TBS「余命1ヶ月の花嫁・乳がん検診キャラバン」の
内容見直しを求める要望書提出について

2010年6月9日、TBSが20代・30代の女性を対象に行っている乳がん検診キャラバンについて、その年代の女性に対するマンモグラフィー検診ならびに超音波(エコー)検診は有効性が確認されていないとし、内容の見直しを求める要望書を同社に送りました。

要望書を送ったのは、乳がん経験者、医療関係者、がん患者支援者、ジャーナリストなどからなる有志38名です。TBSにキャラバン実施内容の再考を求めると同時に、今後若年性乳がんと闘う人々の希望につながるような研究・開発、啓発活動が展開されることを願って、質問状を添えた要望書を提出させていただきました。

このホームページはその内容と、TBSからいただく予定の回答を、広く皆さまにご覧いただくために開設したものです。



内容目次




更新履歴

2010/08/04 TBSから頂戴した回答書への返答をアップいたしました
2010/07/28 TBSから頂戴した回答書への対応ですが、8月9日までに有志38名の返答をTBSに送付します。その内容はこのHPにもアップいたします
2010/07/14 TBSから頂戴した回答書について、現在関係者で協議を続けています。今後進むべき方向について十分検討の上、近日中にその結果をこちらにご報告します
2010/07/10 TBSから届いた回答書をアップしました
2010/07/09 TBSより回答書を個別に郵送した旨、ファックスをいただきました。FAX送付状添付資料:要望の根拠についてのPDFファイル
2010/07/07 月刊「創」8月号に『善意のキャンペーンに思わぬ展開が… TBS「余命1ヶ月の花嫁」乳がん検診キャラバンへの疑問』が掲載されました
2010/07/02 日経メディカルオンラインに『40歳代のマンモ検診不要論、米国ではメリットよりデメリットを重視』が掲載されました
2010/07/01 週刊文春(7月8日号)に『TBS「乳がん検診キャラバン」は即刻中止せよ』が掲載されました
2010/06/21 脳外科医ShinNakajima先生のBlog「ニコニコ外来」に『余命1ヶ月の花嫁』が掲載されました
2010/06/17 ZAKZAKに『宣伝? カネ儲け? 朝日vsTBS“乳がん”バトル』が掲載されました
2010/06/16 DAILY YOMIURI ONLINEに『Do young women need breast cancer checks?』が掲載されました
2010/06/11 yomiDr/ヨミドクター(読売新聞)に『乳がん検診 若い人は必要?』が掲載されました
2010/06/10 TBSに『朝日新聞の記事に対する見解』が掲載されました
2010/06/10 asahi.com(朝日新聞社)に『番組きっかけの乳がん検診 TBSに医師らが中止要望』として取り上げられました
2010/06/09 要望書提出、本HP開設


プレスリリース

2010年6月9日

報道関係各社 / 医療関係各社 各位

乳がん経験者、医療関係者ら38名が
TBS「余命1ヶ月の花嫁・乳がん検診キャラバン」について
内容見直しを求める要望書を提出!

TBSが20代・30代の女性を対象に2008年から行っている乳がん検診キャラバンについて、その年代の女性に対するマンモグラフィー検診ならびに超音波(エコー)検診は有効性が確認されていないとし、本日、2010年6月9日、有志38名が、内容の見直しを求める要望書を同社に送りました。

がん検診は、早期発見によってがんで亡くなる人を減らす効果があると証明されたものでなければ、過剰診断など受診者に不利益ばかりを与えてしまう恐れがあります。

若年層の検診に関わる科学的根拠が明らかになり、世界的にもガイドラインなどが見直されつつあるなか、我が国においては、がんの啓発運動が高まりを見せる一方で、がん検診を科学的根拠に基づいて行う必要性が十分に理解されていません。年齢に応じた検診受診の啓発など、国民に向けて正しい情報が広く発信されていないのは憂慮すべき事態です。

本要望書は、TBSにキャラバン実施内容の再考を求めると同時に、今後若年性乳がんと闘う人々の希望につながるような研究・開発、啓発活動が展開されることを願って提出されたものです。

要望書を提出したのは、乳がん経験者、医療関係者、がん患者支援者、ジャーナリストなどからなる有志38名。がん医療を取り巻くさまざまな立場の人間が、1つの問題に対して共に声をあげたという点でも注目されます。

【配付資料】
 ・要望書(2枚)
 ・公開質問状(1枚)
 ・要望の根拠に関する添付資料(3枚)  (計6枚)

【プレスリリースに関する問い合わせ先】
 NPO法人キャンサーネットジャパン内
 「余命1ヶ月の花嫁・乳がん検診キャラバン」の内容見直しを求める要望書提出担当者
 〒113-0034 東京都文京区湯島1-6-8 中央自動車ビル7F
 電話:03-5840-6072 ファックス:03-5840-6073
 E-mail:kenshinyoubou @ gmail.com
 要望書は下記ホームページにて公開中
 http://www.cancernet.jp/kenshin/index.html

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2010年6月9日

株式会社東京放送ホールディングス
代表取締役社長 財津 敬三 様

「余命1ヶ月の花嫁・乳がん検診キャラバン」の
内容見直しを求める要望書

謹 啓

向暑の候、貴社ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。貴社の乳がん・若年性乳がんに対する継続的な啓発活動への取り組みに、深い敬意を表します。

さて、貴社が2008年から開始した「余命1ヶ月の花嫁・乳がん検診キャラバン」が、2010年も実施されると、キャラバン事務局のホームページに掲載されています。

キャラバンの開始以来、対象は20代・30代の女性限定とされ、2008年・2009年のマンモグラフィー検診に続いて、今年は超音波(エコー)検診が行われるとのこと。その内容に、われわれ、乳がん経験者、患者支援団体、医療関係者などからなる有志一同は深い懸念を抱いています。

20代・30代の若年者を対象とした検診目的のマンモグラフィー検査および超音波検査には、有効性を示す科学的根拠がありません。また、検診は必ずなんらかの不利益を伴うため、有効性が不明な検診は不利益だけを増大させる恐れがあります。科学的根拠のないこうした医療活動を、本来視聴者、ならびに国民に対する正しい情報の発信を責務としているはずのテレビ局が行うことは、倫理上きわめて問題が大きいと考えます。

