非公開: 閑話けあ(3)ひよこ

昭和38年に生まれたので48歳になる。長く大きな組織ばかりで働いてきた。組織のなかで数え切れない不条理を感じ、それを理解しようとしてきた。いつしか集団としての総意と個人の意思を同じ土俵に挙げて比較することが愚考であることに気付いた。また良い仕事をするということは、

- 私の良い仕事とは質の高い医療を提供することを意味する –

時間の掛かる作業であることを知った。現場では自分より年下の職員の方が多くなり、周囲より自分の方が経験豊富と感じることが年々増えてきていた。ところが、である。

ある人事を巡って同じ業界の(大)先輩とメールでやりとりをしたときに、自分が(大)先輩と比べると「ひよこ」のようなものだと痛感した。6歳の小学生と比べると、48歳と58歳の大人などは同じオッサンに思える。しかしながら、常に鍛練して来られた10歳年上の方の哲学に、自分がおよびもしないことがよく理解できた。「上には上があり、さらに上がある」と私の座右の書「葉隠」が云っているが、そのとおりだと思った。つまり、ヒトは思索を重ねても、その極みまでは到達することなく朽ちていく。ヒトは他の動物と比べると、生殖能力が乏しくなっても朽ち果てるまでの時間が長い。これはヒトの思索が次世代に貢献することが理由なのかも知れない。(大)先輩からみると若造の私も、年々体の衰えを感じている。そこで、自分の終わりを意識することが大事だと信じてきたが、自分の経験が次世代に役立つならば、まだまだ思索は続けねばならないと思った。これは本能に殉じることのように感じる。

岩瀬 哲
著者プロフィール:岩瀬 哲

東京大学医学部附属病院緩和ケア診療部 副部長
1994年埼玉医科大学卒業。2003年より現職。緩和医療学と臨床試験データ管理学が専門。座右の書は「葉隠聞書」。元ボクサー。JAZZはダラー・ブラントの「アフリカン・ピアノ」。リチャード・ドーキンスに影響を受け「進化医学」も標榜している。
2007年以降もっとも力を注いでいる業務は、がん患者と家族を中心とする「地域医療連携」。がん患者と家族には「かかりつけ医」が必要と訴えている。
日本乳癌リサーチネットワーク(JBCRN)と日本緩和ケア検証ネットワーク(JPCAN)の科学ディレクター兼任。2011年8月、TIA(一過性脳虚血発作)を発症するも復活。

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