痛の緩和

    主治医が外来診療などに携わっていて対応できないときは、緩和ケアチームの医師が医療用麻薬を処方するなど、迅速で柔軟な対応をする。

    (5) 地域連携時の症状緩和

    症状緩和に関する地域連携パス、マニュアルなどを整備する。

    なお、厚生労働省では、それらの施策の一環として、主として都道府県がん診療連携拠点病院において、緩和ケアチーム、緩和ケア外来、緩和ケア病棟等を有機的に統合した「緩和ケアセンター」の設置を進めています。「緩和ケアセンター」は①がん看護専門看護師、がん看護関連の認定看護師などによる定期的ながん看護カウンセリング(がん看護外来)を行う、②緊急緩和ケア病床を確保している、緊急入院体制が整備できている、③地域の病院、在宅療養支援診療所などの診療従事者と緩和ケアにおける連携協力に関するカンファレンスを定期的に開催している、④がん相談支援センターとの連携を図り、がん患者・家族に対し、緩和ケアに関して高次の相談支援を提供する、⑤緩和ケアに関する院内研修会を開催する――など、都道府県において、緩和ケアについて中心的かつ指導的役割を果たすことになります。

    がん相談支援センターを活用しましょう

    がん診療連携拠点病院にはがん相談支援センターが設置されています。「患者総合支援センター」など、「がん相談支援センター」以外の名称が使われている場合もありますが、ここには、2名以上の専門スタッフがいて、様々な患者さんの相談に応じています。

    ■がん相談支援センターでの相談事例

    1. がんの病態、標準的治療法等がん診療およびがんの予防・早期発見等に関する一般的な情報の提供
    2. 診療機能、入院・外来の待ち時間及び医療従事者の専門とする分野・経歴など、地域の医療機関及び医療従事者に関する情報の収集、提供
    3. セカンドオピニオンの提示が可能な医師の紹介
    4. がん患者の療養上の相談
    5. 地域の医療機関及び医療従事者等におけるがん医療の連携協力体制の事例に関する情報の収集、提供
    6. 小児がん中央機関および拠点病院に子どもが入院した際の長期滞在施設に関する情報提供
    7. アスベストによる肺がん及び中皮腫に関する医療相談
    8. その他相談支援に関すること

    がん相談支援センターは、がん診療連携拠点病院の患者さんではない一般の方でも利用でき、電話相談などにも応じてくれます。国は、患者さんやご家族への支援体制として、がん相談支援センターを利用することを勧めています。がんに関して気になることや、知りたいことがあれば、気軽にがん相談支援センターを活用するとよいでしょう。

    参考資料

    セカンドオピニオン

    がん治療を納得して受けるための1つの手段として、セカンドオピニオンがあります。セカンドオピニオンを直訳すると「第2の意見」ですが、がん医療におけるセカンドオピニオンとは、主治医とは別の医療機関の医師に意見を求めることです。

    がん診療連携拠点病院には、セカンドオピニオンを提供(提示)できる体制があり、がん診療連携拠点病院内にあるがん相談支援センターの業務の1つとして「セカンドオピニオンの提示が可能な医師の紹介」が規定されています。セカンドオピニオンを希望する患者さんは、がん診療連携拠点病院のがん相談支援センターに相談することをおすすめします。

    セカンドオピニオンからの意見は、当日あるいは後日に文書で知らされます。セカンドオピニオンの意見を主治医に伝えて今後の治療方針について主治医と相談して結論を出すようにしましょう。

    セカンドオピニオンを得るために他の医療機関を受診する場合、これまでの検査結果や治療情報を提供できれば、短時間で有意義なセカンドオピニオンが得られます。

    もし、主治医に対してセカンドオピニオン用の診療情報の提供をお願いした場合、約5,000円の医療費が必要となります〔「診療情報提供料(Ⅱ)」(500点)〕。ただし、これには医療保険が適用されますので、患者さんの自己負担は1,500円程度となります。

    しかし、その診療情報を持ち、セカンドオピニオンを求めて訪れた医療機関では、セカンドオピニオンは原則として医療保険の適用とはなりません。つまり、セカンドオピニオンは、いわゆる自費診療です。

    セカンドオピニオン外来の料金は、だいたい、次のようなものです。

    • 大学病院やがんの治療で有名な民間病院は、30分で2~3万円(税別)という料金が中心。30分延長ごとに1万円(税別)が追加される場合があります。
    • 公的病院の場合は、30~60分で5000円~1万円(税別)程度です。

    (インターネットでの検索に基づく:2015年1月調査)