若年性乳がんに対する有効性の確認された検診方法はいまだなく、乳がんの治療方法についてもさらなる進歩が期待されるなか、研究開発の推進が今後不可欠です。貴社の乳がん啓発プログラムがこれらに一層貢献、寄与されることをわれわれ一同は切に望んでおり、そのための協力は惜しまない所存です。

つきましては貴社が行う乳がん検診キャラバンの内容を見直し、検診実施の中止を含め、活動内容を再検討いただきたく、ここに強く要望いたします。また、別紙に質問状を添付いたしますので、ご回答をたまわりたく、よろしくお願い申し上げます。

末筆ながら貴社のますますのご繁栄をお祈り申し上げます。

謹 白



代表連絡先
NPO法人キャンサーネットジャパン内
「余命1ヶ月の花嫁・乳がん検診キャラバン」の内容見直しを求める要望書提出担当者
〒113-0034 東京都文京区湯島1-6-8 中央自動車ビル7F
電話:03-5840-6072 ファックス:03-5840-6073
E-mail:kenshinyoubou @ gmail.com


青谷 恵利子(北里大学臨床薬理研究所 臨床試験コーディネーティング部門 部門長)
有吉 寛 (愛知県がんセンター愛知病院 名誉院長/悪性リンパ腫サバイバー)
池田 正 (帝京大学医学部外科学 教授)
岩瀬 哲 (NPO法人キャンサーネットジャパン 理事長)
岩本 ゆり(医療コーディネーター 看護師)
上野 直人(The University of Texas MD Anderson Cancer Center, MDアンダーソンがんセンター教授/悪性組織性繊維球腫サバイバー)
植村 めぐみ(がん患者会シャローム代表)
内田 絵子(NPO法人ブーゲンビリア 理事長/乳がんサバイバー)
大橋 靖雄(東京大学大学院医学系研究科生物統計学 教授/NPO法人メディカルライター協会 理事長)
勝俣 範之(国立がん研究センター中央病院腫瘍内科)
唐澤 久美子(順天堂大学医学部放射線医学講座 先任准教授)
川上 祥子(NPO法人キャンサーネットジャパン 理事)
久保井 摂(福岡県弁護士会(九州合同法律事務所) 弁護士)
古賀 眞美(Patient Advocate Liaison代表)
後藤 悌 (東京大学大学院医学系研究科呼吸器内科学)
小西 敏郎(NTT東日本関東病院 副院長/胃がん・前立腺がんサバイバー)
西條 長宏(近畿大学医学部腫瘍内科 特任教授)
桜井 なおみ(NPO法人HOPEプロジェクト 理事長/KMaCS/乳がんサバイバー)
佐治 重衡(東京都立駒込病院乳腺外科 非常勤医員)
清水 哲 (地方独立行政法人神奈川県立病院機構 神奈川県立がんセンター乳腺内分泌外科 部長)
鈴木 育宏(東海大学外科学系乳腺・内分泌外科 准教授)
下妻 晃二郎(立命館大学総合理工学院生命科学部生命医科学科 教授)
滝口 裕一(千葉大学大学院呼吸器内科学 准教授)
田嶋 ティナ 宏子(白百合女子大学文学部 准教授)
田所 多佳子(日本癌医療翻訳アソシエイツ/KMaCS)
円谷 彰 (神奈川県立がんセンター消化器外科 部長)
坪井 正博(神奈川県立がんセンター呼吸器外科)
寺田 真由美(KMaCS(もっと知ってほしい「がん検診」のことプロジェクト)/乳がんサバイバー)
鳥集 徹 (ジャーナリスト)
中村 清吾(昭和大学医学部乳腺外科 教授/昭和大学病院 ブレストセンター長)
南雲 吉則(医療法人社団ナグモ会ナグモクリニック 総院長)
野村 久祥(杏林大学医学部付属病院薬剤部 がん指導薬剤師・がん専門薬剤師)
増田 美加(女性医療ジャーナリスト/乳がんサバイバー)
向井 博文(国立がん研究センター東病院化学療法科)
柳澤 昭浩(NPO法人キャンサーネットジャパン 事務局長/KMaCS)
山崎 多賀子(美容ジャーナリスト/乳がんサバイバー)
吉田 和彦(東京慈恵会医科大学外科学教授・青戸病院副院長、外科部長)
渡辺 古志郎(横浜市立市民病院 名誉院長)

(以上、計38名)

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2010年6月9日

「余命1ヶ月の花嫁・乳がん検診キャラバン」に関する
公開質問状

「余命1ヶ月の花嫁・乳がん検診キャラバン」が、20代・30代の女性を限定に乳がん検診を行っている問題をめぐり、以下の4点について質問させていただきたく存じます。

  1. 2008年から20代・30代の女性を対象にマンモグラフィー検診を行ってきた科学的根拠と、医学的助言・監修の取得先をお教えください。
  2. 2010年も当初はマンモグラフィー検診が行われる予定でしたが、5月25日頃、突如マンモグラフィー検診の記述が削除され、すべて超音波(エコー)検診に変更されました。マンモグラフィー検診を取りやめた理由と、20代・30代の女性を対象に超音波検診を行う科学的根拠をお教えください。
  3. 今後はどのような活動を行っていくのか、これからもマンモグラフィー検診および超音波検診を続けるのか、20代・30代の女性にどのような情報とメッセージを発信していくのか、将来的な活動展開に対するお考えをお聞かせください。
  4. 今後も何らかの医療活動を継続される場合、科学的根拠に基づいて情報を提供していくのか、また、医学的なアドバイザリー・ボードを置く予定はあるか、その場合どのような方を指名なさるか、お考えをお聞かせください。

以上4点につきまして、7月9日までにご回答いただきたく、お願い申し上げます。

なお、この質問状と要望書の内容、ならびにいただいたご回答は、以下のホームページにて公開させていただきます。

http://www.cancernet.jp/kenshin/index.html

以 上

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2010年6月9日

添付資料:要望の根拠について

1.がん検診の有効性とは

がん検診は、それによって、がんが他臓器に転移するなど進行してしまう前に早期発見し、がんで亡くなる人を減らせる(死亡率が低下する)ことが証明されたとき、その有効性が確立されます。早期にたくさん見つけられる(発見率の増加)だけでは、必ずしも亡くなる人が減るとは限らず、検診として有効とは言えません[1]

