非公開: 閑話けあ(12)臨床試験とヘルシンキ宣言

医学の進歩に臨床研究は欠かせない。多くの人が医学から恩恵を受けているが、それは臨床試験に参加した多くの患者さんの利他性のおかげである。厚生労働省の「臨床研究に関する倫理指針」によると、臨床研究は「観察研究」と「介入研究」に分類される。「観察研究」は通常の診療の範囲内であって、医療行為における記録、結果を利用する研究であり、患者さんの安全性は確保されていると考えられる。一方、「介入研究」は通常の診療を超えた医療行為であって、「研究目的」で実施される。したがって、介入研究(臨床試験)は患者さんの安全性を第一に考え、それが確保できる体制を整えてから実施が検討される。

世界医師会は1964年、フィンランドのヘルシンキにおいて「ヒトを対象とする医学研究の倫理的原則」を採択した。これが「ヘルシンキ宣言」である。1964年以降、臨床研究が企画するとき、我々医療者は「ヘルシンキ宣言」を守るように努めてきた。本当にそうか。現在我々医療者は、臨床研究とくに介入研究(臨床試験)を考えるときに、まず第一にヘルシンキ宣言を守るための研究体制が整えられるかどうか検討する。検討されていると信じたい。

最近は、新聞に臨床試験への参加を求める広告が出るような時代となった。「臨床試験」という言葉が一般的になってきたように見える。ほんの数年前まで、臨床試験といえば「人体実験」というようなイメージがあり(そのとおりなのだが)、敬遠されてきた感がある。私は患者さんに臨床試験への参加を奨励する医師の一人であるが、正しい実施体制を取っている臨床試験に限るという大前提がある。

ヘルシンキ宣言の全文を下記に示す。私はこのヘルシンキ宣言のB-12を声を大にして伝えたい。「人間を対象とする医学研究は、科学的文献の十分な知識、(中略)、一般的に受け入れられた科学的原則に従わなければならない。(終略)」

臨床試験には確立した科学のお作法がある。この科学作法に従わないと、ヘルシンキ宣言を守って臨床試験を行うことはできない。現在、「臨床試験」という言葉がひとり歩きしているが、「臨床試験」と「ヘルシンキ宣言」を同時に意識した人は居るだろうか。臨床試験の実施体制とは、ヘルシンキ宣言を守るための体制なのだ。臨床試験への参加を考える人がいたら、私からアドバイスがある。まず、ヘルシンキ宣言を読んで欲しい(安心できると思う)。そして、臨床試験への参加を依頼してきた主治医に「私の安全はどのようにして守られるのですか?」と聞くことを奨める。もし、主治医が即答できなかったら、臨床試験への参加はやめた方が良い。

<世界医師会:ヘルシンキ宣言>

http://www.med.or.jp/wma/helsinki08_j.html

公開日:2012年2月18日 最終更新日:2016年1月22日