ある検査方法が検診として有効かどうか判断するのにもっとも信頼がおけるのは、大規模なランダム化比較試験の結果です。検診を受けるグループと受けないグループに分けて比較し、本当に亡くなる人が減るかどうか、長期間にわたって追跡調査して検証します[2]。それによって証明される利益が、不利益を上回る場合、その検診は推奨されます。

2.がん検診の不利益とは

いかなる検診も不利益を伴います。検査を受けることによって生じる不安やストレスのほか、検査によっては苦痛や合併症、放射線被曝のリスクを伴うものもあります。また、いかに優れた検査でもがんを見逃してしまうこと(偽陰性)は避けられません。

さらに、結果的に不必要な検査や治療を受ける可能性もあります。

1つは、検診の結果精密検査が必要とされて再検査や生検などを受けたものの、がんではなかった場合(偽陽性)です。

もう1つは、過剰診断のケースです。近年の研究で、がんの中には生涯命を脅かさない無害なものや自然退縮するものがあること、およびがん検診でそれらの無害ながんをも見つけてしまう場合があることが明らかになってきました。

しかし今の医学では無害ながんと普通のがんを区別できないため、がんが見つかれば、ほとんどの場合、手術などの治療を行わざるをえなくなります。こうして、検診でしか見つかりようのないがんの発見により、過剰治療が行われることになります[3] [4]

3.マンモグラフィー検診の対象年代ごとの有効性の違い

マンモグラフィーは、しこりが手には触れない乳がんをも写し出す有用な診断ツールです。よって検診にも有効ではないかと期待され、過去に海外でランダム化比較試験が複数行われました[5]。その結果、特に50歳以上の女性について、乳がんで亡くなる人を減らす効果、すなわち有効性があるとされています[6] [7]

ただし40代では、50歳以上の場合に比べて死亡率減少効果が小さく、むしろ偽陽性や過剰診断などの不利益が大きいことが取り上げられ、2009年11月に米国政府委託機関である予防医学作業部会(USPSTF)は、マンモグラフィー検診の対象を50歳以上とし、40代は個別に検討するべきと推奨内容を変更しました[8] [9] [10]

一方、20代・30代の一般的な若年女性については、マンモグラフィー検診は有益ではないというのが世界的な見方です。乳腺密度が高い若年者対象の場合、「余命1ヶ月の花嫁・乳がん検診キャラバン」のホームページ[11]にも記載があるとおり、乳房全体が白く写ってしまいます。乳がん自体も白く写るため、しこりなどの病変を検出しづらく、まるで「雪原で白いウサギを探すようなもの」と言われます。

そのため若年者については、検診だけでなく、すでに症状が自覚されている「診療」の現場においてすら、十分な注意が必要とされています[12]。

4.マンモグラフィー検診に伴うさまざまな不利益

若年者の乳がんをマンモグラフィーで見つけるのがこれほど難しいにもかかわらず、病変を見つけようとしても、不利益ばかり増大する恐れがあります。たとえば、がんではないのにがんと疑われ、場合によっては生検を受けることになったり(偽陽性)、逆にがんが見逃される可能性もあります(偽陰性)。また、乳がんの危険因子にも数えられる医療被曝の問題もあります[13]

さらには、浸潤癌にならないケースが相当数あるとされる非浸潤性乳管癌(DCIS)の症例が増加し、過剰診断・過剰治療が増える恐れもあります。米国では1973年から1990年代後半にかけてDCISの症例が7倍以上に増え、マンモグラフィー検診導入との関連が指摘されています[14] [15]

5.超音波検査による検診も時期尚早

超音波(エコー)検診については、若年女性に対してマンモグラフィーより病変を発見しやすいと考えられていますが、乳がんによる死亡率を下げるという科学的根拠はまだありません。現在、40代の女性を対象に、マンモグラフィー検査単独と、超音波を組み合わせた場合との大規模ランダム化比較試験「J-START」が、国内で行われている最中です[16]

がんではない良性の腫瘍を多く見つけてしまう恐れ(偽陽性)もあるなか、有効性を示す根拠もないのに「サービス」として検査の機会を提供しても、受診者の利益は保証されません。

6.自己触診の有効性も証明されていない

「余命1ヶ月の花嫁・乳がん検診キャラバン」では、自己触診(セルフチェック)の方法も指導されていますが、早期発見のための定期的な自己触診も有効性は証明されていません。

確かに自分の体、自分の乳房に関心を持ち、異常がないか注意を払ってもらうことは重要です。しかし、毎月決められた方法でチェックするよう指導しても、死亡率の低下は見込めないことが、大規模な2件のランダム化比較試験の結果示されました。むしろ定期的な自己触診の実施によって、女性たちがより頻回に病院を訪れるようになり、生検を受ける人が増加したと報告されています[17]。定期的な自己触診にも、実施に伴う不利益が存在するとの認識が必要です。

7.若年性乳がん患者のためにできること

全体から見て数は少ないとはいえ、若くして乳がんになる人がいるのは事実です。若いゆえに、仕事・結婚・出産・育児などの問題もからんで、つらい思いをしている乳がん患者が大勢います。そのような苦しみを味わう人が一人でも減ってほしいと、私たちも心から願っています。

しかし、この年代に有効な検診方法がない限り、むやみに検診受診を促しても、利益を得られることがないばかりか、大きな不利益を与えてしまう恐れがあります。

若い女性の健康を守りつつ、若年性乳がんの患者を支え、支援するには、若年者に有効な検診方法の科学的根拠を作るか、あるいは罹患リスクが高いとされる家族性乳がんの研究、有効な治療方法の開発、治療格差の是正を進めること、ならびに患者の治療生活・社会復帰を支える活動こそが重要だと思います。

特に、日本での罹患年齢のピークは50歳前後であることを考えると[18]、若い女性に焦点を当てると同時に、彼女たちの母親に対してこそ、警鐘をならすことが有効と考えます。

また、罹患リスクの高い人が定期的に検査を受けることは意味があるかもしれませんが、それは乳腺専門医に相談の上、検討するべきことと考えます。さらに、個人が医療機関で任意で検診を受けるとしても、死亡率減少効果が証明されていないことや、その検診による不利益について、十分な説明が行われる必要があります[19] [20]

8.がんの啓発はがん検診がすべてではない

乳がんで亡くなる人を減らすと同時に、乳がんになる人や乳がんが疑われる人をむやみに増やさず、今健康な人にできる限り害を与えないことを目指すとき、20代・30代の女性に対して言えるのは、「自分の体に関心を持って、異常を感じたら病院へ行って」「あれ?と思ったら婦人科ではなく乳腺外科へ!」ということであり、これぞメディアが発信するべきもっとも重要なメッセージではないでしょうか。

若い女性に限らず、あらゆる年代の男性・女性にとって、「異常を感じたら受診する」ことこそ健康管理の基本で、検診は、その有効性が確かめられた年代・条件の人に勧められるべきオプションです。がんの啓発活動とは、そうした知識を伝えることであり、すべての年代の人に検診受診を勧めることではないはずです。

1000人が検診を受けると、がんが見つかる人は平均2〜3人と言われます[21]。残りの大多数の健康な人に与える不利益の影響を軽んじることは、きわめて危険で、社会に大きな不利益を与えかねないという認識を持つべきと考えます。

国民に広く情報を発信する立場にあるテレビ局として、科学的根拠の観点から現在の医療活動を今一度見直していただき、今後一層の啓発活動に取り組まれることを、心より願っています。



出 典

[1] 国立がん研究センターがん対策情報センター がん情報サービス 「がん検診の目的」
http://ganjoho.ncc.go.jp/public/pre_scr/screening/about_scr.html#prg2_1
[2] 国立がん研究センターがん対策情報センター がん情報サービス 「がん検診の効果とは?」
http://ganjoho.ncc.go.jp/public/pre_scr/screening/about_scr.html#prg5_1
[3] 国立がん研究センターがん対策情報センター がん情報サービス 「がん検診のメリット、デメリット」
http://ganjoho.ncc.go.jp/public/pre_scr/screening/about_scr.html#prg3_1
[4] 国立がん研究センターがん対策情報センター がん情報サービス 「がん検診アセスメント」
http://ganjoho.ncc.go.jp/professional/pre_scr/screening/screening.html#05
[5] NCI PDQ_日本語版 「乳がんのスクリーニング/ランダム化比較試験」(がん情報サイト掲載)
http://mext-cancerinfo.tri-kobe.org/database/pdq/summary/japanese.jsp?Pdq_ID=CDR0000062751#_66
[6] 国立がん研究センターがん対策情報センター がん情報サービス 「乳がん検診」
http://ganjoho.ncc.go.jp/professional/pre_scr/screening/screening_breast.html
[7] 日本乳癌学会編 乳癌診療ガイドライン 検診・診断 2005年版 (Minds医療情報サービス掲載)
「50歳以上に対してマンモグラフィによる乳癌検診は死亡率を減少させるか」
http://minds.jcqhc.or.jp/stc/0006/1/0006_G0000115_0011.html
[8] Screening for Breast Cancer, U.S. Preventive Services Task Force, AHRQ
http://www.ahrq.gov/clinic/uspstf/uspsbrca.htm
[9] NCI Cancer Bulletin 2009年11月17日号(海外癌医療情報リファレンス掲載・日本語版)
「米国予防医療専門委員会(USPSTF)が乳癌検診に関する勧告を更新」
http://www.cancerit.jp/xoops/modules/nci_bulletin/index.php?page=article&storyid=348
[10] 厚生労働省「国民の皆様からのご質問への対応 問3」米国政府予防医学作業部会の推奨変更について
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/gan_situmon.html
[11] 「余命1ヶ月の花嫁」乳がん検診キャラバン・ホームページ「乳がんと検診方法」
http://www.tbs.co.jp/hanayomecaravan/caravan/medical.html
[12] 日本乳癌学会編 乳癌診療ガイドライン 検診・診断 2005年版 (Minds医療情報サービス掲載)
「若年者に対する診療マンモグラフィは有用か」
http://minds.jcqhc.or.jp/stc/0006/1/0006_G0000115_0015.html
[13] NCI PDQ_日本語版 「乳がんのスクリーニングのリスク」(がん情報サイト掲載)
http://cancerinfo.tri-kobe.org/for_patient/pdq/summary/JP/CDR0000257995.html#_43
[14] NCI Cancer Bulletin 2009年10月6日号(海外癌医療情報リファレンス掲載・日本語版)
「非浸潤性乳管癌(DCIS)の治療−難題に専門家が挑む」
http://www.cancerit.jp/xoops/modules/nci_bulletin/index.php?page=article&storyid=339
[15] NIH「非浸潤性乳管癌(DCIS)の診断と管理」(海外癌医療情報リファレンス掲載・日本語版)
http://www.cancerit.jp/recommendation_file_pdf/NIH_DCIS_2009.pdf
[16] 「乳がん検診における超音波検査の有効性を検証するための比較試験(J-START)」
http://www.j-start.org/about/about.php
[17] コクラン・レビュー「乳癌の早期発見のための定期的自己検診または臨床的検査」(Minds医療情報サービス掲載)
http://minds.jcqhc.or.jp/stc/0006/4/0006_G0000100_T0002897.html
[18] 国立がん研究センターがん対策情報センター がん情報サービス「乳がん」
http://ganjoho.ncc.go.jp/public/cancer/data/breast.html
[19] 科学的根拠に基づくがん検診推進のページ「がん検診ガイドラインの考え方 対策型検診と任意型検診」
http://canscreen.ncc.go.jp/kangae/kangae7.html
[20] 斎藤博『がん検診は誤解だらけ 何を選んでどう受ける』NHK出版 生活人新書、2009年
[21] 日本対がん協会 「がん検診ハンドブック 検診の目的と効果」
http://www.jcancer.jp/about_cancer/handbook/1mokuteki.html
 

以 上

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TBSからの回答書

2010年7月9日

◆当キャラバンの趣旨と経緯について


「余命1ヶ月の花嫁・乳がん検診キャラバン」は、乳がんのため24歳で亡くなった故・長島千恵さんのメッセージがきっかけで始まりました。そのメッセージとは、「若い人も乳がんになる危険があることを知ってほしい。若い人こそ進行が早いので若い人こそ体に気をつけてほしい」というものでした。

ひとりでも乳がんに苦しむ人をなくしたい、悲しむ家族を減らしたい、そんな長島千恵さんの“祈り"は、多くの視聴者の方々から「番組をきっかけに、乳がんについて知ることができました」と、大きな反響を頂きました。

これらの視聴者の方々からの反響を受け、キャラバンは始まりました。

キャラバンの最大の目的は、千恵さんのメッセージをより多くの方に伝えることです。つまり、「キャラバンを通じて、若い女性にも乳がんについて知ってもらい、乳がんに対する意識を高めることで、自分の体により関心を持ってもらうきっかけ作りを行うこと」なのです。

キャラバンの現場では、乳がんに関する説明VTRを見ていただいたり、看護師による乳がん勉強会を受けていただいたりしながら、乳がんの現状や、検診のメリット・デメリットなどを詳しく説明しています。そして、定期的に自己検診を行うことや、異変を感じた際には躊躇せずに専門の医師に相談することの大切さなど、乳がん対策の基礎とも言うべき啓発を行っています。40歳未満の女性は基本的に乳がんを恐れる必要はないものの、小さな異変に気づいた時にすぐに対応できるように、自分の身体と向き合い自分の身体を良く知る意識を持つことが大切であることを、最も強く伝えています。そして、こうした情報提供をした上で、乳がん検査を希望される方に検査機会を提供しています。


当キャラバンは2008年3月、「余命1ヶ月の花嫁」の書籍の収益の寄付先であるNPO法人「J. POSH(日本乳がんピンクリボン運動) 」との共同事業としてスタートしました。ご存知のようにJ.POSHは乳腺専門医の田中完児医師が理事長を務め、乳がん啓発に長年取り組んできた方々が中心となってピンクリボン活動に取り組んでおり、特にマンモグラフィによる検査の大切さを啓発しています。私どものキャラバンの運営や検査方法、ホームページに掲載する内容等についてはJ.POSHに全面的な協力をいただきました。

ご指摘の通り、いわゆる集団検診で死亡率を下げる科学的根拠は、特に50歳以上のマンモグラフィにのみ認められていますが、実際の医療現場では何らかの症状を感じたりした際にはマンモグラフィやエコー(超音波)等の検査が行われていることから、こうした機会を設けることは一定の意味があるとの判断から、共同事業において検査機会を提供することとしました。

特に、マンモグラフィ検査については、J.POSHから「マンモグラフィ検査にはエコー(超音波)検査では見つけることが困難な早期乳がんのサインである微細な石灰化など、ミリ単位の触っても判らないような病変を見つけることも可能で、若年性乳がんを念頭に置いて、一度若いうちに受診するのであれば、マンモグラフィ検査を受診することは意味がある」との助言をいただき、私どもがキャラバンの活動の中に取り入れることを決めたものです。


その際、「若年者のマンモグラフィ検査の画像は白く写りがちで、病変の発見が年配の女性に比べて難しい場合がある」「放射線被曝がある」といったデメリットがあることも、私どもも承知しており、こうしたマイナス面も含めて、キャラバンの現場では受診者に詳しく説明し、また、検査を受けても必ずしも乳がんの発見につながらない可能性があることも説明し、その上でなお検査を希望される方に受診をしてもらっているものです。

その結果、最初の1年間にご連絡をいただいただけでも約10人の方の乳がん早期発見につながりました。

ある30代の女性は友人が乳がんになったことがきっかけで、当キャラバンでマンモグラフィ検査を受け、自身も乳がんが見つかりました。部分切除手術を受けたものの、早期での発見だったためすぐに職場復帰もでき、感謝の言葉をいただきました。


J. POSHとの共同事業は2008年で終了し、2009年は映画「余命1ヶ月の花嫁」の出資企業の賛同を得て、同様のキャラバンを継続開催しました。2010年はTBS単独でエコー(超音波)検査でのキャラバンを実施しています。マンモグラフィにしてもエコーにしても、それぞれ長所・短所があることを十分認識しており、また活動の中で、キャラバンに参加いただいた全国のさまざまな医療関係の方々の助言、シンポジウム等で関わっていただいた医療スタッフなどのアドバイスを参考にさせていただいております。私どもは乳がんへの関心を高めるという当初の趣旨のもとに、その方法や手段は柔軟に対応しており、3年目の活動は、エコーによる検査機会を提供することにしました。


エコー検査は先に挙げた微細な石灰化を探知するのは不得意で、検査をする人の技量によって病変を見つけるのに差が出ることがあるといった弱点がありますが、しこりを作るタイプの乳がんについては内容がよくわかることや、痛みを感じないこと、若い女性の場合でも画像がよく見えることなどの利点があり、こうした様々な点を受診者に説明しながら、検査機会を提供しています。また、偽陽性や過剰診断、病変の見落としの可能性があることも、キャラバン会場にて検査の前に説明しています。また、当キャラバンでは医師に様々な相談ができるブースも設け、検診などに対して不安や質問がある場合には気軽に相談できる態勢をとっています。


私どもがこの活動を始めてみて感じたのは、キャラバンに参加される受診者の多くが、親族や友人に乳がん患者がいたり、気になる症状がありながらも気持ちの面や費用の面からなかなか病院には足を運べなかったり、といった方々で、何らかの強い動機を持って積極的に参加されていることです。

「母親が乳がんと闘っているので、自分も若いうちに一度調べておきたかった」という方、「ずっと気になる症状があるが、なかなか病院に行けなかった。でも長島千恵さんに背中を押してもらってこのキャラバンには来られました」と話す方もいらっしゃいました。

今年から実施しているエコー検査においても、再検査が必要な変異が見っかり、経過観察に入っている女性もいます。これまでのキャラバンの受診者からは、検査機会や乳がんについて様々な現状を知る機会を提供したことを好意的に受け止めてくださったメール等が多く届いています。

検診には様々なリスクはありますが、当キャラバンが、乳がんについて知る機会を設け、症状や不安を感じている方に検査機会を提供したことは、若い世代に乳がんに対する意識をもってもらうことから具体的な乳がん発見に至るまで、一定の意義と成果があったと、私どもは考えております。

(キャラバン事務局に寄せられたメールの一部をご本人の許可を得ましたので引用させていただきます。)



<2009年5月14日受診 35歳 福島県在住>


千恵さん、太郎さん、ご担当者の方々へ
(※事務局注『太郎さん』とは、長島千恵さんのパートナー赤須太郎さんのことで、キャラバンにはボランティアでずっと参加されています〉

このたび、乳がん検診キャラバンに応募し福島で検査を受けさせて頂きました。
応募用紙にも書きましたが、私の母は昨年、乳がんが再発して亡くなりました。
20年以上過ぎてからの再発です。病気になった時は、35歳、子どもが三人いて仕事もする、ごく普通の母でした。母が亡くなったことと、母が罹患した年齢と同じ歳になったこと、それが応募の動機です。私は独身で、自由気ままに過ごしていて正直、あまり体を大事にしていないところがありまた、遺伝性のある乳がんに対して「遅かれ早かれかかるものだ」とあきらめていたところがありました。高い倍率の中、検査を受けさせてもらえたこと本当に還が良かったです。母のおかげかなと思っています。

短い時間でしたが、熱心に丁寧に説明をして下さった太郎さんや、看護師さん、寒い中、お世話をして下さったスタッフの方々、検診車で気持ちをほぐしてくれた技師の先生。順番を待つ問、お互いを思いやりながら話をした参加者の方々、そして多分、福島の空の上から見守っていた千恵さん。みなさまに感謝です。ありがとうございました。



<2010年5月受診 33歳 神奈川県在住>


今年5月にキャラバン検診を受けさせてもらったものです。20代〜30代の女性には公的な検診のカバーがやや薄いです。しかも、体自体は健康で、病気など考えられないとても忙しい世代でもあります。女性誌で乳がんについての知識を入れたとしても自分の健康な体と結び付けて考えるところまではいかない年齢でもあるし、だから、近い世代の女性である千恵さんのお話をきっかけとしてキャラバン検診を受けることが出来たのはとてもありがたかったのです。自分でできる乳がんチェックの検査を看護師さんに医療用ボディを使って教えていただきましたし(雑誌のイラストより格段に分かりやすかったです〉この検診をきっかけとしてほしいということや、専門機関への受診もしっかりと受けてくださいね、という説明もありましたし、少なくとも私にとっては無駄な検診ではありませんでした。とても意義ある機会でした。キャラバン検診の活動は、確実に日本の女性の体を守るきっかけとなっていると私は思います。



<2010年7月受診 29歳 大阪府在住>


私は、大阪に住む29歳の女性です。このキャラバンを知って、半年以上前から毎日の ように開催決定されるのを毎日のようにチェックして待っていました。大阪市は子宮がんは20歳から(400円〉、乳がんは30歳から(1,000円)で検診が受けられるのですが、実は、私は東京生まれの東京育ちで、住民票はまだ東京のままなんです。なので、大阪市の制度を利用することができずにいました。実は、我が家は超がつくほどのガン家系なんです…。祖父が胃がん。母が乳がん。代々ガンにかかっています。本当は私も検診に行くべきなんですが、どうしても抵抗があって…。一人で行くのも怖いし…。でもいつかは行かないと…。25歳を過ぎたころから、そんなζ とを考え早4年…。それで友人と何かのきっかけで行ければと思いこのキャラバンに賭けてみました。私のような臆病者もたくさんいると思います。ぜひ、これからも続けていってください。



く2008年3月受診・30代会社員・神奈川県在住>


乳がん検診の応募させていただき、赤坂サカスの検診キャラバンで受けたところ、結果が要精密検査ということで、病院で再検査をした所、細胞診(2回やり)では癌という結果。もう少し詳しく調べるために設備の整った乳腺外科を紹介されて再検査をしたところ、初期の乳がんであることが分かり、範囲は3センチ程あったのですが乳管内にある癌だったため、一部切除と同時再建にて手術前と変わることなく過ごして、今は放射線治療(5 週間)と服薬で大丈夫そうです。
早い段階でわかったのは、この検診キャラバンを作ってくださった長島千恵さんのおかげです。そのおかげで、何より手術前と同じ生活を過ごすことができ仕事も辞めずに1ヶ月間の休職で復帰できました。
30代半ばなので乳がん検診補助がなく、なかなか自分から検診を受ける機会を作らずにいましたが、今回応募して本当によかったとそして検診を受ける機会を設けてくださった長島千恵さんに改めてお礼を申し上げます。ありがとうございました。




また、キャラバンで診察を担当した医師が、実際に現場を見た立場から以下のような感想を寄せてくださいましたので、掲載させていただきます。



く日本総合健診医学会会員日本人間ドック学会認定医日本医師会認定産業医
医師永久均>


50回目にあたるキャラバンに、一検診医として参加させていただきました。ご依頼を頂いた時は、先の報道などもあり、どんな雰囲気の中での仕事となるのだろうか、神妙な空間の中で緊張滋る仕事となるのだろうか、と予想だにつかずにおりましたが、それは全く杞憂に過ぎないことが直ぐに解りました。


受診者の方々におかれましては、入室して席に着いたばかりの時には、さすがに、やや緊張された面持ちの方も少なからずいらっしゃいました。しかし、もともと、自らの身体の状態に関心を抱く方々が、この機会を是非、一つの良き機会と捕えて大切にしようと思われて自発的に足を運ばれた方々です。

受診に先立ち、提出された要望書や報道内容全てを印刷して配布し、運営スタッフが事情を説明、そして、乳腺外科の専門医からなされる、乳がん検診の意義そして、率直な第三者の意見としての「メリット・デメリット」など、何ごとも覆い隠すことなく話される内容に聞き入っているうちに、自ら心が解放されていくようでした。

現場では、「自己触診で胸にしこりを感じる」、「心配だ」、といって相談に来られた方も数名いらっしゃいました。私は乳がんだけを専門とする医師ではありませんが、同席の専門医と共に行った視触診や説明によって、異常な症状ではない、過度に心配することは無用だということが解かり、「常日頃気になってモヤモヤしていたものから解き放たれた」と相談にいらっしゃった皆さんが、安堵の表情を浮かべる姿をみることは、携わった医師として嬉しく思いました。

また、ボランティアで参加している看護師は、参加した受診者たちに対して「自己触診」の方法を「乳がん模型」を使って時聞をかけて説明し、出た質問に対しても、笑顔で丁寧に受け答えをしていました。わきあいあいとした中での仕事。これは、スタッフが皆、亡き千恵さんの友人達、ご親族の方々、キャラバンの趣旨に賛同して自発的に参加・協力したボランティアの方々であることが大きく影響していると息います。それぞれが受け持つ仕事の場で微笑みを絶やすことなく、暖かく受診者を迎え入れていました。


私が通常の業務として関わるがん検診の環境とは、全く異なる雰囲気に包まれていました。家庭的な雰囲気なのです。受診者自身も、心落ち着き、微笑んでいる。私には初めての経験でした。常々、決して慢心してはならないとは意識しているものの、まだまだ勉強不足だと痛感した次第です。背景知識の総見直しもしなければならないと考えているところです。


検診自体の目的は、あくまで早期発見・早期対処です。しかし、この「キャラバン」の本来の意義は、若いうちから「自分の身体に関心をもつ習慣をつけましょう」というメッセージをなんらの強制もなく、自然に受け入れられる形で発信していることだと感じました。乳がんに留まることなく、他のがん検診、特に若年発症する子宮頚がんに係る検診に対しても同様に意識していただければ、もっと幅広いメッセージも発信されていたはずです。

乳がん検診に関わらず、検査の手段が複数ある場合、自らが是とする手法の有効性だけを主張して譲らず、他の手法を排斥する立場をとることは、他の例をとっても医療の現場ではよく目にする光景です。例えば、どの薬剤を選択し、どのような方法で用いるか。検査結果を解析して判定する基準など、医療の現場では様々な場面で見られます。しかし、どの選択であれ、実際に検査の手段、治療の手段として、実際に用いられているのであれば、それぞれの意義は存在するはずです。他の方法を頭ごなしに否定する立場をとることは、真摯な態度ではありません。

マンモグラフィが有効、エコーが有効という、その議論だけに終始してしまうことで、若い女性たちが戸惑い、検診自体を受けなくなる危険性があることが、最も恐れるべきことだと思います。検診の有用性議論の決着を待つ前に、救われる命があるのならば、救いたい、そういう純粋な気持ちで取り組んでおられるキャラバンであることを実感した次第です。




なお、お送りいただきました「添付資料・要望の根拠について」の「7. 若年性乳がん患者のためにできること」の項目で、「罹患リスクが高いとされる家族性乳がんの研究、有効な治療方法の開発(略)ならびに患者の治療生活・社会復帰を支える活動」を行うよう提案をいただきましたが、私どもは、2009年7月に今後のがん研究に役立てていただくため、「余命1ヶ月の花嫁」に関連した事業の収益から1500万円を財団法人がん研究振興財団へ寄付し、この寄付金を基に、若年性乳がん研究への助成が始まっています。

ほかにも、乳がんに関するシンポジウムを開催するなどしており、こうした活動すべてが、当キャラバンの活動で、あることもご理解いただければと思います。




◆今回のご指摘について


今回のご指摘に関しましては、私どもの進めてきた活動に対する貴重なご助言として耳を傾けたいと思います。今後の情報提供においてはこうした考え方やご意見があることもきちんと伝えて参りたいと考えております。

その一方で、私どもの取り組みを全否定するかのような記事が新聞・雑誌等に掲載されたことについては非常に残念に感じます。自己触診を含めあらゆる検診の意義を否定する要望書の内容に対しては、実際に乳がんの診療現場にいる複数の専門医から疑問の声も寄せられています。要望書の中身を読んだ20代、30代の女性から「では、一体どうしたらよいのか?」という、とまどいの声が私どもに寄せられています。


検診には、がん発見につながる可能性があるというメリットとともに、様々なデメリットがありますが、そうした情報を理解した上で、個人の判断の下に検査を受けたいと望む思いは、たとえ40歳未満であったとしても尊重されるべきだと私どもは考えており、このキャラバンはその趣旨に賛同いただいた方に検査の機会を提供しているものです。なお、全国には40歳未満の女性に対して検診補助を行う自治体もあり、同様の趣旨で機会を設けているものと考えております。

そもそも、私どもの検査機会の提供は、40歳以上の三千万人以上の女性に対して国の税金を使って、広く全員の受診を促すいわゆる「集団検診」とは異なります。

当キャラバンは、自らの意思で検査を希望する限られた数の女性に対し、一企業として映画のDVDの収益金などを投じ、小規模の検査機会を提供しているもので、「集団検診」とは趣旨や形態、規模が全く異なり、これを同じレベルで批判されることは不本意で、非常に残念に思います。


当キャラバンはこれまでも多くの医療関係者やピンクリボン関係者から様々なアドバイスをいただき、より良い内容にするべく少しずつ改善に取り組んできました。今回のご指摘に関しましでも、謙虚に受け止め、改善すべき点は改善しながら、引き続き乳がんについての啓発に取り組んでいく所存です。

例えば、この回答書でご説明しているようなキャラバンの趣旨や内容をより詳しくホームページに掲載し、閲覧した人に誤解を招くことがないよう改善したいと思います。また、ご了承いただけるのであれば、今回ご指摘頂いた内容も掲載したいと考えております。

キャラバンにおける乳がん検診は映画のDVDの収益金など限りある資金で運用しており、当初の予定通りこの秋に終了します。TBSが2年前に社内に結成したピンクリボンプロジェクトは、これまでにも乳がんパネル展やシンポジウムなど、20代、30代に限らず幅広く乳がん啓発の活動を実施してまいりましたが、今後もこのプロジェクトが中心となり、引き続き様々な乳がん啓発活動に取り組んでいく所存です。今期は「乳がんの今」「乳がん患者の今」などというテーマで、乳がんを取り巻く現状について多面的な情報を提供するようなホームページを作成する予定です。


乳がんに関する多面的な情報を伝える活動を行うにあたって、引き続き、様々な医療関係者や乳がん経験者らにご指導とご協力をいただきながら取り組んで参りたいと存じます。今回のご指摘や示された根拠に関しても多面的な情報の1つであると考えておりますので、ご了承をいただいた上で一つの考え方として情報発信できれば幸いに存じます。私どもへ頂いたアドバイスに対しては、真撃に受け止め、これまでと同様に謙虚に耳を傾けていく所存です。

以上

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2010年8月3日

TBSテレビ「余命1ヶ月の花嫁」
乳がん検診キャラバン事務局 御中

「余命1ヶ月の花嫁・乳がん検診キャラバン」の
内容見直しを求める要望書提出有志一同


謹 啓

盛夏の候、貴社ご清祥のこととお慶び申し上げます。

さて、6月9日付けで私共がお送りした要望書および質問状につきまして、7月9日付けで詳細な回答書を頂戴し、誠にありがとうございました。

ご指摘のとおり、日本では、国・地方自治体を含め、まだまだ科学的根拠に基づくがん検診が根付いていないのが現状です。そのような中、報道機関である貴社に、がん検診のあり方、並びに、がん啓発活動における情報発信の重要性について改めてご検討頂きたいと考えてお送りした要望書です。

私共のビジョンは、あくまで、日本において科学的根拠に基づくがん検診が理解され、普及し、救える命を救うことのできる社会を築くことです。そのためには医療関係者のみならず、がん患者、がん患者団体、がん患者支援団体、国・地方自治体、様々な分野の企業、メディアの協力・連携が不可欠であり、立場の違いを越えて率直に話し合い、学び合う姿勢が必要だと考えています。私共は、前述したビジョンが現実のものとなるよう今後もそれぞれの立場から、広く呼びかけ、活動を続けていく所存です。

最後になりますが、添付の資料は、本年5月米国国立がん研究所発行の医学誌Journal of the National Cancer Instituteに掲載された若年層のマンモグラフィ検診に関する最新の報告(Yankaskas BC, et al : Performance of first mammography examination in women younger than 40 years. J Natl Cancer Inst 2010;102:692-701)のアブストラクトとメディア用解説メモです。参考までにお目通しいただければ幸いです。

謹 白


添付資料ウェブサイトURL
・ アブストラクトURL http://jnci.oxfordjournals.org/cgi/content/abstract/102/10/692
・ メディア用解説メモ URL http://jnci.oxfordjournals.org/cgi/content/full/102/10/NP-a


代表連絡先
NPO法人キャンサーネットジャパン内
「余命1ヶ月の花嫁・乳がん検診キャラバン」の内容見直しを求める要望書提出担当者
〒113-0034 東京都文京区湯島1-6-8 中央自動車ビル7F
電話:03-5840-6072 ファックス:03-5840-6073
E-mail:kenshinyoubou @ gmail.com




「余命1ヶ月の花嫁・乳がん検診キャラバン」の内容見直しを求める要望書提出有志一同(以下38名)

青谷 恵利子(北里大学臨床薬理研究所 臨床試験コーディネーティング部門 部門長)
有吉 寛 (愛知県がんセンター愛知病院 名誉院長/悪性リンパ腫サバイバー)
池田 正 (帝京大学医学部外科学 教授)
岩瀬 哲 (NPO法人キャンサーネットジャパン 理事長)
岩本 ゆり(医療コーディネーター 看護師)
上野 直人(The University of Texas MD Anderson Cancer Center, MDアンダーソンがんセンター教授/悪性組織性繊維球腫サバイバー)
植村 めぐみ(がん患者会シャローム代表)
内田 絵子(NPO法人ブーゲンビリア 理事長/乳がんサバイバー)
大橋 靖雄(東京大学大学院医学系研究科生物統計学 教授/NPO法人メディカルライター協会 理事長)
勝俣 範之(国立がん研究センター中央病院腫瘍内科)
唐澤 久美子(順天堂大学医学部放射線医学講座 先任准教授)
川上 祥子(NPO法人キャンサーネットジャパン 理事)
久保井 摂(福岡県弁護士会(九州合同法律事務所) 弁護士)
古賀 眞美(Patient Advocate Liaison代表)
後藤 悌 (東京大学大学院医学系研究科呼吸器内科学)
小西 敏郎(NTT東日本関東病院 副院長/胃がん・前立腺がんサバイバー)
西條 長宏(近畿大学医学部腫瘍内科 特任教授)
桜井 なおみ(NPO法人HOPEプロジェクト 理事長/KMaCS/乳がんサバイバー)
佐治 重衡(東京都立駒込病院乳腺外科 非常勤医員)
清水 哲 (地方独立行政法人神奈川県立病院機構 神奈川県立がんセンター乳腺内分泌外科 部長)
鈴木 育宏(東海大学外科学系乳腺・内分泌外科 准教授)
下妻 晃二郎(立命館大学総合理工学院生命科学部生命医科学科 教授)
滝口 裕一(千葉大学大学院呼吸器内科学 准教授)
田嶋 ティナ 宏子(白百合女子大学文学部 准教授)
田所 多佳子(日本癌医療翻訳アソシエイツ/KMaCS)
円谷 彰 (神奈川県立がんセンター消化器外科 部長)
坪井 正博(神奈川県立がんセンター呼吸器外科)
寺田 真由美(KMaCS(もっと知ってほしい「がん検診」のことプロジェクト)/乳がんサバイバー)
鳥集 徹 (ジャーナリスト)
中村 清吾(昭和大学医学部乳腺外科 教授/昭和大学病院 ブレストセンター長)
南雲 吉則(医療法人社団ナグモ会ナグモクリニック 総院長)
野村 久祥(杏林大学医学部付属病院薬剤部 がん指導薬剤師・がん専門薬剤師)
増田 美加(女性医療ジャーナリスト/乳がんサバイバー)
向井 博文(国立がん研究センター東病院化学療法科)
柳澤 昭浩(NPO法人キャンサーネットジャパン 事務局長/KMaCS)
山崎 多賀子(美容ジャーナリスト/乳がんサバイバー)
吉田 和彦(東京慈恵会医科大学外科学教授・青戸病院副院長、外科部長)
渡辺 古志郎(横浜市立市民病院 名誉院長)

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